2012.09.30 sun

新聞1面トップ 2012年9月30日【解説】仕事の報酬とは

新聞1面トップ 2012年9月30日【解説】仕事の報酬とは


【リグミの解説】

小さな報酬、大きなリスク
本日の朝日新聞の1面トップ記事は、「愛知県警が探偵、携帯電話販売員、警察官、司法書士ら計30人を逮捕」という記事です。理由は、「個人情報の売買」です。ネットワークでつながる社会を象徴する事件といえます。全国の依頼者が数万~十数万円で情
報を求めると、それが末端の公的な情報源にアクセスできる人物に、1件当り2千円から1万円程度の報酬となって渡り、欲しい情報が吸い上げられる仕組みです。

「個人情報ビジネス」と朝日が呼称する闇市場は、公的機関や企業が個人情報の管理を強化すればするほど、情報価値が上がり商売繁盛になる、という逆説を抱えているようです。末端で情報提供したのは、行政書士、司法書士、貸金業者、労働局職員、携帯電話会社の従業員、警察官、運輸支局職員。殆どの容疑者の職業は、普通に生活する上で何らかの接点があり、信用して情報提供をする相手です。本人たちは、ほんの小遣い稼ぎのつもりだったかもしれないですが、やったことの影響は甚大です。

社会の健全度
こうした違法行為やモラルを問われる行いをする人がどれ位いるかは、「社会のまとも度、健全度」を測る指標にもなりま
す。似た行為に賄賂(贈賄と収賄)がありますし、接待や付け届け(意図をもった贈り物)もグレーとなるケースがあるでしょう。業界によって商習慣の違いもありますし、企業ごとに行動規範などの考え方にも違いがあります。

社会の潤滑油として社交のレベルでなされることと、特定の人や組織の利益と損失に直結する行為は、案外と敷居が曖昧で、気づくと一線を踏み越えている可能性があります。違法行為に手を染めた人たちは、悪意や罪悪感をどれぐらい持っていたのでしょうか。最初はいけないことをしていると思いつつ、積み重なる報酬に目が眩み、いつか感覚が麻痺していったのかもしれません。

モラルを高める方法
モラルを高める方法は、①「罰則制度」、 ②「相互監視」、③「自己規律」の3つが考えられます。①の「賞罰制度」は、法律
や企業の職務規定などで、調査・検挙・処罰の仕組みとセットなので、一番効果があると普通は考えられます。でも、厳罰化は案外効果を発揮しません。人間を動機付けるのに、「恐怖」や「損失」は嫌だ、という「ネガティブな感覚」は、限界があるからです。

②の「相互監視」はどうでしょうか。全体主義的な国家の中には、コミュニティーの中にスパイを送り込み、告発を奨励するケースもありますが、これは①と同様にものすごくネガティブで、モラルが低下します。日本社会に伝統的に見られた「お互い様で助け合い、相互に関心を持ちあう」ケースはどうでしょうか。そもそも個人情報が共有されてしまう鬱陶しさはありますが、「迷惑をかけられない」「恥ずかしいことはできない」という「社会的なバランス感覚」をもたらします。「恥」や「世間体」は、相手の事を気遣うモラルの在り方につながります。日本人は、特にこの点に秀でていると思います。

③の「自己規律」は、仕事においてプロフェッショナリズム(職業倫理観)を貫く姿勢に現れます。不正はしない、顧客情報など機密情報は絶対に漏らさない、クライアントのために最高の仕事をする、そのために常に最新の知識を身に着ける、など自己研鑚(けんさん)を怠らない。それがプロの仕事の流儀です。そのことで、応分の報酬と名誉を得るというもので、「自己をしっかり保つ軸」を持つことで、自己成長し、クライアントや社会により貢献できる喜びがあります。

こうして比較してみると、「罰則制度」は現状から「下がる」、「相互監視」は現状を「維持する」、「自己規律」は現状から「上がる」仕組みともいえます。

仕事の報酬の本質
昨日の「リグミの解説」で、生活保護制度の見直し案に関連して、「働く=傍(はた)を楽にする」の含意がある、という話を
しました。本来、どんな仕事も「自己規律」というプロの流儀を必要としておりますし、そういう仕事の仕方をすれば、相手が喜び自分の価値も高まる感覚を得ることができます。

日本人は、職業に貴賤なし、という世界にも稀に見る社会感覚を持っているように見えます。どんな仕事も、一所懸命やる。現場でチームで創意工夫し、改善していく。個人も高い目標に向けて、コツコツと鍛錬を積んでいく。お互いに助け合い、教え合ってより良い環境を目指す。「道」を極める感覚が、どんな縁の下の仕事にも備わっているのです。

「傍を楽にする」仕事の本質は、「自己を無限に成長発展させる喜び」と一対のものです。これに気付いた人は、不正な報酬といった、つまらない誘惑に負けることはありません。1人でも多くの人が、仕事の報酬の本質を体感できる社会でありたいと思います。

(文責:梅本龍夫)
 


讀賣新聞

【記事要約】 「工場爆発、消防士死亡」

  • 日本触媒の姫路製造所(兵庫県姫路市網干区興浜)で29日、化学薬品タンク1基が爆発炎上し、近くのタンク2基にも延焼した。消防士1名が死亡し、同社従業員も意識不明の重体。消防隊員、従業員、警察署員計29人も重軽傷を負った。
  • 爆発したのはアクリル酸貯蔵タンク。タンク内の温度が異常に上昇し、同社自営消防隊が放水したが温度が下がらず、消防隊の応援を要請。放水準備をしていたところ、タンクが爆発した。
  • アクリル酸は428度になると自然発火し、過熱や酸素との混合で爆発することがある。同工場では、1976年にもアクリル酸タンクの爆発事故が起きている。兵庫県警は、業務上過失致死傷の疑いもあるとみて、工場従業員らから事情を聞いている。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「個人情報の闇市場拡大」

  • 愛知県警が、個人情報を闇市場で売る「個人情報ビジネス」に関与した探偵、携帯電話販売員、警察官、司法書士ら計30人を逮捕した。盗み出していたのは、携帯電話の顧客情報、住所・家族構成などの戸籍情報、車の所有者情報、職歴情報、信用情報など。
  • 「個人情報ビジネス」の仕組みは以下の通り。①全国の依頼者⇒②愛知の情報屋⇒③各地域の探偵ら⇒④行政書士・司法書士(戸籍情報の提供)、貸金業者(信用情報の提供)、労働局職員(職歴情報)、ソフトバンク店長・ドコモ従業員・au店員(携帯電話の顧客情報提供)、警察官・運輸支局職員(車の使用者情報)。④の情報提供者は、1件当り2千円~1万円(または月額20~30万円)の報酬を得ていた。
  • ある探偵は「役所や企業が情報管理を徹底するほど、個人情報の価格は上がり、情報提供者の仕事も増える」と語る。情報のネットワーク化により利便性が高まった反面、漏洩リスクが高まっている面もある。誰もが「個人情報ビジネス」の標的になり、被害者になりかねない。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「化学工場消化中に爆発」

  • 日本触媒の姫路製造所(兵庫県姫路市網干区興浜)で29日、アクリルが入った化学薬品タンク1基が爆発炎上した。消防士1名が死亡し、同社従業員も意識不明の重体。消防隊員、従業員、警察署員計29人も重軽傷を負った。
  • 爆発したのは、アクリル酸を中間貯蔵するタンク。従業員がタンク内の温度の上昇を確認し、通気口からの白煙も目視した。自衛消防隊が冷却放水をはじめ、消防隊にも出動を要請した。消防車などが放水準備をしていときに爆発が起きた。
  • 製造所がタンクの異常を確認してから消防に連絡するまでに、約45分経過していた。兵庫県警は、業務上過失致死傷の疑いもあるとみて、原因や経緯を調べている。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「設備投資、世界で抑制」

  • 世界経済の減速で需要見通しが不透明になっており、主要国の企業で設備投資を抑制する動きが広がっている。
  • 経済協力開発機構(OECD)加盟国(ギリシャとルクセンブルクを除く32ヵ国)の4~6月の固定資産投資は、リーマン・ショック後の2009年10~12月以来のマイナスとなった。今春に深まった欧州の債務危機と中国経済の減速で企業が設備投資を絞ったことが主因とみられる。
  • 主要国の金融当局は、投資意欲の刺激も狙い緩和策を重ねている。しかし、企業活動の停滞が続き、特に国際的に展開する大企業の設備投資が抑制されると、世界景気を下振れさせる要因となる。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「ビートルズにHELP!」

  • 世界中を心酔させたザ・ビートルズが10月5日でレコードデビューから50年となる。数々のヒット曲の魅力だけでなく、そこに表現されたメンバーの生き方が、大学や市民講座で草の根的に受け継がれている。
  • 「人間愛こそビートルズの精神」と山口大学の福屋利信教授(大衆文化研究)は、市民講座で熱く語る。貧しい労働者階級から出た4人組が、階層や国境、人種を超える人間愛を音楽や生き方に刻み、夢を実現させていった。「君が受け取る愛は君がもたらす愛とイコールになる」(「ジ・エンド」の歌詞)は、ビートルズの「人間愛」の凝縮、と福屋さん。
  • 英語教科書に日本で初めてビートルズの活躍を取り入れた成城大学の中村敬名誉教授は、ビートルズの曲の歌詞には英国で親しまれている伝承童謡などが下敷きになっている、と指摘。作詞家の岡本おさみさんは、「ビートルズはロマンチックでポップでさわやか。歌詞の裏に深い意味が込められていても、ポップに仕上げていた。生き方のフットワークも軽かった」と語る。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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