2013.03.19 tue

新聞1面トップ 2013年3月19日【解説】災害大国の物語

新聞1面トップ 2013年3月19日【解説】災害大国の物語


【リグミの解説】

南海トラフ巨大地震の被害想定
本日の新聞1面は、読売、朝日、毎日、日経、東京の5紙そろってトップに「南海トラフ巨大地震の被害総額が220兆円に達する」という政府広報記事です。その被害規模は、具
体的にどのようなものなのでしょうか。東日本大震災と比較します。

地震規模
〇 地震規模: マグニチュード9.0~9.1 (東日本大震災級)
〇 津波の浸水面積: 1015平方キロ (東日本大震災の1.8倍)


マグニチュードで東日本大震災並みかそれ以上の巨大地震が、今度は関東以西の太平洋ベルト地帯を襲う想定です。津波の浸水面積が東日本大震災の2倍近いことで、南海トラフ巨大地震がどれだけ広域に深刻な影響を与えるかがわかります。

人的被害
〇 死者・行方不明者: 32万3000人 (東日本大震災の17.4倍)
〇 負傷者: 62万3000人 (東日本大震災の101.4倍)


東北に比べて人口が集積していることもあり、死者・行方不明者で17倍以上、負傷者に至っては100倍を超える甚大さです。死者・行方不明者、負傷者を合計すると100万人近い規模です。政令指定都市ひとつの全住民が被害を受ける規模と考えると、その深刻さが推測できます。

物的被害
〇 停電: 2710万軒 (東日本大震災の3.1倍)
〇 断水: 3440万人 (東日本大震災の13.4倍)
〇 全壊棟数: 238万棟  (東日本大震災の18.3倍)
〇 避難者: 950万人 (東日本大震災の20.2倍)


全壊棟数が東日本大震災の18倍を超えることなどで、人的被害と共に、実に1000万人近い避難者が生じることも、この巨大地震の特徴です。西日本の電力供給能力は、最大需要の5割に低下し、9割回復に最低1ヵ月かかる想定です。上水道は、東海・四国の8~9割が断水し、復旧まで最長2ヵ月かかるとのこと。また、全国26製油所のうち12ヵ所が停止し、国内精製能力は半減し、燃料不足で物流に支障をきたします。

「1つの事件」、「2万の事件」
日経新聞は、解説記事でビートたけしさんの言葉を引用しています。ある雑誌で東日本大震災の被害について述べたものです。


「『2万人が死んだ1つの事件があった』と考えると被害者のことをまったく理解できない。『1人が死んだ事件が2万件あった』ってことなんだよ」
 

2つのモード
3月15日の「リグミの解説」に記した「2つのモード」は、防災・減災の議論にも役立つと思います。「論理実証モード」から見ると、東日本大震災の反省に立ち、「最悪」の
シナリオを想定する作業は評価できます。取り組むべきテーマの全体観を得ることで、初めて「影響度」と「緊急度」を冷静に客観的に比較し、防災・減災プログラムの策定に入れるからです。

ただ、今回のシナリオでは原発事故が含まれていません。災害が一旦起きた時、原発事故の深刻度は他を圧倒しています。原子力規制委員会と連動した継
続作業が必要です。

「論理実証モード」で「最大」や「最悪」を知るメリットは大きいですが、災害規模に慣れて鈍感になるというデメリットもあります。日経の記事でも、東日本大震災のあとで、津波の規模に対するリスク感覚が、かえって鈍ったとう調査結果を紹介しています。大震災前は、1メートルの津波で危険と感じていた人が70.8%いたのが、被災後は45.7%に減少したそうです。でも実際には50センチの津波で足元をさらわれ、流されていくといいます。

リスクを一人ひとりが「自分のこと」としてリアルに感じるためには、「物語モード」の手助けが必要です。ビートたけしさんの言葉は、2万人の命を奪った東日本大震災ことの意味を、基本から見つめ直すインパクトがあります。東日本大震災を、国民の一人ひとりに起きた「個別具体の事件」と捉えなおすイマジネーションは、将来の防災・減災に役立ちます。

「過去」を見る者が「未来」を知る
「物語モード」で災害を見つめることで、この列島に暮らすとはどんな人生なのか、深く考えさせられます。四季の彩りや山川草木の豊かさを享受するために、すべてを破壊
する自然災害を覚悟しなければならない日本人の心情が、繊細で儚く美しい感性をもたらしました。しかし同時に、「過去を忘れる」「過去を水に流す」「原因責任を追求しない」「検証できないニッポン」といった日本の構造問題もまた、ここに起因している可能性も実感されてきます。

「物語モード」と「論理実証モード」の両方をバランスさせ、有機的につなぐ方法論が、未来の日本を切り開くカギになると考える所以(ゆえん)です。

(文責:梅本龍夫)







① 【政府広報】 「南海トラフ、被害220兆円」

  • 政府の中央防災会議の作業部会は18日、南海トラフ巨大地震の経済的被害は最悪で約220兆円に上るとの推計を発表した。同部会では、耐震化などの取り組みで経済的な被害を半減できるとしている。


② 【政府広報】 「新幹線、高速も寸断」

  • 南海トラフ巨大地震の被害想定では、東京―大阪間の新幹線や高速道路などが寸断され、設備被害額は約1.4兆円となる。


③ 【連続企画】 「重い選択迫る簡易検査 ~揺れる命(上)」

  • 新型出生前診断は、妊婦の採決だけで3種類の染色体の病気が高い精度で判断できる。35歳以上の82人に聞いた調査(「ベビカム」)では、4割が「受けたい」「受けるかもしれない」と答えた。新しい生殖医療の現場で、生命倫理の問題が私たちに投げかけられている。


(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





① 【政府広報】 「被害想定、最悪220兆円」 

  • 南海トラフ巨大地震対策を検討する国の有識者会議は18日、最悪で220兆3000億円の経済被害が生じるとの想定を発表した。東日本大震災の10倍を超える規模で、GDPの42%に達する。同会議は、「1000年に1度、あるいはもっと低い頻度」と指摘。耐震化や防災対策を進めれば、被害を118兆円に減らせるとする。


② 【独自取材】 「キプロス発、経済不安再燃」

  • キプロスで財政再建のため銀行預金に強制課税する方針が示されたことにより、欧州危機の再燃不安が広がり、世界的に株安が進んだ。18日の東京株式市場も今年最大の下げ幅(340円下落)となった。


③ 【解説記事】 「減災、できることから」

  • 南海トラフ巨大地震の経済被害想定が出た。巨大地震は、1000年に1度以下の頻度だが、明日起きるかもしれない。市民や企業は、備蓄、家具の固定、建物耐震化などの「減災対策」を取れる。あきらめないことが大切だ。


(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 





① 【政府広報】 「南海トラフ、被害220兆円」

  • 政府の中央防災会議の作業部会は18日、南海トラフ巨大地震の経済的被害は最悪で約220兆円に上るとの推計を発表した。従来想定の約3倍で、国家予算の2倍超となる。耐震化率を現在の79%から100%にするなどの対策を進めると、被害額は半減するとし、防災対策の重要性を強調する。


② 【独自取材】 「日本V3逃す」

  • 第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)は日本時間18日、米国サンフランシスコ市で準決勝が行われ、日本は1-3でプエルトリコに敗退。大会3連覇の夢は潰えた。


③ 【企業広報】 「プール冷却停止」

  • 東京電力は18日、福島第1原発の1、3、4号機使用済み核燃料プールの循環冷却装置が停電で停止したと発表した。東電は原因を調査中。復旧の見通しは立っていない。

(毎日jp http://mainichi.jp/
 





① 【政府広報】 「南海トラフ被害220兆円」

  • 内閣府の専門家作業部会は18日、南海トラフ巨大地震の経済的被害は最大で220兆3000億円に上るとの推計を発表した。関東以西の40都府県に及び、被害想定は東日本大震災の10倍超に達する。減災対策で被害は半減するとしており、企業の事業継続のための防災計画の再考が急務となる。


② 【企業広報】 「イタリアで太陽光発電」

  • 三菱商事と政府系ファンドの産業革新機構は、イタリアの太陽光発電企業を買収する。約50億円で、さらに追加で400億円を投資する。太陽光発電導入量で世界2位のイタリアでノウハウを蓄え、欧州や日本での事業展開に活かす。


③ 【解説記事】 「防災、自分の目線で着実に」

  • 南海トラフ巨大地震に関して、国がこれだけの被害想定を算定した背景には、東日本大震災の想定を怠った研究者、行政の強い後悔と反省がある。巨大な災害は一度起きれば、1000年に1度といった発生頻度の低さは何の意味も持たない。巨大地震への備えは、私たち一人ひとりの取り組みから始まる。


(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 





① 【政府広報】 「南海トラフ、被害220兆円」

  • 内閣府中央防災会議の作業部会は18日、南海トラフ巨大地震の被害想定をまとめた。建物被害や経済発動への影響などで、損害は220兆円に達する。揺れと津波を生き抜いた後も厳しい状況が続く。


② 【独自取材】 「原発事故、盛り込まず」

  • 内閣府の南海トラフ巨大地震の被害想定に、原発事故は盛り込まれていない。内閣府は、「原発事故だけで1冊の報告書になり、1年はかかる」と想定の難しさを指摘する。原子力規制委が新基準作りを進める中で、「勝手なことはできない」事情もあった。

③ 【企業広報】 「福島第1原発で停電」
  • 東京電療は18日、福島第1原発で停電があったと発表した。1、3、4号機使用済み核燃料プールの代替冷却装置が停止。原因は特定されておらず、復旧のめどは立っていない。このまま冷却できないと、一番水温が高い4号機では4~5日で保安規定上の管理温度上限の65度に達する。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)




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