2013.02.25 mon

新聞1面トップ 2013年2月25日【解説】3人きょうだい社会

新聞1面トップ 2013年2月25日【解説】3人きょうだい社会


【リグミの解説】

学習しない国家
「学習する組織(ラーニング・オーガニゼーション)」を提唱した米国の経営学者ピーター・センゲは、「学習しない組織」となる3つの悪弊を示しました。第1が「タコツボ
」。全体を見ず小さな枠の中に留まり、部分最適を優先する態度です。第2が「ゆでガエル」。いずれ問題が起きるとわかっていても放置し、気づいた時は手遅れとなる状況です。そして第3が「安易な行動主義」。過去の成功体験に頼り、現実の変化を見ず、同じやり方を繰り返し、失敗するケースです。

本日の新聞1面トップ記事は、「学習しない国家」とでもいうべきテーマの典型である、人口問題に関連する記事が3つ掲載されています。朝日新聞の3番記事は、中国の一人っ子政策がもたらした「未富先老」の危機についての調査報道です。1979年から始まった一人っ子政策で、中国は人口増加抑制にある程度成功したと言われますが、「急速に増える高齢者の社会保障が整わないまま、若い働き手が減り始め、体制を支える経済成長や社会の安定を揺るがしかねない」と記事は伝えています。

少子高齢化
少子高齢化で日本は先行していますが、中国はそれ以上のペースで進んでいるのかもしれません。「合計特殊出生率」(1人の女性が生涯で産む子供の数の平均)は、日本が1.39
人(参照:Wikipedia)に対して、中国は1.64人です。しかし研究者の間では、実際は1.18人という日本以下の水準まで落ち込んでいるという試算をしているようです(朝日記事)。日本の「人口減少元年」は2008年と言われますが、中国も2015年頃には労働力人口がマイナスに転じるという予測もあります(参照:Wikipedia)。

人口を維持できる合計特殊出生率は、2.08人です(参照:厚生労働省)。日本が本気で人口を維持したいのであれば、思い切って「3人きょうだい政策」ぐらい打ち出す必要があるのではないでしょうか。しかし我が国の実態は、子を産み育てる上で必要な施策が十分ではありません。本日の東京新聞の1面トップ記事は、東京都杉並区に続いて足立区でも、母親たちが認可保育所不足問題について集団異議申し立てに動いていることを伝える記事です。マンションが増え、人口流入がわかっていながら、「保育需要は吸収できる」と区は判断していたようです。

世代間でポケットを補填
もうひとつの人口問題記事は、日経の連続企画「シニアが拓く」です。団塊世代と団塊ジュニアの比較データに注目しました。団塊が37歳だった1985年と、団塊ジュニア
が37歳だった2010年の対比は、以下の通りです。▽人口=団塊240万人、ジュニア201万人、▽労働力人口=団塊188万人、ジュニア155万人、▽完全失業率=団塊2.4%、ジュニア5.9%、▽未婚率=団塊10.1%、ジュニア28.6%―。

出生数の時系列推移のグラフを見ると、団塊世代のピークの1949年の24年後の1973年に、第2のピークが来ましたが、団塊ジュニアが子供を持つ2000年前後では、明確なピークがないまま出生数の減少トレンドが続いています。団塊ジュニアは、数では団塊世代に匹敵しますが、失業率も未婚率も親の世代の2倍をはるかに超す現実に対して、政治もビジネスも個々人も、無策で来た結果が今の姿ではないでしょうか。日経の記事は、ジュニアが団塊の親に生活費を頼る姿を描写し、「団塊の子育ては終わらない」と記しています。

相対的に裕福で「逃げ切り世代」と批判される団塊ですが、蓄財の一部を次世代に補填している実態があります。その団塊ジュニアが、シニアになったとき、日本は国家としての財産を維持できているでしょうか。

システム思考
センゲ氏は、「学習する組織」の5条件を挙げていますが、最も根幹を成すのが「システム思考」です。あらゆる物事・事象は、相互に関係するシステム(体系)と捉える考え
方です。隣の部門や組織の外のことを考慮しない「タコツボ」は、言ってみれば「空間を小さくとらえる思考」であり、いつか起きる問題を無視する「ゆでガエル」は、「時間を短くとらえる思考」です。システム思考は、空間を広く、時間を長くとらえることで、問題の基本を理解し、本質的な解決を図る方法論と言えます(参照:NRI)。

人口問題は、企業組織から地域コミュニティー、そして国家に至るまで、一蓮托生(ひとつながり)のテーマです。家庭も個人も例外ではありません。どんな未来を迎えたいか、想像力を高め、ビジョンを具体化し、大きな取り組みを始める必要があります。その第1歩となるものに、「ライフシナリオ(人生の見取り図)」があります。ジュニア世代(40歳代前半より下)が、20年後、30年後の自分の姿を思い描きます。すると未来のことに「当事者意識」が芽生え、政治や社会に要求したくなる施策が自ずと見えてきます。

子育て支援から始める
一方のシニア世代(50代後半より上)は、20年前、30年前の若い時の自分がどのような時代を過ごしたかを「ライフストーリー」として記録すると良いと思います。そのこと
で、どうして今日のような社会になったのか、社会人としての自分の半生を振り返ることで現代の問題に対する「当事者意識」が芽生えます。そして、団塊が団塊ジュニアの面倒を見続けるような状況だけでは、未来を創造できないと気付き、もっとしっかりと世代間をつなぐ活動をすべきことに気づきます。

手始めに、シニア世代による「街場の子育て支援」を提案します。若いお父さんやお母さんたちが、安心して「3人きょうだい」の家族を持ちたいと思える社会になれば、どんな波及効果が起きるか。世代を超えてみんなで「システム思考」を働かせて、より良い社会の在り方を探求してみるのは、きっとわくわくする面白いテーマになると思います

(文責:梅本龍夫)





① 【政府広報】 「日銀総裁、黒田氏提示へ」

  • 政府は、白川方明・日銀総裁の後任に黒田東彦・アジア開発銀行総裁(元財務省財務官)を起用する案を衆参両院に提示する方針を固めた。黒田氏は、国際金融の分野に発信力が強く、金融緩和に積極的。副総裁には、金融緩和に積極的な論客の岩田規久男・学習院大教授を起用する方針。


② 【独自取材】 「『憲法96条改正、必要』」

  • 橋下徹・日本維新の会の共同代表は、夏の参院選を通して、自民党、公明党、みんなの党および民主党の一部を加えた勢力で、憲法96条の改正を目指す考えを明らかにした。憲法発議要件を、現行の「衆参両院の3分の2以上の賛成」から「過半数」に緩和することを目指すもの。


③ 【連続企画】 「根深い党派対立 ~地球を読む」

  • 竹森俊平・慶大教授は、米国の「財政の崖」と呼ばれる問題が同時発生したのは偶然だが、米国政治の党派対立の激化が原因にある、とする。民主・共和両党は、複数の問題を意図的に同時発生させる「リンケージ・ポリティックス」の応酬をしている。
     

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





① 【独自取材】 「仮設入居4年に延長へ」

  • 国は東日本大震災で被災した岩手県、宮城県、福島県の仮設住宅の入居期限を現在の3年から4年に延長する。被災者が仮設住宅を出てから住む復興住宅は、55戸しか完成していない。2014年度末でも建設予定の55%しか完成しない見通しだ。


② 【政府広報】 「日銀総裁、黒田氏提示へ」

  • 安倍首相は、白川方明・日銀総裁の後任に黒田東彦・アジア開発銀行総裁(元財務官)を充てる方針を固めた。金融緩和に積極的な姿勢を評価した。


③ 【連続企画】 「一人っ子政策、岐路 ~アジア成長の限界、中国編(上)」

  • 中国共産党・政府は、一人っ子政策の緩和を検討している。30年あまり続けてきた人口抑制策によって、豊かになる前に衰える「未富先老」が到来することに中国当局は危機意識を持つ。


(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 





① 【政府広報】 「日銀総裁、黒田氏固まる」

  • 政府は24日、白川方明・日銀総裁の後任に黒田東彦・アジア開発銀行総裁(元財務官)を充てる方針を固めた。黒田氏について、民主党も容認姿勢だ。副総裁には、中曽宏・日銀理事と、物価目標論者の岩田規久男・学習院大教授を起用する方針。


② 【独自取材】 「受け皿なく、善意頼み」

  • 内戦が続くシリアの難民がレバノンに越境している。レバノンでは昨夏以降、シリア難民が急増し、1年前の25倍以上の19万5098人となった(国連難民高等弁務官事務所調べ)。登録待ちを含めると総数は30万人超となる。栄養状態の悪化や感染症も懸念される。


③ 【解説記事】 「交渉巧者『通貨マフィア』」

  • 欧州や新興国の一部に安倍首相の金融政策は「通貨安競争を助長する」との批判があり、次期日銀総裁候補の黒田東彦氏は、批判に対し理論で反論できる人物との期待がある。財務官やアジア開発銀行総裁という「通貨マフィア」の経歴も、各国金融当局者とやり取りをする上で有利となる。


(毎日jp http://mainichi.jp/
 





① 【政府広報】 「日銀総裁に黒田氏」

  • 政府は24日、白川方明・日銀総裁の後任に黒田東彦・アジア開発銀行総裁(元財務官)を充てる方針を固めた。黒田氏は、安倍首相の金融政策を支持しており、国際金融界に対する人脈もあり、適任と判断した。


② 【世論調査】 「内閣支持上昇70%」

  • 日経新聞とテレビ朝日が22~24日に実施した世論調査(電話RDD法、914回答、回答率62.4%)によると、内閣支持率は70%となり、前回調査(1月末)から2ポイント上昇した。内閣発足から2ヵ月連続で支持率が上昇するのは、極めて異例。首相の経済運営が支持率を押し上げている。


③ 【連続企画】 「子育ては終わらない ~シニアが拓く」

  • 1970年代生まれの団塊ジュニアは、バブル崩壊と就職氷河期が重なり「貧乏くじ」を引いた世代だ。日経新聞の調査では、団塊世代の27%が独身の子供と同居をしている。家計の連結し、親からの生活費支援に頼る団塊ジュニア。終わらない子育てが、団塊世代の消費力に影を落とす。


(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 





① 【独自取材】 「足立区でも母親動く」

  • 多くの希望者が認可保育園に入れない問題で、東京都杉並区に続いて足立区でも、母親たちが集団で区に行政不服審査法に基づく異議申し立てをする。足立区でも、希望者の4割以上の約1600人が入所できないでいる。


② 【独自取材】 「メジャー元年、疾走」

  • 世界最高峰のマラソン・ツアー「ワールド・マラソン・メジャー図(WMM)」に加入して初めてとなる東京マラソンが24日開催され、過去最多の3万6676人の市民ランナーらが走った。完走率は、96.2%。


③ 【独自取材】 「国のデータ、実態映さず」
厚生労働省が公表している待機児童数は、認可保育所に入れず、やむを得ず認可外保育施設を利用したり、預け先が見つからず退職に追い込まれた人の数が入っておらず、実態を反映していない。


(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)




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