2013.02.24 sun

新聞1面トップ 2013年2月24日【解説】自助の国、公助の国

新聞1面トップ 2013年2月24日【解説】自助の国、公助の国


【リグミの解説】

農業における「自助、共助、公助」
「自助、共助、公助」という言葉があります。税収が増えず、借金などに依存する国や自治体は、従来の公助(公的機関による援助)を維持できないとして、自助(自分のこ
とは自分で守る)や共助(地域コミュニティーやNPO、民間企業などによる助け合い)の比率を上げて社会秩序を維持する方向を打ち出しています。こうした議論が出ること自体、日本が「公助」を中心とした社会体制を長く維持してきたことの証ともいえます。

本日の新聞1面記事を見ていくと、広い意味で「公助」に関連する記事が多くあります。安倍首相にとって、オバマ米大統領との日米首脳会談は、外交、経済、防衛など幅広いテーマについて協議する最初の場だったわけですが、各紙の取り上げ方は、TPP(環太平洋経済連携協定)に偏っています(読売①③、朝日①、毎日①、日経①③、東京①)。

農業が関税撤廃の例外対象(「聖域」)となるかどうかが、国内の大きな争点になっているからです。煎じ詰めれば、農業は「公助」の対象なのか否か、という問題です。比較としては、競争原理でがんばり、輸出も増やすという「自助」や、ITなどの他産業と組んで革新する「共助」の方向性が考えられます。農業の維持発展と食料自給という安全保障の観点で、「自助、共助、公助」の組み合わせを大きく議論しないと、国家の戦略は見えてきません。TPP交渉に参加するか否かばかり議論され、国の根幹を成すテーマの全容が一向に見えてこないことにこそ、問題の根幹があるのかもしれません。

神田における「共助」
一方、「共助」に関する興味深い記事が、東京新聞の「入居するなら神輿担いで」です。高齢化と若者の不足に悩む神田の地元住民が、神田祭の神輿担ぎや防災訓練への参加
を条件に、割安に期間限定で入れる学生向け賃貸ワンルームマンションを提供するというものです。神田は、65歳以上の人が35%に達する地域で、全国平均の24%を10ポイント以上上回っています。「学生に住んでもらえば、街が元気になる」と地元住民は期待しています。学生にとっても、地域に溶け込み、世代を超えた交流をすることで、自然に「共助」の精神を身に着けていけるのではないかと思います。

米国における「自助」
そして「自助」の意味を深く問い掛ける記事が、毎日新聞に掲載されています。連続企画の「ストーリー」の今回のテーマは米国の銃問題です。「注意力を求められる銃の扱
いを通して責任感を植え付ける」「銃を持つことを通じて、規律を教える」「自衛のための銃を持ち、訓練を受ければどんな危険に直面しても生き残れる」「銃を持つのは暴動が起きた時のための備えだ」。記事の中に出てくる表現を拾っていくと、市民が約2億7000万丁(1人当り0.89丁)の銃器を保有し、銃関連の事件の死者が年間約1万人に上る米国社会の現実が見えてきます。

根本にあるのは、「自分の身は自分で守る」という「自助」の精神です。これは、入植者が先住民と戦い、独立戦争で民兵が英国軍に立ち向かった建国の歴史に遡る基本的価値観であり、どれほど悲惨で理不尽な銃乱射事件が起きても、人々が銃を手放さない理由とされます。それどころか、事件が起きると殺傷能力の高い銃器を求める人が増える様子を記事は伝えています。銃犯罪の犠牲者や遺族を含めて、銃の販売と所持の「全面禁止」を求める声は皆無だった、と記者は伝えています。

「公助の国」と「自助の国」
日米両国は、ある意味で両極端の社会かもしれません。日本は伝統的に「公助」に偏り過ぎた問題に直面しており、米国は「自助」の伝統によって自縄自縛になっているよう
に見えます。近年日本では、「自己責任論」が強まっており、「自助」できない者を切り捨てる風潮が見られます。米国の極端な姿を見ると、「自助」を突き詰めると、「自衛のために他者を攻撃するのは当然の権利だ」という価値観に行きつくことに気づきます。

米国の小学校の教師は、子どもたちを守るために武装しはじめています。日本から見れば、それがどれだけ極端なことか、わかります。しかし米国人からすれば、銃犯罪はいつ起きるかわからない自然災害のようなものだ、と毎日の記事は示唆しています。目の前の現実に対応するリアリズム(現実主義)、状況に応じて対応するプラグマティズム(実用主義)は、時として極端な選択に走ります。遅きに失する前に、理念と原理に立ち戻ることが大切です。

「自助、共助、公助」を包摂する理念
米国の入植者は、本当に先住民と戦う必要があったのか。平和に共存共栄を目指す道はなかったのか。英国からの独立運動は、粘り強い交渉によって勝ち取る非暴力の道はな
かったのか。今となっては空理空論の想像でしかないことを、「今ここ」の現実として見る必要があります。なぜなら、北朝鮮が核兵器の開発を進め、中国の軍事脅威が現実感を高めている東アジアで、日本が米国の市民社会流の「自助」の論理に突き進んだら、戦後70年近く積み上げてきた「平和主義」の基盤を一気に失う可能性があるからです

こうして考えると、「自助、共助、公助」は、どれかひとつに偏ることなく、上手にバランスさせていくことが、大切だとわかります。同時に、「自助、共助、公助」の全体を包摂する大きな価値観や理念を創り、国民全体で共有していく必要があることに気付かされます。そして、そうした価値観や理念を、国家を超えた地域で共有することが、結局は最大の利益をもたらすことを、国家間でも確認すべきです。「共存共栄」(Win-Win)こそが、グローバル時代のキーコンセプトです。

(文責:梅本龍夫)




① 【政府広報】 「TPP対米協議加速」

  • 安倍首相は22日、オバマ大統領との首脳会談後に発表したTPP(環太平洋経済連携協定)に関する共同声明を踏まえ、来月中にもTPP交渉への参加表明をする意向を固めた。

② 【政府広報】 「原発ゼロ見直し米に伝達」

  • 安倍首相は22日、オバマ大統領との首脳会談で、「2030年代に原発稼働ゼロを目指す」とした民主党政権での政府方針を「ゼロベースで見直す」と説明した。

③ 【政府広報】 「GDP3兆円増、試算」

  • 政府は、TPPに参加した場合の日本経済への影響について、農産品の輸入による負の影響よりも多くの分野での輸出増の効果が大きく、GDP(実質国内総生産)は約3兆円押し上げられると試算している。


(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





① 【政府広報】 「米、『車は例外』提案」

  • 安倍政権は、オバマ米大統領との首脳会談で「(環太平洋経済連携協定=TPPは)あらかじめすべての関税撤廃を約束しない」との共同声明をまとめたことを受け、TPP交渉参加表明を3月上旬にも表明する見通しとなった。

② 【独自取材】 「原発防災計画、めど5割」

  • 原発の30キロ圏で事故対策を定める「地域防災計画」の策定について、156自治体の首長にアンケートしたところ、「策定した・見直した」=8人、「見通しがついた」=78人、「見通しがついていない」=34人、「その他(作成段階)」=36人で、めどが立ったのは5割だった。

③ 【解説記事】 「次は中国、問われる対話力」

  • 安倍首相は、「日米同盟の信頼は完全に復活した」と胸を張るが、前政権批判に基づく同盟強化論だけでは日米が追求するアジア太平洋地域の安定と繁栄の処方箋とはならない。中国との対話をどう図るかが問われる。
     

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 





① 【政府広報】 「関税に『聖域』代償も」

  • 安倍首相は22日、オバマ米大統領との首脳会談後の記者会見で、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)への交渉参加について、「なるべく早い時期に決断したい」と表明した。

② 【独自取材】 「中国外相、王氏で調整」
  • 中国の次期外相として王毅・国務院台湾事務弁公室主任を起用する方向で最終調整していることが判明した。王氏は日本大使を経験した知日派であり、習近平指導部が日中関係を改善させようとする意図もあるとみられる。

③ 【連続企画】 「武装する小学教師」
  • 昨年12月に米国東部サンディフック小学校で児童ら26人が殺害された銃乱射事件について、「教員が銃を持っていたら、悲劇は防げたと思いますか」という記者の質問に、米南部ノースカロライナ州の小学校教諭のキャロル・ケリーさんは、うなずいた。

(毎日jp http://mainichi.jp/
 





① 【政府広報】 「交渉参加、6月にも決定」

  • 安倍首相が22日の日米首脳会談で、すべての関税撤廃を前提にしないことを確認したことを受け、政府はTPP(環太平洋経済連携協定)交渉への参加に動き出す。

② 【政府広報】 「全量再処理を継続」
  • 経済産業省は、2012年度中に改定期限を迎える原発の使用済み核燃料の最終処分計画について、全量再処理の政策を続ける方針だ。


③ 【解説記事】 「高い目標保てるか」

  • TPPをめぐる日米首脳の合意は、玉虫色の決着だが、建設的な玉虫色が必要な時もある。初めから例外を想定して、高水準の自由化というTPPの本来の目標を損なってはならない。
     

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 





① 【政府広報】 「TPP交渉参加表明へ」

  • 安倍首相は、22日の日米首脳会談でTPP(環太平洋経済連携協定)交渉について、「『聖域なき関税撤廃』を前提とせず」との参加条件が満たされたと解釈し、近くTPP交渉への日本の参加を表明する。

② 【解説記事】 「日本『成果』合作でシナリオ」

  • 日米首脳会談のあと、安倍首相は日本の主張が受け入れられたと胸を張るが、共同声明の内容は米国の従来の基本姿勢とほとんど変わらない。日本が譲歩を勝ち取った演出をして、参加に道筋をつけるための日米合作のシナリオに沿った展開だ。

③ 【独自取材】 「入居するなら神輿担いで」

  • 東京・神田明神で行われる神田祭の神輿担ぎや防災訓練への参加を条件に、割安に期間限定で入れる学生向け賃貸ワンルームマンションが千代田区神田淡路町にできる。高齢化と若者不足に悩む地元住民がコミュニティー復活を狙う。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)




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