2013.02.03 sun

新聞1面トップ 2013年2月3日【解説】1000歳の心

新聞1面トップ 2013年2月3日【解説】1000歳の心


【リグミの解説】

1000歳まで生きる
人は1000歳まで生きたらどうなるのでしょうか。本日の日経新聞の1面3番記事は、「ネット・人類・未来」という連続企画です。英国の科学者が世界中の研究者と「老化の治
療法に取り組み、論理立てて老いを7つの要因に分類、対処法と老いの克服の道筋を示したそうです。iPS細胞も含め、20年後には必要な技術が出そろい、定期的なメンテナンスで20代の肉体を維持することも可能になるとの見立てです。「恩恵を受ける世代はもうこの世に生まれている可能性がある」と記者は記しています。

山中教授のノーベル賞受賞で脚光を浴びるiPS細胞の応用分野を想像すると、人間の肉体のあらゆる臓器や骨格、筋肉、神経などを若く健康な状態に再生し続けることも、いずれ可能になるのではないかと思えてきます。ちょうど東京新聞では、科学をテーマにした新書「ブルーバックス」(講談社)が今年、創刊50となり累計7000万部を発刊したとあります。「常に科学の最先端を押える」のが成功の秘訣と出版元は語っていますので、SFがリアルになるような記述が今後増えるのかもしれません。

科学の長所と弱点
科学の優れた点は、「仮説を立て、観察または実験によって検証し、再現可能であることを立証できたものが、理論として広く認められる」という明確な方法論があることで
す。数学を含め、科学の「言語」は世界共通です。国境や民族や地域性の特殊性や、宗教や思想などの信条の違いを超えて、普遍的な成果物を人類で共有できるのは、科学の素晴らしい側面です。

一方、科学の弱点は、思想がないことです。そもそも科学は、方法論の体系であって、思想や哲学がないと指摘するのは、少し的はずれかもしれません。元々、西洋の科学は、キリスト教の神の真理を探究する過程で生まれたものであり、探求する理由や発見したことをどう解釈するかは、宗教という大きな枠組みにゆだねられていました。ところが、ダーウィンの進化論に見られるように、科学の発見が宗教の世界観と矛盾するようになり、いつしか科学は宗教の枠を突破して自律的に進歩し続け、今日に至っています

生命とは何か
価値観を差し挟まず、もっぱら真理探究と、発見した真理を現実世界に応用する科学の在り方は、核兵器や細菌兵器のように、時に人類滅亡の危機をもたらします。遺伝子や
細胞や脳神経など、人間を人間たらしめる根幹に関わる分野が科学で解明され、応用分野が広がると、科学に対する上位概念となる思想、哲学、普遍的な価値観をどう位置づけてていくかは、今後ますます大きな課題になっていきます。それは、煎じ詰めれば、「生命とは何か」、という倫理的なテーマに行きつきます。

そして「生命とは何か」というテーマは、「意識とは何か、心、精神とは」という問い掛けにつながります。1000年生き続ける人間は、どんな意識状態になるのでしょうか。想像を超えた世界ですが、長寿化が急速に進展した日本の戦後は、少し参考になる部分もあります。1月14日は「成人の日」でした。「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます日」です。子供から大人の仲間入りをする年齢。それが現代日本における20歳の意味です。

ゆっくり大人になる時代
500年ぐらい過去の元服は、一般に15歳ぐらいだったと言われます。その頃の寿命が50歳とすると、大体3.3倍の年齢です。この比率で、20歳で成人から寿命を計算すると66歳
ぐらいになります。1960年の平均寿命が67歳でしたので、近いです。2010年の平均寿命は83歳まで伸びています。同じ比率で考えると、今の成人は25歳となります。大人の感覚を名実ともに得るのは、25歳以降ということは現代日本のパターンかもしれません。

さらに仮に平均寿命が100歳まで伸びたとしたら、大人になるのは30歳を過ぎた頃になる
ということもありえます。医学の進歩、衛生的な環境の進展、栄養のある食事が可能となり、日本人の平均寿命は伸びましたが、心の成熟のスピードもゆっくりになった。そんな構図が見えてきます。

わくわくする探求テーマ
もし仮に20歳の肉体のまま1000年生き続けたらどうなるのか。300歳を超えたところで大人の言動ができるようになるか、それとも肉体はずっと若々しいので、心も若々しく成熟を拒否した社会になっていくのでしょうか。1000歳が夢物語から一歩現実に近づいたとき、私たちは、科学が答を持たないテーマと、今一度真剣に向き合うことを求められるようになるのではないしょうか。

「肉体と精神」はどういう関係にあるのか。「物」の進歩と「心」の進化が同期する社会の在り方は、どのようなものか。それは、1000歳の
肉体と同様に、いやそれ以上に、わくわくする探求テーマです。

(文責:梅本龍夫)
 





① 【政府広報】 「風力発電、10年で3倍」

  • 政府は風力発電の拡大に向け、2013年度から北海道と東北地方に官民で総額3100億円を投じて送電網を整備する。首都圏などにも供給され、電力不足解消につながる可能性がある。
  • 国内の風力発電設備を今後10年程度で、現在の3倍の750万キロワット程度に増やす。現在の風力の発電コストは、液化天然ガス(LNG)と同程度。
  • 政府は、今回の手法を北陸、山陰、九州でも活用すれば、全国の風力発電を現在の6倍の1470万キロワットまで増やせると見込んでいる。安定供給に向けた技術開発実験も進める。


    ② 【独自取材】 「軍突入時、人質全員死亡していた」
    アルジェリアのダフ・ウルドカブリア内相は2日、イナメナスでの人質事件について、軍が武装集団に「最後の攻撃」を行った時点で武装勢力は自爆するなどし、日本人を含む人質と共に「突入した時には全員が死亡していた」と語った。

    ③ 【政府広報】 「首相『訪米前、申請せず』」
    安倍首相は2日、普天間飛行場の移設問題で、沖縄県との信頼構築を優先し、訪米前に名護市辺野古沿岸部への埋め立て申請をしない、と語った。

     

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





① 【独自取材】 「火力発電、6割が地震地域」

  • 電力会社や特定規模電気事業者など計16社が持つ、出力100万キロワット以上の火力発電所64施設のうち、40施設(63%)が地震発生確率の高い地域に存在することが判明した。
  • 国の地震調査研究推進本部が昨年12月に更新した地震動予測地図によると、震度6弱以上の地震発生確率が30年以内に「26%以上」とされる地域に40施設がある。さらにそのうちの33施設は「50%以上」の地域となる。
  • 現在稼働している原発は大飯だけであり、火力発電への依存度は9割程度に達している。多くの原発の再稼働の見込みが立たない中、暮らしを支える火力発電のリスクが浮き彫りになった。


    ② 【政府広報】 「県内移設、理解求める」
    安倍首相は2日、那覇市内で仲井真知事と会談し、米軍普天間基地移設について、日米合意の名護市辺野古への移設に理解を求めた。

    ③ 【独自取材】 「環境省、不払い情報放置」
    環境省は、福島第1原発周辺の除染作業で支払われる「危険手当」が中抜きされていた問題に関して、厚生労働省や作業員から多くの不払い情報を得ながら、放置していたことが判明した。

     

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 





① 【政府広報】 「埋め立て申請後」

  • 安倍首相は2日、沖縄県を訪問し仲井真知事と会談した。首相は会談後、「仲井真知事と私との個人的な信頼関係は構築できたのではないか」と語った。
  • 米軍普天間飛行場の移設問題に関しては、名護市辺野古沿岸の埋め立て申請の時期が焦点となる中、首相は「(2月下旬の訪米前は)考えていない」と述べ、政府と沖縄県の信頼関係の修復を優先する姿勢を示した。
  • 一方、で首相は日米同盟強化を掲げており、普天間基地移設を具体的に進展させる必要がある。訪米後に埋め立て申請の時期を探ることになる。


    ② 【連続企画】 「懐に小さな『お守り』 ~ストーリー」
    昨年8月20日、シリア北部アレッポで取材中に銃撃され死亡したジャーナリストの山本美香さん。「相棒」だったジャパンプレス代表の佐藤和孝さんは、山本さんの遺品の青色の巾着袋の中に、小さなお地蔵様を見つけた。「彼女がこんなものを持っていたとは知らなかった」。

    ③ 【政府広報】 「発送電分離、最短4年後」
    経済産業省は2日、電力会社の発電部門と送電部門を切り離す「発送電分離」を、2017~2019年度に実施する方向で調整に入った。

     

(毎日jp http://mainichi.jp/
 





① 【企業広報】 「ミャンマーでコメ事業」

  • 三井物産はミャンマーで現地の農業関連大手と提携し、コメ事業に参入する。ヤンゴンなど3ヵ所の大型精米工場を新設する。営農指導も手掛け、品質を向上させる。総事業費は150億円規模。
  • アジアやアフリカの人口増と生活水準の向上に伴い、コメの貿易量が急増している。現在のミャンマーのコメ輸出は70万トン(2011年度、米農務省調べ)だが、これを5年後に500万トン(世界4位の規模)まで増やす計画だ。
  • 三井物産によるコメ輸出支援は、新興・途上国の食糧の安定確保にもつながりそうだ。三井物産は、ミャンマー政府との関係強化により、インフラ整備や資源開発の商機もつかみたい考えだ。


    ② 【独自取材】 「『時価1兆円』71社に急増」
    昨年11月中旬からの株高で、株式時価総額1兆円超の企業数が、2月1日時点で71社に増えた。2ヵ月半前は47社だった。筆頭はトヨタ自動車の15兆円。

    ③ 【連続企画】 「バイオもガレージ革命 ~ネット・人類・未来」
    「人は千歳を超えて生き続けるようになる」と英科学者のオーブリー・デグレイは語る。遺伝子をコンピューターのプログラムになぞらえ、このプログラムの解読と書き換えに、若者たちが挑戦している。人体がネットと融合し機能拡大する世界が現実になりつつある。

     

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 





① 【連続企画】 「玉砕、再び問いたい ~ドナルド・キーン東京下町日記」

  • 「ベトナムに平和を! 市民連合(ベ平連)」で知られる作家の故小田実さんの妻、玄順恵(ヒョンスンヒェ)さんと対談した。小田さんのベストセラーの『何でも見てやろう』は、私の『西洋発見』に影響されて書いたと知り、こそばゆい思いがした。
  • 逆に私が影響を受けた小田作品が『玉砕』だ。第二次世界大戦のパラオ諸島ペリュリュー島で全滅した旧日本軍がテーマだ。私は、旧日本軍初の玉砕とされるアリューシャン列島アッツ島の戦いを米海軍通訳士官として間近で見た。
  • 「玉砕」は日本の伝統でも何でもない。日露戦争では多くの日本兵が捕虜となり、彼らはそれを恥辱とは思わず、日本に帰還した。何のためになぜ玉砕したのか。玄さんに久しぶりにお会いして、小田さんに聞いてみたくなった。


    ② 【独自取材】 「地域指定ジレンマ」
    東京電力福島第1原発事故の被災者支援の充実を目的として成立した「原発事故子ども・被災者支援法」に関する政府の対応方針が半年以上経っても定まらない。政府は新たな風評被害を恐れ、予算措置も遅れている。

    ③ 【独自取材】 「『ブルーバックス』50年で7000万冊」
    科学をテーマにした新書「ブルーバックス」(講談社)が今年、創刊50年となる。「常に科学の最先端を押える」ことで長続きし、1800タイトルを刊行、総発行部数は7000万部を超える。


(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)




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