2013.01.30 wed

新聞1面トップ 2013年1月30日【解説】日本経済の型

新聞1面トップ 2013年1月30日【解説】日本経済の型


【リグミの解説】

2013年度政府予算
本日の新聞1面のトップ、2番、3番記事は、読売、朝日、毎日がそろって「2013年度政府予算案」「資産家夫婦の死体遺棄容疑者逮捕」「安岡章太郎さん死去」です。政府予算
案は、日経新聞もトップ扱いで、東京新聞は3番記事です。政府予算案の記事に関しては、各紙に【政府広報】のスタンプを押しましたが、政府発表をそのまま引用した記事という意味では、読売新聞が最も「政府広報的」です。

逆に朝日は、「人からコンクリートへ」というサブタイトルを付け、生活保護や児童手当などが減額され、公共事業や防衛費が増額されていることや、国債依存度の計算にからくりがある、といった指摘をしています。内容は政府広報よりも【政府批判】のスタンプが近いです。

毎日は、「アベノミクス」で景気回復するロジックを概説、それは薄
氷を踏むものだと指摘しています。日経は、国債依存が続き、財政構造改革が遅れることに懸念を示しています。東京新聞は、公共事業や防衛費が増える一方で、生活保護費が削減された、と朝日と類似の問題指摘をしています。

麻生副総理は、力強い景気回復のためには、「財政出動」「金融緩和」「成長戦略」の3本の矢をいっぺんに放つ必要がある、という意味の発言をしています。しかし、今回の予算案は、短期的なカンフル剤となる公共投資中心の「財政出動」、心理面などに好影響を期待する「金融緩和」に比べ、「成長戦略」の具体化の遅れが指摘されています。

そもそも「成長戦略」の理念や考え方の軸がよくわかりません。どの産業や分野を重点に置くのか、対策は規制緩和、減税、投資や補助金など、どういう打ち手を重視するのか。日本にふさわしい経済再生の方向性はどういうものなのか、その基本をおさえる必要があると思います。それは、「日本経済の型」を再定義する作業になります。

新自由主義の次を模索するステージ
1980年代以降、グローバル経済化が一気に進展すると共に、欧米諸国を中心に、「減税」「規制緩和」「小さな政府」を実施し、ビジネスを自由に伸び伸びとできる経済環境を作ってきました。それは、「強い者」がより強くなれる環境であり、その成果が巡り巡って「弱い者」にも恩恵がもたらされるというものでした。

しかし、新自由主義とも呼ばれるこの政策は、2008年のリーマン・ショックを境に、マイナス面が一気に浮上しました。「1%対99%」の標語でウォール街の占拠運動が起きたのは、象徴的な出来事でした。米国は、「自由」を強調する共和党に対して、「公正(公平)」を重視する民主党のオバマ大統領が再選されました。マスコミは、米国政治は、オバマ後も3期連続で民主党の大統領となる可能性を論じています。共和党も、中道寄りの修正を模索しているようです。

日本経済の型
新しいグローバル経済環境の中で、「金融政策」「財政出動」「成長戦略」の大元となる、「日本経済の型」をどう創っていくのか。日本を最も日本らしくするものは、「チ
ームプレイ」です。そしてチームプレイは、安定した中間層があって、初めて活き活きと力を発揮するものです。

生活保護費の削減など、社会のセーフティーネットの網目を
粗くする政策をするのは、社会の厳しい目があるからだと思います。しかし中間層が安定し、チームプレイを発揮できている社会では、そのような声は出ないと思います。そもそも、生活保護を必要とする世帯も減少すると期待できます。

日本は、この10年、20年、グローバルな政治・経済の中で、存在感を次第に失っていきました。そんな中、安倍首相の大胆で矢継ぎ早の経済政策、取り分け中央銀行の在り方に踏み込んだ金融政策は、海外でも批判や警戒心の目で見られているようです。まったく相手にされず、注目されないよりは、良いことだと思います。

しかし、一番注目され
るべきことは、日本が日本らしい経済再生のナショナル・モデルを打ち出し、成功させることです。「安定した大きな中間層のチームプレイ」という日本のお家芸を、新しいグローバル経済環境の中で再生し、「日本経済の型」(ナショナル・モデル)として輸出するぐらいのビジョンを打ち出すのが、政治の大きな仕事だと思います。

(文責:梅本龍夫)
 





① 【政府広報】 「経済再生へ大型予算」

  • 政府は29日、2013年度予算案を決定した。一般会計の総額は92兆6115億円で、前年度を3000億円下回る。東日本大震災からの復興対策を含めると約97兆円と、過去最大規模の大型予算。
  • 歳入は、税収を前年度より7500億円多い43兆960億円と見積もった。高い経済成長を見込む政府経済見通しに基づく。税収不足を補う国債発行は、42兆8510億円にとどめ、4年ぶりに税収よりも抑えた。借金依存度(国債の割合)は、46.3%(2012年度は47.6%)に下がったが、危機的な財政状況に変わりはない。
  • 公共事業費は、5兆2853億円と2012年度より7119億円多く、4年ぶりに前年度より上積みとなる。防衛費も、軍事力を強化する中国や尖閣諸島の警戒を強めるため、11年ぶりに増額する。


    ② 【警察広報】 「41歳男、宮古島で逮捕」
    警視庁は29日、資産家夫婦とみられる2人の遺体が埼玉県内で見つかった殺人・死体遺棄事件で、職業不詳・桑原隆明容疑者(41)を沖縄県宮古島で逮捕した。

    ③ 【発表引用】 「安岡章太郎さん死去」
    作家、安岡章太郎さんが26日、老衰のため92歳で死去した。安岡さんは、個人や市民の内面を掘り下げ、吉行淳之介さんらとともに「第三の新人」と呼ばれた。

     

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





① 【政府広報】 「最大規模、92.6兆円予算案」

  • 安倍政権は29日、2013年度政府予算案を決定した。一般会計は総額92.6兆円で過去最大規模にふくらんだ。
  • 「人からコンクリートへ」の安倍色は、以下の通り。▽生活保護費=前年度比▲670億円(予算額2兆8224億円)、▽高校無償化の継続=▲10億円(3950億円)、▽今の児童手当の継続=▲275億円(1兆2564億円)、▽年金=▲1692億円(10兆4770億円)、▽公共事業=+7119億円(5兆2853億円)、▽防衛関係費=+400億円(4兆7538億円)、▽海上保安庁=+33億円(1765億円)―。
  • 歳入(収入)では、税収見通しを43.1兆円、国債(借金)を42.8兆円にし、国債依存度を約46%にしてみせた。しかし、基礎年金負担の2.6兆円も借金するのに、消費増税で返済するということで別枠にするというからくりがある。これを含めると、借金総額は45.4兆円と税収を超え、最大規模となる。


    ② 【発表引用】 「安岡章太郎さん死去」
    作家、安岡章太郎さんが26日、老衰のため92歳で死去した。安岡さんは、「第三の新人」の一人として戦後文学に一時代を画した。

    ③ 【警察広報】 「遺棄容疑、41歳男を逮捕」
    警視庁は29日、スイス在住の資産家、霜見誠さん(51)と妻美重さん(48)とみられる遺体が発見された事件で、住所不定、職業不詳・桑原隆明容疑者(41)を死体遺棄の疑いで逮捕した。

     

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 





① 【政府広報】 「公共事業で経済再生」

  • 政府は29日、一般会計の総額92兆6115億円の2013年度予算案を決定し、安倍政権の経済政策「アベノミクス」を本格始動する。2012年度補正予算案と合わせた15ヵ月予算で運用すると、歳出総額は103兆円規模、新たな借金も50兆円に膨らむ。
  • 安倍政権のシナリオは、以下の通り。①即効性のある公共事業に思い切った予算をつけ建設業者の仕事を増やす、②建設業者らと取引のある企業の売上が増える、③売り上げが増えると雇用や給料も良くなる、④雇用増や給料増で個人消費が増える、⑤消費増が企業売上をさらに押し上げ、好景気の循環に入る―。
  • 公共事業費は、2012年度より15.6%も多い5.3兆円で、補正と合わせると7.7兆円に上る。地方の公共事業費などに充てる予算を加えると、総額10兆円で民主党政権時の2倍に達する。ただ、こうした公共投資が着実な景気回復につながらない限り、企業は賃上げに動きにくい。アベノミクス予算は、薄氷を踏もうとしている。


    ② 【警察広報】 「遺棄容疑、41歳男逮捕」
    警視庁は29日、スイス在住の資産家、霜見誠さん(51)らととみられる男女2人の遺体が発見された事件で、住所不定、職業不詳・桑原隆明容疑者(41)を沖縄県宮古島で逮捕した。

    ③ 【発表引用】 「安岡章太郎さん死去」
    作家、安岡章太郎さんが26日、老衰のため92歳で死去した。安岡さんは、「第三の新人」を代表する作家で、軽妙な筆致と鋭い批評精神で戦後の日本社会を描写した。

     

(毎日jp http://mainichi.jp/
 





① 【政府広報】 「脱デフレ優先、改革遅れ」

  • 政府は29日、2013年度予算案を決定した。一般会計の総額は92兆6115億円で、前年度比0.3%減となる。編成済みの2012年度補正予算案と合わせると、歳出規模は100兆円を超える。
  • 安倍政権の経済・財政運営(アベノミクス)は、「財政出動」「金融緩和」「成長戦略」の3本柱から成り、予算でも民主党政権との違いを強調する。景気刺激策の中核に、即効性のある公共事業を据え、民主党政権が削ってきた事業費を復元し、5兆2853億円(7000億円増)とした。
  • 歳入も見た目重視の内容。税収を43兆960億円と前年度当初より増えると見込む一方、新規国債発行額は42兆8510億円(1.4兆円減)とし、国債発行が税収より多い逆転現象を解消する形を整えた。しかし、2012年補正には5.2兆円の建設国債の増発が盛り込まれており、財政構造改革は先送りと停滞が目立つ。


    ② 【独自取材】 「日本車、東南アジアで急拡大」
    内需主導の経済成長を続ける東南アジアで日本車の販売が急拡大している。タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナム、シンガポールでの日本車の2012年の販売台数は、273万台(約4割増)となった。

    ③ 【企業広報】 「ビッグデータ取引市場開設」
    富士通は、企業が保有する大量の電子情報(ビッグデータ)の取引市場を今春開設する。ビッグデータの取引市場は、世界的にも珍しい。

     

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 





① 【独自取材】 「消えた『40万年前』」

  • 原子力規制委員会の専門家チームは29日の会合で、原発の新しい安全基準の骨子案を決めた。だが、活断層は、これまで通り「12万~13万年前以降」に動いた断層なのか、より厳しい「40万年前以降」なのか、重要な定義の結論を積み残した。
  • 規制委は、活断層は「40万年前以降の活動が否定できない断層」と定義し、骨子案でも明記される見通しだったが、出てきた案では従来通りの「12万~13万年前以降」のままだった。名古屋大学の鈴木康弘教授(変動地形学)は、「40万年前以降と明記すべきだ」と求めた。
  • これに対し、規制委の島崎邦彦委員長代理は一般論で応じ、今後つくるマニュアルに活断層の判断や調査方法を具体的に書く折衷案で幕引きを図った。肝心の活断層の定義があやふやなままとなり、原発の安全性の議論に火種を残したともいえる。


    ② 【独自取材】 「柔道監督らが暴力」
    ロンドンオリンピックの柔道に出場した日本代表を含む国内女子トップ選手15人が、オリンピックに向けた強化合宿などで園田隆二代表監督やコーチによる暴力やパワーハラスメントがあったと告発する文書を連名で昨年末、日本オリンピック委員会に提出していたことが判明した。トップ選手による集団告発は異例。

    ③ 【政府広報】 「公共事業、防衛費に重点」
    政府は29日、2013年度予算案を決定した。公共事業や企業の景気対策に重点配分し、防衛費を大きく増額する一方で、生活保護費は削減した。


(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)




【本日の新聞1面トップ記事】アーカイブ