2013.01.28 mon

新聞1面トップ 2013年1月28日【解説】信頼を築く第1歩

新聞1面トップ 2013年1月28日【解説】信頼を築く第1歩


【リグミの解説】

2013年度政府予算案
本日の新聞1面は、各紙とも「2013年度政府予算案(一般会計)の大枠」について報じています(読売=2番記事、朝日=トップ記事、毎日=トップ記事、日経=4番記事、東京
=3番記事)。各紙の着眼の違いは以下の通りです。

読売: 防衛費と領海警備費(尖閣警備対応)を強調
朝日: 防衛費の増額400億円と、生活保護費の減額670億円を対比
毎日: 生活保護費の減額プランを詳細に報道
日経: 地方交付税2000億円減額(地方公務員の給与引き下げが前提)に着目
東京: 生活保護費の減額で保護世帯96%が影響を受けることを強調


昨日の「リグミの解説」で触れたように、経済成長を伴わない民主主義では税収が頭打ちになり、「パイの奪い合い」が起きます。朝日新聞は、昨日の「カオスの深淵」(連続企画)でカナダの選挙を題材に、有権者の期待が満たされない不機嫌な民主主義をどうするか、という問題提起をしました。

その延長線上なのか、朝日は本日の政府予算案の報道で
も、最もストレートに「安全保障を重んじ、社会保障は政府の支えより『自助』を求める安倍首相の意向が反映」と記しています。防衛費が「パイ」を奪い、生活保護費が「パイ」を失ったという見立てです。

保守とリベラル
一般にリベラルな立場では、「国民の権利」や「弱者の保護」に光を当て、保守の立場は「国民の義務」や「国力の増強」を重視します。そういう意味で、政府予算案の報道
を見ると、リベラル=朝日、毎日、東京、保守=読売、日経というわかりやすい色分けができます。では、国民は今、保守とリベラルのバランスとして、どこに重心があるのでしょうか。

本日の日経新聞の世論調査の結果は、ひとつの示唆になります。内閣支持率は68%(発足当初比+6ポイント)、不支持は22%(同▲7ポイント)と出ています。

さらに、「参院選で投
票したい政党」として、自民党が「41%」と、ダントツの1位に躍り出ています(以下は、「日本維新の会12%」「民主党8%」「みんなの党7%」「共産党4%」「公明党4%」「生活の党1%」「社民党1%」)。保守的な色彩の強い政党(自民、維新、みんな)を合計すると、60%に達します。

生活保護の不正受給問題
では、生活保護については、国民はどんな意識を持っているのでしょうか。ひとつのヒントは、1月26日(土曜)のNHK「ニュース深読み」の報道内容です。生活保護費につい
てのアンケートをしたところ、「削減に賛成する声」が「反対する声」と同じかそれ以上にあったそうです。「不正受給がある」「最低賃金で働いている人より受給額が多い」「もっと働け」といった理由が挙げられていました。

番組の解説者は、「不正受給は2%で、記入間違いなどを除いた純粋な不正は、1%未満」と述べていました。「最低賃金より高い」については、想定ケースや地域差などがあり、一概に言えないとのこと。そして「もっと働け」という意見に対して、受給者の大半が「高齢者」「身体障害者」など、働きたくても働けない人で占められていると指摘しています。

刑務所の過剰収容問題
もうひとつヒントになる記事が、1月22日の朝日新聞に掲載されました。「刑務所から見えるもの」という犯罪学者・浜井浩一さんのインタビュー記事です。浜井さんは、刑務
所の過剰収容問題をマスコミは犯罪の凶悪化と報道したが、「実態は高齢者や知的・身体的ハンディキャップを抱えている人など、ちゃんと働けない人たちばかり」と言います。本当の理由は、累犯化により、軽微な犯罪でも繰り返されれば起訴して実刑にせざるを得なくなり、「高齢の受刑者が急増するという世界的にも異常な事態が生じている」そうです。

生活保護の不正受給問題も、刑務所の過剰収容問題も、その実態や背景が正確に報道されず、国民は偏った情報で事の良し悪しを判断している構図が浮かび上がってきます。でも、それだけでなく、もうひとつ根深い問題があるように思います。浜井さんは、「日本人は『仲間内』での相互監視にさらされ、村八分になるのは怖いので仲間内で『安心社会』を築くが、他者に対する信頼をもとに築かれた社会とは根本的に違い、仲間ではない人間に対する警戒心は強く、排他的」と指摘しています。

信頼を創り上げる第1歩
信頼を置けないと思うと、他者には厳しくなります。それは、領土問題で対立する中国や韓国に対しても言えることですが、同じ日本の中でも起きている問題なのかもしれま
せん。まずは、事実を正しく把握し、曇りや偏りのない視点を持つことが必要です。生活保護者も受刑者も、そして領土問題のある相手国の人々も、実際の姿を見ないで、良い悪いを判断するのは、危険なことです。保守かリベラルかに関わらず、他者にどこまで信頼を置き、共感を持てるかは、決定的に大切なポイントになります。

アルジェリアの人質事件の犠牲者となった10人の日本人と、生活保護なしには生活できない受給者やホームレスの人々は、共に私たちの同胞です。自国の仲間を思う心が広がれば、他国の人々に対しても、興味と感心を持てるようになると思います。信頼を築く最初の一歩。それは、「少ない情報」や「偏った情報」では満足できない、と気付くことではないでしょうか。

(文責:梅本龍夫)
 





① 【政府広報】 「全世界1日1回監視」

  • 政府の情報収集衛星「レーダー4号機」が27日、種子島宇宙センターからH2Aロケットで打ち上げられた。H2Aは、連続16回打ち上げ成功。
  • 情報収集衛星は、事実上の偵察衛星となる。光学衛星2基以上、レーダー衛星2基以上を同時運用する「4基体制」で、1日の間に監視できない死角をなくす。
  • 情報収集衛星は、1998年の北朝鮮のテポドン・ミサイル発射がきっかけで導入された。2003年に最初の光学とレーダーの各1号機が打ち上げられた。その後、打ち上げ失敗等で当初計画から10年遅れで完成する。


    ② 【政府広報】 「領海警備、防衛費、増強」
    政府は27日、2013年度予算案の一般会計の総額を92兆6100億円に固めた。領海警備費を1.4倍の364億円に、防衛関係費は前年度比400億円増の4兆7500億円とする。

    ③ 【発表引用】 「正恩氏『重大措置を決心』」
    朝鮮中央通信は27日、北朝鮮の金正恩第1書記が「国家的重大措置を講じる断固たる決心」を表明したと伝えた。「重大措置」が3回目の核実験を指す可能性がある。

     

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





① 【政府広報】 「防衛費、11年ぶり増」

  • 安倍政権は27日、2013年度政府予算案(一般会計)の大枠を固めた。総額は、92兆6000億円となる。防衛費を2012年度比400億円増やす。増額は、11年ぶり。
  • 一方で、2013年度の生活保護費は670億年減らす。安全保障を重んじ、社会保障は政府の支えより「自助」を求める安倍首相の意向が反映された。
  • 海上保安庁の予算は、1765億円。うち「領土・領海の堅守」枠は前年度比1.4倍の364億円。巡視船新造や尖閣専従チーム設置などに充てる。


    ② 【政府広報】 「一般会計92兆6千億円」
    政府予算案(一般会計)の総額は、過去最大だった2012年度の92兆4千億円以下を目指してきたが、削減しきれず、過去最大の92兆6千億円となった。

    ③ 【政府広報】 「4人世帯、月2万円減」
    生活保護費を8月から削減することが決まった。受給世帯の96%で減額となる。子供のいる世帯などで最大10%の減額。都市部の夫婦と子供2人の世帯では、2万円減る。

     

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 





① 【政府広報】 「生活保護7.3%引き下げ」

  • 政府は27日、生活保護費のうち生活扶助(日常生活費に相当)の基準額を2013年度から3年間で670億円(国費ベースで約6.5%)減額する方針だ。「期末一時扶助金」(年末に支給、一人1万4000円)も70億円削減し、生活扶助費総額で740億円(約7.3%)の減額となる。
  • 生活扶助費以外にも、生活保護費の半分を占める「医療扶助」(全額税負担)などの削減も目指す。安価な後発医薬品の使用を原則とする。不正受給対策の徹底、受給者の自立・就労支援の強化により450億円分の削減を目指す。
  • 麻生副総理・財務相と田村厚労相が、2013年度当初予算について会談し合意した。29日に閣議決定する。


    ② 【政府広報】 「通常国会きょう召集」
    通常国会が28日召集される。安倍首相は、昨年12月就任以来初めての国会論戦となる。会期は、6月26日までの150日間。

    ③ 【政府広報】 「情報収集衛星4基に」
    政府の情報収集衛星「レーダー衛星4号機」が27日、種子島宇宙センターから打ち上げられた。情報収集衛星4基がそろい、地球上のあらゆる地点を1日1回以上観測できる監視網が完成する。

     

(毎日jp http://mainichi.jp/
 





① 【世論調査】 「内閣支持68%に上昇」

  • 日経新聞とテレビ東京が25~27日に世論調査を実施した。内閣支持率は68%(発足当初比+6ポイント)、不支持は22%(同▲7ポイント)。電話によるRDD方式。913件の回答(回答率63.7%)。
  • 主な質問と回答は、以下の通り。▽「安倍内閣や自民党執行部の仕事ぶり」=「評価する」62%、「評価しない」18%、▽「アルジェリア人質事件での日本政府の対応」=「適切だ」61%、「適切でない」21%、▽「事業規模20兆円の緊急経済対策について」=「国債を増やしても大規模に」10%、「適切な規模だ」25%、「国債を増やすなら小規模に」47%。
  • 円安の進展や日経平均株価の上昇が背景にあると見られる。安倍首相のデフレ脱却の取り組みや、アルジェリア人質事件の危機管理が評価された。ただし、大型の緊急経済対策に伴う国債増発には懸念の声がある。


    ② 【連続企画】 「不遇の世代、好機はそこに ~ネット・人類・未来」
    SNSや車、家電センサー、ICカードなど増殖するデータの塊を解読し、経営に役立つ仮説を導き出すデータサイエンティストは、米誌ハーバード・ビジネス・レビューが「21世紀で最もセクシーな職業」と呼ぶ。

    ③ 【政府広報】 「情報衛星打ち上げ成功」
    三菱重工業と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は27日、政府の情報収集衛星「レーダー4号機」と実証衛星を載せたH2Aロケットを種子島宇宙センターから打ち上げた。

     

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 





① 【独自取材】 「最終処分場誘致に協力」

  • 元長崎市長の本島等氏(90)は、世界に核廃絶を訴えてきたが、出身地の長崎県・五島列島に原発で使用済みとなった核燃料廃棄物の最終処分場の誘致計画に協力してきたことを明らかにした。過疎地の地域振興に心を砕いたためだが、計画は地元の反対で頓挫した。
  • 「悔やんでいる」。福島原発事故で、再び核の悲劇が繰り返されたのを見て、本島氏は苦衷の思いを吐露した。カトリックの洗礼を受けた氏が自身の行為を公に”ざんげ”するのは初めて。
  • 経済振興と引き換えに、地方に迷惑施設を押し付ける国の政策の在り方について、本島氏は「時代に合わないのではないか」と疑問を呈する。本島氏は、1979~1995年まで4期16年間、長崎市長を務めた。「長崎平和宣言」を唱えるなど、平和運動に取り組んできた。


    ② 【独自取材】 「謎の設計者は20代建築家」
    嘲笑時代の雰囲気漂う洋風駅舎となるJR日光駅の設計者を、郷土史研究家の福田和美さんが解明。後世に賞賛されるものを造ったのは、20代の鉄道院技手、明石虎夫だった。

    ③ 【政府広報】 「受給世帯96%で減額」
    政府は27日、生活保護費のうち食費などの生活費に充てる生活扶助費を、2013年度8月から3年間かけて段階的に約850億円(国費ベースで約8.3%)減額することを決定した。


(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)




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