2013.01.15 tue

新聞1面トップ 2013年1月15日【解説】「世界1」を目指す

新聞1面トップ 2013年1月15日【解説】「世界1」を目指す


【リグミの解説】

本日の新聞1面のトップ3記事の「スタンプ」

読売新聞:
① 【政府広報】 「キャリア教育、高校必修に」
② 【企業広報】 「トヨタ世界1奪回」
③ 【独自取材】 「大雪、首都圏混乱」


朝日新聞:
① 【政府広報】 「省エネ耐震住宅、減税拡充」
② 【独自取材】 「大雪、けが350人超」
③ 【政府広報】 「富裕層増税、2015年から」


毎日新聞:
① 【政府広報】 「耐震基準適合ビル4割」
② 【独自取材】 「薬物相談1桁、10ヵ所 ~精神保健センター」
③ 【独自取材】 「首都圏大雪、都心で8センチ」


日経新聞:
① 【政府広報】 「生保の現物給付解禁」
② 【シリーズ】  「結婚・独り立ち、遠い夢 ~働けない若者の危機」
③ 【政府広報】 「8%時、見送りの公算 ~消費税の軽減税率」


東京新聞:
① 【独自取材】 「『追い出し』住民困惑」
② 【独自取材】 「大雪、首都圏を直撃」
③ 【独自取材】 「都、周知に触れず ~震災復興マニュアル」


量の世界1
本日の読売の1面2番記事は、「トヨタ世界1奪回」です。2012年の世界販売台数が970万台(ダイハツ工業
、日野自動車を含む)となり、過去最高を記録し、2年ぶりに世界1に返り咲きました。東日本大震災と体の洪水で大幅減産となった昨年の反動増に加え、北米、アジア市場で販売好調だったことが要因です。

トヨタは、2009年から2010年にかけて、北米でのリコール問題も起き、巨大化し世界1に上り詰めた企業の課題を浮き彫りにさせました。2011年の相次ぐ自然災害に加え、昨年は中国での反日運動によって日本車排斥も起きました。

競争相手に目を転じれば、販売台数世界1を目標に掲げる独フォルクスワーゲング
ループ、倒産後に急速に経営を回復させた米ゼネラルモーターズと激しいトップ争いを演じています。また、品質とデザイン面での商品力を急速につけ、日本車を凌駕したとも言われる韓国車と世界中で競合しています。

質の世界1
そんなトヨタに求められているのは、「量の世界1」だけではありません。「質の世界1」こそ、トヨタが
「日本のものづくり」の総本山としての矜持を示す領域ではないかと思います。初代レクサスLSが北米にデビューしたとき、その静粛性の高さに世界中が驚愕し、品質と比較してリーズナブルな価格と相まって、高級車の基準を塗り替えました。

世界初の量産ハイブリッド車の初代プリウスが生まれた1997年当時は、今と違いエコはまだメジャーな価値基準ではありませんでした。欧州メーカーは、その試みを見下していました。しかし、15年後の今日、欧州メーカーも次々とハイブリッド車を投じ、レースにおいてもハイブリッドが台頭してきています。今や単なるエコから、高性能と高効率の両立の切り札のひとつになっています。

トヨタは、当面のエコの現実解は「プラグイン・ハイブリッド」にあるとの立場ですが、将来を見据え、究極のエコと言われる燃料電池車(水素と酸素の化学反応で得られる電気エネルギーを利用、排出されるのは水だけ)の開発でも先頭集団にいます。またクルマの安全化への取り組みでは、完全自動運転を視野に、こちらも最先端の取り組みをしています。

変革のリーダー
トヨタは販売台数などの目標を公言しない経営をしてきましたが、ユニクロの柳井社長のように、量の世
界1が目標と公言する企業家はすくなくありません。フォルクスワーゲンが量のナンバーワンを目指すのも、それがコスト効率に大きなメリットがあるからです。経営の合理性のみならず、世界1になることは、企業として名誉なことであり、企業家のモティベーションともなっています。

しかし、「世界1」の企業には、実はもっと深いテーマが与えられています。それは、今日のグローバル経済の中で、如何にして持続可能な調和の取れた社会を創造するか、というテーマです。有限の化石燃料に依存しないクルマ、CO2などの廃棄物をまき散らさないクルマ。究極の安全性の追及。廃車になっても資源をできるだけ100%再利用できる環境システムの構築。

尊敬される会社に
そして、企業に求められる足元のもっとも地道な使命は、雇用です。「仕事」は、単に生きるための糧を
得る行為ではありません。雇用を生むことは、税金を納めることと同様に、企業の最も基本となる使命といえます。トヨタは、東日本大震災の復興に際し、国内雇用を守ると宣言しました。その証が、プリウスに続くハイブリッドのヒット商品「アクア」をすべて岩手工場で生産する取り組みです(参照:日経NBO)。

「働く」は「傍(はた)を楽にする」という言い換えができる、と言われるように、お互いを助け合う人間として最も基本の活動が「仕事」です。他者を助ける行為(利他)は、人間の尊厳を高めます。雇用の創造には、そういう本質的な意味があります。トヨタには、非正規雇用問題など、格差が進む日本の雇用環境に一歩も二歩も踏み込み、「利他の経済」を実践する「世界1尊敬される会社」を目指してもらいたいと思います。

(文責:梅本龍夫)
 





【記事要約】 「キャリア教育、高校必修に」

  • 文部科学省は、高校の普通科で「キャリア教育」の必修化を検討開始した。キャリア教育は、社会人として職業に就く際に必要な能力や態度を育成する教育。近隣の企業での職場体験、就業体験などを行うケースが多い。
  • 2011年度のの就業体験の割合は、公立高3年生で専門学科を含めて30%、普通科では17.7%に留まっている。日本の高校生は、米国、中国、韓国に比べ自主的な勉強時間が少ない(財団法人日本青年研究所の調査)。
  • キャリア教育の内容を具体化することで、進学や就職の目的意識を明確にしていく狙いがある。筑波大の金子元久教授(高等教育論)は、「目標を持った生徒の方が勉強時間が多い傾向になる。将来について早く考えさせることで意欲を向上させる効果がある」と語る。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/





【記事要約】 「省エネ耐震住宅、減税拡充」

  • 政府・自民党は、省エネや耐震性を高めた住宅の現金購入に際し、所得税を減税する制度を拡充する方針だ。消費増税による住宅購入費の増加を軽減する措置。
  • 今年末に終わる現行制度を5年程度延長する。減税効果は、最大50万円のところを倍の100万円程度まで引き上げる。
  • 昨年末に終了したリフォームでの減税も再開する方針。減税規模は、昨年までの制度同様に、省エネ対策で上限20万円、バリアフリー対策で15万円とする方向だ。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/





【記事要約】 「耐震基準適合ビル4割」

  • 国土交通省は、1981年以前の耐震基準で建てられた全国のオフィスビルや大型店15万棟の耐震性について調査をした。現行の基準(新耐震基準)に適合しているのは、43.7%だった。大規模建物(床面積5000平方メートル)では、36.6%。
  • 規模別の新耐震基準の適合率は、以下の通り。▽1000~2000㎡未満=44.7%、▽2000~3000㎡未満=45.1%、▽3000~5000㎡未満=41.7%、▽5000㎡以上=36.6%―。
  • 耐震診断の実施率自体が、59.6%と低い数字に留まった。大規模建物では、55.8%。国交省は、耐震診断を義務化する方針。罰則規定も検討している。耐震化費用など支援策も拡充する方針だ。

(毎日jp http://mainichi.jp/





【記事要約】 「生保の現物給付解禁」

  • 金融庁は、生命保険会社が現物給付の保険商品の販売規制を緩和する。保険金の代わりに、介護や葬儀などの現物を顧客に提供できるようになる。
  • 現物支給の想定例は、以下の通り。▽生命保険:「被保険者が死亡時の葬儀」「父親の死亡時に子供が優先して保育所に入れる権利」、▽介護保険:「有料介護付き老人ホームに入居する権利」「デイサービス、訪問介護などの介護サービス」、▽医療保険:「人間ドック受診」「病気退職後の復職支援」―。
  • 現在は、契約者が保険金をもらったうえで、別途にサービスや物品を提供する会社を探さなければならない。健康なうちに老後の備えを済ませておきたい人が増えてきていることに対応するもので、高齢者向けサービス市場の活性化が見込まれる。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/





【記事要約】 「『追い出し』住民困惑」

  • 阪神大震災で家をなくし、借り上げ復興住宅で暮らす神戸市の住民に、20年の退去期限が近付いている。17日で震災から18年となる。
  • 阪神大震災の翌年の1996年に公営住宅法が改正され、大量の復興公営住宅が用意された。阪神大震災では、約8000戸が借り上げられ、現在も兵庫県と神戸市などが計約6600戸管理する。いずれも20年期限。
  • 「20年問題」の焦点のひとつは、入居時に周知徹底されたかどうかだ。多くの人にとって寝耳に水の「追い出し」に、高齢になって生活の場を変えることへの不安が募る。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)




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