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新聞1面トップ 2013年1月3日【解説】グローバル駅伝

新聞1面トップ 2013年1月3日【解説】グローバル駅伝


【リグミの解説】

戊辰戦争が始まった日
今日は、戊辰戦争が始まった日。明治元年(1868年)のことでした。維新政府軍(薩摩藩、長州藩らを中
核とした軍)と旧幕府軍との戦いで、鳥羽・伏見の戦いから五稜郭における戦いまでの、一連の戦い。なかでも長岡藩(新潟県)や会津藩(福島県)では藩内が戦場となり多くの死傷者を出ました。翌1869年5月に終結(「今日は何の日?1月3日」)。歴史的な政権交代を巡る内戦勃発から145年後の日、歴史の視座から見えてくる日本は、どのような姿でしょうか。

読売新聞の1面トップ記事は、ここ10年、官邸が機能不全を起こし、首相が孤立する姿を描いています。朝日新聞は、福島第1原発事故で、米軍トップが極秘のメッセージを日本政府に送ったとする記事。毎日新聞は、米国が「財政の崖」を土壇場で回避したことを伝えています。日経新聞は、新興国向けの低コスト小型衛星ビジネスに官民で参入する計画を報道。そして東京新聞は、秋葉原に新設される食の商業施設の紹介です。

米国の政治、日本の政治
米国の大統領は、任期4年。強大な権力を掌握し、中期的な目線で国家運営にあたります。特に再選され
た2期目が、大きな仕事を仕上げるベストタイミングとなります。政権交代と共に、ホワイトハウスに参集する官民のスタッフが入れ替わると言われます。全米の選りすぐりの頭脳の中から、時の大統領と政権政党の主義主張に賛同する精鋭が集い、大統領を全面的にサポートする、というイメージがあります。政権運営に関与した経験と実績は、個人のキャリアとしても確実にプラスになります。

翻って日本の首相は任期不定で、権限も分散されています。唯一、専権ともいえるのは、衆議院の解散権。新しいことを始め、独自の価値をを創造する権利ではなく、組織を破壊し終わらせる権利だけが専権であるというのは、皮肉なことです。スタッフも、首相の個人的なコネクションで声を掛ける程度で、組織的なチームを作ることは稀だと聞きます。そもそも民間人にとって、政治に関わることはまったく評価されず、逆にキャリアに空白を作ってしまうため、敬遠される傾向があります。

頼りとすべき官僚は、省単位の動きに終始するため、国家の中長期のビジョンを「大きな物語」にまとめ、戦略的に実行していくことができません。明治維新から145年経っても、日本は幕藩体制を続けているように見えます。政治家は、派閥という藩を中心に動き、官僚は、省という藩に閉じこもっています。

米中2大国時代の日本
一方、朝日の記事を読むと、米軍トップが、福島第1原発事故の影響で、横須賀基地が使えなくなる可能
性に危機感を募らせたたことがわかります。日本はペリー提督が黒船に乗って浦賀にやってきて鎖国日本に開国を迫ってから、ずっと米国の影響下で政治を司ってきたことを実感させられます。米軍基地の面積の7割以上が沖縄で、マスコミの報道も沖縄発が多いですが、実は横須賀基地は、太平洋に展開する米海軍の空母の母港です。

今日、世界的にナショナリズムが台頭し、日本もその傾向が強くなっているようにも見えます。しかし、そもそも日本は、ナショナリズムの礎となるネーション(国家)の稜線がはっきりしません。国内を見ると、政治や行政が、目に見えない入り組んだ境界線を引き、国外に目を転じると、米中2大国時代の海の境界線づくりの最前線に、日本が位置づけられています。

若者の命
明治維新は、諸外国の革命と違って、大規模な殺戮や破壊を伴わないものだったと言われます。それは主
に、江戸城が無血開城されたことを指しているのだと思います。実際には、戊辰戦争における会津藩の白虎隊に見られたように、多くの若者の命が失われました。

平和で民主的な制度のもとで政権交代を果たすことの価値がどれほど大きいか、私たちは歴史認識をもって自覚する必要があると思います。外交もまったく同じです。「平和主義」による「対話」を忘れ、狭量なナショナリズム(「国家主義」)を前提とした「力と力の対抗」を前面に出せば、若者の命が再び無益な争いに投じられる可能性があります。

グローバル駅伝
今日は、伝統の箱根駅伝の復路です。日本体育大学が30年ぶりに総合優勝を果たしました。若者が学校の
ために必死に走る姿は、新年の風物詩であり、平和を象徴する風景です。各大学は、OBを含め全員で盛り立てていきます。競り勝つチームがあれば、競り負けるチームもあります。タスキがつながらず、涙を流すチームがあります。それでもチームのために精一杯走り続ける。それを日本中が応援する。

このチームプレイの在り方こそ、日本のソフトパワーの源泉だと思います。そしてチームの境界線を広げると、国境を超えた地域チームや、グローバル・チームが見えてきます。「心の国境」を広げること、そして「Win-Win」を目指した大きなチーム創りを目指す。グローバル駅伝ができるNIPPON。2013年の初夢です。

(文責:梅本龍夫)


 箱根駅伝復路、ゴールを目指し競り合う選手たち 2013.01.03
 





【記事要約】 「官邸、失われた10年 ~NIPPON甦れ」

  • 東日本大震災後、復興構想会議の議長代理を務めた御厨貴・東京大学客員教授は、首相官邸4階の大会議室の壁に時計がかかっていないのが気になった。「時計をかけてほしい」と要請しても、官邸スタッフは動かない。
  • 日本の簡素の美を見せる意図があり、部屋に何も置かない、というのが理由。旧官邸に比べて倍以上の広さがあり、部屋ごとにセキュリティーがかかるため、スタッフ同士の意思疎通もしにくい構造になっている。
  • 2001年の中央省庁再編などで、内閣官房・内閣府の権限は法的にも強化された。しかし、官邸指導で経済政策を打ち出した小泉政権を別にすれば、官邸は弱いとの印象のままだ。安倍首相も、前回は官邸主導に失敗した。日本の「脳」が考え、発信していくためには、時間が勝負になる。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/





【記事要約】 「『米が懸念』極秘公電 ~プロメテウスの罠」

  • 2011年3月14日深夜から15日未明にかけ、駐米大使の藤崎一郎から外務省に「極秘」の公電が届いた。米軍トップの統合参謀本部議長、マイケル・マレンが藤崎に強く迫った言葉が並べられていた。事故処理を東電任せにする日本政府を厳しく問いただすものだった。
  • マレンの危機感は、1~3号機に比べ圧倒的に多くの核燃料がプールされている4号機に集中していた。メルトダウンすると、膨大な放射能が飛散し、日本全土に影響が及ぶ。
  • 15日午前6時過ぎ、マレンが懸念した4号機が爆発。午前7時には、米海軍横須賀基地で、放射線量の増加を告げる警報が鳴った。福島第1原発事故の影響と推測された。原発がさらに悪化すれば、東アジアの重要拠点である横須賀基地が使えなくなる。ワシントンは日本に見切りをつけようとしていた。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/





【記事要約】 「米『財政の壁』土壇場回避」

  • 大規模減税の失効と歳出の自動削減が年明けに重なった米国の「財政の壁」は、米議会下院で回避策が賛成多数で可決された。米国の財政緊縮によって、世界経済に影響が及ぶ危機は、土壇場で回避された。
  • 回避策のポイントは、以下の通り。▽年収45万ドル未満の世帯で減税を恒久化、▽勤労者向け社会保障税の減税は延長せず、▽年収45万ドル以上の富裕層を対象に増税、▽歳出の強制削減の開始を2ヵ月間延期、▽緊急失業保険給付を1年間延長、▽遺産税の増税を緩和―。
  • 上院は、89対8の賛成多数で、既に同案を可決。下院も1日深夜に、257対167の賛成多数で可決にこぎつけた。オバマ大統領の署名で成立する。法案成立で、景気への影響は限定的になるとみられる。

(毎日jp http://mainichi.jp/





【記事要約】 「衛星打ち上げ半額」

  • 官民一体で、新興国向けの安価な小型衛星を製造販売する。NECが東京都内に国内最大級の衛星工場を新設。1.2トン程度の小型衛星を同時に8基製造可能となる。製造工程の一貫化と部品の標準化で、コストを2割削減の60~80億円程度とする。
  • ロケットは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)とIHI子会社が開発する。国産ロケット「H2A」の補助ロケットを活用することで、費用を「H2A」の3分の1以下に抑える。打ち上げの自動化、点検や管制業務の簡素化で、2017年以降に、打ち上げ費用30億円以下での打ち上げが可能となる。
  • 年間13兆円といわれる宇宙ビジネスは、米欧勢が先行している。小型衛星は、アジアなどの新興国を中心に需要が見込める。現行の衛星と打ち上げのコストを半分程度にすれば価格競争力がつく。政府開発援助(ODA)を含め、官民一体の売り込みを図る方針だ。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/





【記事要約】 「アキバに食の新名所」

  • JR秋葉原駅の電気街口近くの高架下に、全国の食品などを集めた商業施設「ちゃばら」が6月末にオープンする。敷地面積約1000平方メートル。
  • 場所は、かつて青果市場の一部があったところだ。「ちゃばら」は、青果市場の通称「やっちゃ場」と「秋葉原」を合わせたもの。JRの子会社「ジェイアール東日本都市開発」が設置する。
  • 同社の千葉常務は、「秋葉原はオタク文化と電気の町だが、かつてはやっちゃ場があり、食文化でにぎわっていた。添加物など食品に気を使う人たちが満足し、楽しめる場にしたい」と話す。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)




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