2012.12.27 thu

フクシマ・センダイ・カルイザワ それぞれの地で考えること(第2回)

フクシマ・センダイ・カルイザワ それぞれの地で考えること(第2回)


髙木亨

 福島市に来て感じたこと。飲み屋が安い。食べ物がおいしい。酒が旨い。呑兵衛にとってみれば天国のような場所である。いわき市の知り合い曰く、県内でも福島市内はとくに安いらしい。震災直後は人影が消えた飲み屋街も、最近は賑わっているようである。ただし、実際どこまで回復しているかは微妙ではあるが…


福島名物屋台村「こらんしょ横丁」昼の姿

 4年前の夏、初めて福島市に降り立ったとき、県庁の職員さんに連れて行ってもらったのが「円盤餃子」のお店であった。円盤餃子というのは、丸いフライパンぎっしりに餃子を並べ、円盤状のまま皿に盛って出てくる餃子のことを福島市内ではそう呼んでいる。店によって異なるが、小ぶりの餃子が一皿20個から30個、円盤状に並んでいる。一人で食べるとそれだけで満足な量に(食べ過ぎともいう)である。それまで、福島市が餃子、しかも円盤餃子でまちおこしをしているなんて、恥ずかしながら知らなかった。


お持ち帰り用の円盤餃子

 それが今年は、復興祈願も兼ねて全国各地の名物餃子を集めた「餃子サミット」が福島市内の競馬場で開催されるまでになった。でも、同僚の多くは私と同様、福島に赴任するまで「円盤餃子」の存在を知らなかった。このあたりが「ふくしま」の「宣伝下手」であり、「積極的に外に対して宣伝しなくても何とかなった」「豊かな県」の裏返しだともいえる。近隣の宇都宮市が餃子の街として全国区なのに対して、奥ゆかしい?福島市の餃子はローカルである。このあたりのお話しは別稿でも取り上げたいと思う。

 さて、連れて行ってもらったお店は改装前の「満腹」という老舗であった。古い建物のお座敷に座り、円盤餃子二皿をビールとともに頂いた記憶がある。このお店、先代が満州から引き上げてきて、福島市内で創業したとか。白菜ベースのあっさりした味わいの餃子である。現在は近接地に移転、娘が味を守っている。

 あとから知ったのだが、福島市内三大餃子の店というのがあり、そのうちの一軒がこの「満腹」であった。他に街中に「山女(やまめ)」、飯坂に「照井」がある。残念ながら照井にはまだいっていない。その他、街中には多数の餃子専門店や餃子を出す居酒屋がある。しかも、外れた事が無い。どこの餃子も個性的で甲乙つけがたい。「いつもはこの店」、「人が来るとあの店」と使い分けたりするようになった。地元の人にはそれぞれご贔屓のお店を持っているようである。何となく、私もできた。

 福島大学に赴任してからは、飲む機会が増えた。つきあいが増えたことが大きい。行政関係や同僚などとの打合せのあと、飲む。お酒好きが多いので、よく飲む。最近までは飲み屋街から歩いて帰れるところに住んでいたので、終電を気にしないで飲めた。気がつくと深夜1時を過ぎていたことも。次の日がつらいのだが、飲んでいるときはお構いなし。おかげで体重も増えた。

 我がセンターの飲み仲間には、独身者や私同様の単身赴任者が何人かいる。彼らも呑ミニケーションを得意とする。そして「監視者」の目が届かない(笑)。それも飲む機会が増える一因である。飲めないけれど、呑ミニケーション好きなヤツもいる。基本30歳代半ばから40歳代後半までのオヤジたちである(一部女性もいる)。そんな仲間が集まって、夜な夜ないろいろな話をする。「大学の先生」も組織についてや、仕事の悩みなどの話もする。愚痴もこぼす。もちろん真面目な話もする。今取り組んでいる内容や、今後の研究方針など。

 今年は大型研究費の獲得をめざし同僚が中心となって申請書を取りまとめた。その申請書のアイデア出しや方向性を決めたのも、同僚が行きつけの飲み屋さんであった。「街中サテライト」と我々が勝手に呼ぶそのお店は、ご夫婦で営まれている定食も出す居酒屋さんである。奥と二階にお座敷があり、常連になると?使わせてくれるらしい。そのお座敷でいろいろな原案を練ったりしている。やはりこの店にも餃子がある。なので、ほぼ必ず餃子を頼む。餃子を食らう。そして飲む。語り合う。夜は更けていく。


語り合うオヤジたち

 
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著者プロフィール

髙木 亨(たかぎ・あきら)

福島大学うつくしまふくしま未来支援センター特任准教授
博士(地理学)、専門地域調査士。
東京生まれ、東京近郊で育つ。
立正大学で地理学を学ぶ。
立正大学、財団法人地域開発研究所を経て2012年3月から現職