2012.12.14 fri

新聞1面トップ 2012年12月14日【解説】選挙後も続く「対話」

新聞1面トップ 2012年12月14日【解説】選挙後も続く「対話」


【リグミの解説】

衆院選の終盤世論調査
本日の新聞1面トップは、読売、朝日、日経が衆院選の終盤の世論調査です。今回も読売と日経は共同調査、朝
日は単独。調査結果は、前回(12月4~5日調査)とほとんど変化していません(今回は共同通信の調査はなし)

3紙の傾向分析は、概ね一致しています。読売・日経は接戦区・注目区70のサンプル調査のため、全300選挙区を調査した朝日の調査結果を中心にまとめると以下の通りとなります。

  1. 自民党は単独過半数(241)を獲得する勢い。280以上も視野に入る
  2. 公明党も30前後とと堅調であり、自公で300をうかがう
  3. 自公が接戦区も制した場合、合計で320を超え、衆院で3分の2以上を獲得する可能性もある(その場合、参院で否決された議案も衆院で再採決可能)
  4. 民主党は苦戦しており、75前後の議席数
  5. 日本維新の会は、民主党と第3党を争うが伸び悩み、45前後の情勢
  6. 日本未来の党は、全般に苦戦しており、10前後
  7. みんなの党も、18議席前後

上記のポイント3が、今回の調査で最も注目される情勢分析です。

自民党躍進の理由
朝日新聞2面で、自民党躍進の理由を以下のように分析しています。

  1. 自民党の政党支持率としては21%で、大敗した2009年の22%と同水準(2003年=30%、2005年=33%)。しかし、小選挙区で投票態度を明らかにしている人の46%が自民候補を挙げる
  2. 今まで民主支持の中核だった男性30~50代が自民に移行。無党派層も民主から離反。一方、第3極がまだ小さな塊でしかない。結果、自民党に投票意向が集中している
  3. 投票先を決めるとき最も重視するもの
       「景気対策」=61%
       「原発の問題」=16%
       「外交・安全保障」=15%
  4. 「景気対策」を挙げた人のうち自民党候補に投票とする人
       全体=51%
       有権者数10万人未満の市=55%
       町村部=59%

このように、自民党を政党として支持する勢力が強いわけではなく、小選挙区の中で比較優位で自民党候補が挙げられいます。その理由は主に「景気対策」への期待であり、その傾向は地方に行くほど顕著になっています。ここから見えてくるものは、政権交代以前の自民党が、地方の支持基盤を固め、経済のパイを分配していた時代の感覚に回帰する傾向です。

選挙後も続く政策論議
東京新聞の1面トップ記事は、昨日の続きで「9条この1票で(下)」です。選挙結果が自民党大勢になっても、
それは「白紙委任」ではない、というメッセージを込めた記事になっています。衆院選の告示直後は、「原発」が「ワンイシュー(唯一の課題)」の選挙に見えましたが、フタを開けてみると、「景気対策」が「原発」に取って変わった格好です。

選挙がどういう結果になっても、新政権に「白紙委任」することは、政治に「当事者」として臨むことに目覚めた3.11以降の国民にとっては、もはや時代遅れの姿勢です。すべての政策で賛同できる政党はなかなかないものです。であれば、重要政策ごとに選挙後も政治の動向を注意深く見守り、政治との「対話」を続けることが望まれます。

「原発・エネルギー政策」を中軸に、「経済政策(景気対策)」「外交・安全保障」「憲法の扱い」の3本柱を等距離に配置し、すべてを関連付けて粘り強く議論していく場を創造することが必要だと思います。カギとなるのは、目先のことにとらわれないこと。100年の時間軸で、歴史を振り返り、未来を見据えることが、今ほど必要な時はありません。

(文責:梅本龍夫)







【記事要約】 「自民、勢い変わらず」

  • 読売新聞は11~13日、接戦区や注目区の70選挙区(全体の23%)の世論調査を行い、全国総支局などの取材を加味し情勢分析した。調査は、日経新聞と協力して実施。回答者2万6231人(回答率65%)。
  • 自民党は、単独過半数(241議席)を超える勢いを保っている。民主党は、一部の選挙区で優勢となる候補者もいるが、現職閣僚も他候補を追う苦しい展開が続いている。
  • 日本維新の会は、大阪で優勢の候補がいる。公明党は兵庫で優勢。日本未来の党は一部を除き伸び悩んでいる。ただし、小選挙区選で有権者の3割が候補者や政党を挙げておらず、情勢はまだ確定していない。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





【記事要約】 「自公、300議席うかがう」

  • 朝日新聞は11~12日、300小選挙区すべての有権者を対象に世論調査を行い、全国の取材網の情報を加味し情勢分析した。全選挙区対象に実施、有効回答12万3668件(回答率68%)。
  • 自民党は、好調を維持し、280議席以上を獲得する可能性がある。公明党も堅調で、自公で300議席を超える勢い。民主党は、反転の兆しが見られず、80議席に届くかどうかという情勢。
  • 日本維新の会は、40議席台は確保する可能性。日本未来の党は、10議席前後で大きく退潮。みんなの党は、比例区を中心に10議席台後半をうかがう。調査時点では、小選挙区で5割弱、比例区で4割が投票態度を明らかにしておらず、情勢はまだ確定していない。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 





【記事要約】 「高校生にも学力テスト」

  • 文部科学省は、小学6年と中学3年を対象に実施している学力テストを、高校生にも実施する方針を固めた。導入時期、実施教科、難易度などは今後の調整となる。受験義務は付けない。
  • 高校生徒数は約336万人。83%が進学し17%が就職するが、進路にかかわらず「高校生に必要な基礎学力を身に着けさせる」ことを目的とし、基礎学力を認定する試験にする方向。何度でも受験できる総合試験にする案もある。
  • 高校側からは、「必要ない」「公表されれば、学校の序列化をさらに強める」などの反発が予想される。テストの中味や実施方法について、紆余曲折も予想される。

(毎日jp http://mainichi.jp/
 





【記事要約】 「自公300の勢い」

  • 日経新聞は11~13日、接戦区や注目区の70選挙区(全体の23%)の世論調査を行い、全国の取材網の情報を加味し情勢分析した。調査は、読売新聞と協力して実施。回答者2万6231人(回答率65%)。
  • 自民党は、勢いを維持し、接戦区も優位を保っており、公明党と合わせて300議席をうかがう。民主党は、苦戦が続いており、70議席を割り込む可能性もある。
  • 第3極は、伸び悩んでいる。日本維新の会は、比例区では30議席程度を確保しつつあるが、小選挙区では5議席程度にとどまる。日本未来の党とみんなの党も、比例を含めて大きく伸ばす勢いは出ていない。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 





【記事要約】 「不戦の誓いに価値 ~9条この1票で(下)」

  • 東京沖縄県人会事務局長の島袋徹さん(75)は、衆院選で改憲論が政党を超えて広がるのをもどかしい思いで見ている。軍医の父親は沖縄戦で戦死。女手ひとつで7人きょうだいを育て上げた母親は、「憲法は守るんだよ」「選挙は棄権しちゃだめ」と口癖にように話していた。
  • 米国出身の映画監督で早稲田大教授のジャン・ユンカーマンさん(60)は、2005年に「日本国憲法」のドキュメンタリ映画を製作した。「改憲が議論なく進むのは怖い。憲法は民主主義の結晶で、社会の心臓。もっと慎重に話し合ってほしい」と語る。
  • 学徒出陣の経験を持つ政治学者の石田雄・東大名誉教授(89)も、「憲法9条が戦力の保持や交戦権を認めなかったから、自衛隊は海外で誰も殺していない」と強調。衆院選後に改憲勢力が多数派になったとしても、改憲を白紙委任したとは考えていない。希望をつなぐのは、脱原発や反貧困のデモ。国会を心理的に包囲することが大切と考える。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)




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