2012.12.12 wed

新聞1面トップ 2012年12月12日【解説】「勉強、好きですか?」

新聞1面トップ 2012年12月12日【解説】「勉強、好きですか?」


【リグミの解説】

国際数学・理科教育動向調査
「子供の時、勉強好きでしたか?」 こう聞かれて「はい」と答える大人はどれ位いるでしょうか。本日の新聞1
面トップ記事は、朝日と毎日が「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)の2011年結果」についての記事です。

1995年から4年ごとに実施されているTIMSSのテストで、小学4年の算数・理科ともに、過去最高得点となりました。今回、63ヵ国・地域が参加し、日本は「小4算数=5位(前回4位)」「小4理科=4位(前回4位)」「中2数学=5位(前回5位)」「中2理科=4位(前回3位)」でした。2009年からの「脱ゆとり教育」の成果が表れ、と両紙は示唆しています。

子供たちの学習意欲
しかし両紙とも指摘するのが、日本の子供たちの学習意欲の低さです。算数・数学では下記の結果です。


小4「算数が好き」  2007年=66%(国際平均80%)  2011年=66%(国際平均81%)
中2「数学が好き」  2007年=37%(国際平均65%)  2011年=39%(国際平均 - )


佐藤学・学習院大教授(教育学)は、「TIMSSはカリキュラムの習熟度を測る調査だから、日本や韓国など受験至上主義の国は好成績になる。意欲とは比例しない」と解説しています。佐藤教授は、勉強意欲は発展途上国やGDPが伸びている国ほど高いと指摘(朝日新聞3面)。

佐藤教授の指摘が正しいとすると、冒頭の質問に「はい」と答える人の比率は、年齢層が上がるほど高いことになります。確かに高度成長期やその後の安定成長期までは、国家の経済的成長と個人の「学習意欲」は高い相関関係にあった気がします。これは、経済成長と個人の「幸福度」が、ある段階までは高い相関を示すことと似た現象と推測できます。

学習意欲の2側面
学習意欲には、2つの側面があると思います。1つは「実益の追求」です。勉強すれば、より良い職業につけ、高
収入や高い社会的地位を得られる、というわかりやすい動機です。佐藤教授の指摘することは、このことだと思います。学習意欲のもう1つの側面となるのが、「真理の探究」です。直接の役には立たないかもしれないが、人生に「意味」を与える勉強、と言い換えることができます。

四則演算は生活に必要な算数の素養ですが、中学以上の数学になると、人生に不要と感じる人が多いと思います。数学が必要な職業に就かない限り、確かに不要かもしれません。しかし実は数学的な思考は、人生の諸事がなぜこんな具合になっているのかを深く理解する手助けをしてくれます。この世界を成り立たせている法則の一端に触れる勉強は、生活するだけで大変な日々に、一条の光をもたらしてくれます。

生きる意味と勉強
生きる「意味」を見失いかけたら、とにかく何かを勉強することをお薦めします。「実益の追求」にはならなく
ても、否、ならないからこそ、「真理の探究」はとにかく面白いもの。このことに気付いている人が多いほど、社会は本当の意味で豊かになります。

物質的な成長は、どこかで「幸福度」の効用がピークアウトします。しかし精神的成長は限界がありません。もっと知りたい、もっと豊かになりたい、と欲し続けます。その純粋な意欲が、物質的な成長への健全な意欲として還元されます。先日ノーベル賞を授与された山中教授の意欲は、「真理の探究」を通して、難病患者を救いたいという「実益の追求」に還流する好例と感じます。

真理の探究
ノーベル賞と縁のない普通の人々である私たちも、心の内側に秘めた学習意欲は、山中教授とまったく同じです
。ただそれが芽を出すきっかけを忘れているだけ。子供は大人の鏡です。親や教師が「真理の探究」にわくわくする姿を見れば、子供たちもそのポジティブなエネルギーを自然に体得します。

「勉強しなさい」と子供につい言ってしまう親。でも、自分自身にそんな言葉はかけないもの。冒頭の質問の続きです。「大人の今、勉強は好きですか?」 答えが「いいえ」だったとしたら、次の質問です。「なぜですか?」 ここで簡単に答を出さず、「なぜだろう?」と自問自答を繰り返す。幼児のような素朴な疑問から、「真理の探究」は始まります。

(文責:梅本龍夫)



 





【記事要約】 「北ミサイル取り外す」

  • 北朝鮮が発射予告をしている「人工衛星打ち上げ」と称する事実上の長距離弾道ミサイルが、発射台から取り外された。韓国政府関係者が11日、衛星写真を分析し明らかにした。
  • 北朝鮮は、ミサイルの飛行姿勢を制御する「操縦発動機(制御エンジン)系統」のトラブルとしている。関係者は、「発射台から取り外したということは、トラブルがある程度深刻」との見方を示している。
  • 北朝鮮は、発射予告期間の最終日を22日から29日に延長しているが、期間内に発射できるかは、より不透明な状況だ。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/

 




 

【記事要約】 「小4算数・理科、過去最高点」

  • 国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)で、日本の小学4年の得点が、過去最高となった。TIMSSは、1995年から4年ごとに実施されており、2011年は63ヵ国・地域が参加した。
  • 平均得点、順位、前回比(2007年)は、以下の通り。▽小学4年「算数」=585点(5位、前回比+17点)、▽小学4年「理科」=559点(4位、前回比+11点)、▽中学2年「数学」=570点(5位、前回と同点)、▽中学2年「理科」=558点(4位、前回比+4点)―。
  • 文部科学省は、「学習内容や授業日数を増やしたことと、全国学力調査の取り組みが成果を上げてきた」とする。ただし、中2の「数学が好き」=39%、「理科が好き」=53%と、国際平均より20ポイント以上低く、学力と比して勉強意欲の低さが目立つ。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 




 

【記事要約】 「小4理数、過去最高点」

  • 国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)で、日本の小学4年の得点が、算数・理科ともに過去最高となった。中2の数学と理科は、横ばいだった。50ヵ国・地域から約26万人の小学生と、42ヵ国・地域から約24万人の中学生が参加した。
  • 各部門上位と平均点は、以下の通り。▽「小4算数」 ①シンガポール606点、②韓国605点、③香港602点、④台湾591点、⑤日本585点、▽「中2理科」 ①韓国587点、②シンガポール583点、③フィンランド570点、④日本559点、⑤ロシア552点―。
  • 2009年度から先行実施された新学習指導要領で、授業時間が増えており、専門家は、「脱ゆとり」教育の効果を指摘している。ただし、小4、中2ともに、「勉強が好き」など学習意欲や関心は、国際平均を大きく下回っており、勉強への動機付けが課題となる。

(毎日jp http://mainichi.jp/

 




 

【記事要約】 「サントリー、中核飲料会社を上場」

  • サントリーホールディングス(HD)は、2013年夏にもサントリー食品インターナショナルを東京証券取引所に上場させる方針を固めた。時価総額1兆円規模となり、資金調達額は、最大5000億円前後を見込む。
  • サントリー食品インターナショナルは、売上高9706億円で、HD全体の5割強を占める中核事業。営業利益は881億円。主力商品は、「烏龍茶」「ボス」「伊右衛門」など。
  • サントリーHDは、創業家一族で9割以上の株式を保有している。食品・飲料や酒類などの主力事業は、非上場を続けてきた。国内市場の縮小により、成長余地の大きい海外でM&Aを推進。グローバル競争に対応するため、大型資金調達を図る。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 




 

【記事要約】 「敦賀活断層『クロ』、再稼働に焦点」

  • 原発は、衆院選の最大の争点ともいえる。原子力規制委員会が、敦賀原発(日本原子力発電)の直下にある破砕帯を活断層の可能性が高いと判断したことで、既存の原発の再稼働問題への対応が注目される。
  • 各党の「原発再稼働についてのスタンス」は、以下の通り。▽「前向き」=自民党、▽「やや前向き」=民主党、公明党、国民新党、新党改革、▽「中立的」=日本維新の会、▽「やや慎重・反対」=みんなの党、▽「慎重・反対」=共産党、社民党、新党大地、新党日本、日本未来の党―。
  • 例外なく再稼働を認めないのは、共産、社民、大地、日本の4党。未来は、極めて厳しい歯止めをかける方針。一方、自民党は「全原発について3年以内の結論を目指す」としており、最も柔軟な姿勢を示す。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)





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