2012.12.08 sat

新聞1面トップ 2012年12月8日【解説】「政治3.0」

新聞1面トップ 2012年12月8日【解説】「政治3.0」


【リグミの解説】

「Web 2.0」
2005年に出現したインターネットの新しい方向性を表す言葉として、「Web 2.0」が提唱されました。「送り手
と受け手が流動化し、誰でもがウェブを通して情報を発信できるように変化した状態」(参照:Wikipedia) 。代表的サービスに、検索エンジン、巨大掲示板、ブログ、SNS、インターネット百科事典などがあります。

対比となる「Web 1.0」は、2.0ほど明確な定義はありませんが、インターネットが普及していった比較的初期の特徴であった「情報の送り手と受け手が固定され、送り手から受け手への一方的な流れである状態」といえます。代表的サービスはウェブサイト(ホームページ)があります。

「政治2.0」
本日の東京新聞の1面トップ記事は、「政策、疑問ぶつける ~私たちの手で」です。従来の政治環境では、政
党は自分たちの都合と論理で政策を掲げ、有権者はその内容に受動的に反応するだけでした。いわば「政治1.0」の状態でした。しかし、政治は本来、有権者(国民)が主体者です。自分たちが政党や候補者に聞きたい政策や疑問をぶつけ、その内容をネット上に共有する動きが広がっています。

そうした「政治2.0」とも「民主主義2.0」とも呼ばれる動きには、「ネット上での直接民主制を実施する」「1票を政策ごとに分割して投票する」「政策課題ごとに投票する」といった斬新な方向性が議論されてきました(参照:朝日新聞2011.01.06)。

今日の東京新聞の記事は、市民団体などが政党や衆院選候補者にアンケートを出し、自分たちが確認したいポイントを明らかにしていくというもの。斬新度では一歩譲りますが、ネット上で政党・政治家と政策ごとの確認作業をすることで、有権者の理解度が深まると共に、政党・政治家の説明責任能力が鍛えられる効用があります。

「Web 3.0」
「政治2.0」は、有権者を受動的で消極的な立場から、能動的で積極的な立場に置き換えていきます。しかしまだ何かが足りません。それは「対話」と呼べるレベルまでは到達していないからです。

「Web 2.0」が提唱され
た当時から7以上経ち、ネット環境もどんどん進化しています。今は「対等な個人のソーシャルネットワーク」の時代です。いわば「Web 3.0」とも呼べるところまで来ているのではないでしょうか。

仮に「Web 3.0」を定義するとしたら、「あらゆる個人が対等なメディア(情報を受発信する媒体)としてソーシャルにつながり、お互いに知恵を出し合う場」となると思います。

「政治3.0」
では、「政治3.0」はどうでしょうか。

  • 「政治家を含めた対等な個人がソーシャルにつながり、相互に情報や智慧を出し合い、集合知としての公的意見=パブリックオピニオンを作り上げる。さらに、パブリックオピニオンを実現する社会的活動にも参画する」

これは、今の段階ではまだ、理想主義的で空想的な定義だと思います。

しかし、経済のパイが増えず、変化が激
しく将来の姿を見通すのが難しく、しかもあらゆる政策課題が絡み合う複雑系の時代となった今、一番基本になるものは「対話」です。対話は、対等な立場で真実を探求していく態度です。政党・政治家と有権者・国民が「対話する政治」を始める環境は整いつつあります。遠い道のりも、最初の一歩から始まります。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「元公務員の無罪確定」

  • 最高裁小法廷は7日、休日に職場外で正党機関紙を配布した行為が国家公務員法違反(政治的行為の制限)に問われた2つの事件で、上告審判決を下した。元社会保険庁職員は無罪、元厚生労働省課長補佐は有罪。
  • 「刑事罰の対象になるのは、公務員の職務遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものに限られる」とし、「職場での地位や職務権限の裁量などを総合的に考慮すべきだ」との初判断を示した。
  • 元社保庁職員は、「職務権限に裁量の余地がない」として無罪。元厚労課長補佐は、「管理職的地位にあり、組織運営に影響を及ぼしかねない」として有罪とした。国家公務員法が禁じた政治的行為を限定的に解釈し、事実上緩和した。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「津波1メートル、2万6000人避難」

  • 7日午後5時18分頃、宮城県三陸沖240キロ付近を震源とするマグニチュード7.3の地震があった。震源の深さは約10キロ。東北から巻頭の広い範囲で震度5弱を観測した。
  • 気象庁は宮城県沿岸に津波警報を出し、午後6時2分に同県石巻市で1メートルの津波を観測した。1メートルに達する津波は、東日本大震災以降初めて。
  • 津波が確認された石巻市の約4700人を含め、5県で計約2万6000人が避難した。気象庁は東日本大震災に伴う余震とみている。同庁は余震への注意を呼び掛けている。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「政治活動、制限を緩和」

  • 最高裁第2小法廷は7日、2件の国家公務員法違反事件の上告審判決を棄却した。国家公務員が休日に政党機関誌を戸別配布したことが刑事罰に問えるかが争われ、2審で無罪と有罪の判断が分かれていた。
  • 判決は「職務遂行の政治的中立性を実質的に損なわない場合、制限の対象外」と判断した。検察側上告の旧社保庁職員については、2審の無罪が確定する。被告が上告した元厚生労働省課長補佐は、罰金10万円が確定する。
  • 政治的行為の制限を巡る最高裁の無罪判断は初めて。「政治的中立性を損なう恐れが観念的なものにとどまらず現実的に認められるものを指す」と初めて定義した。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「企業を抜き打ち監査」

  • 金融庁が検討してきた新たな会計監査基準が7日に明らかになった。
  • 新監査基準原案の骨子は、以下の通り。▽赤字の継続や不透明な企業統治など不正リスクを列挙、▽リスクが多い場合は抜き打ち監査を実施、▽不自然な企業買収や多額の簿外資産など不正の疑いを確認、▽必要に応じて経営者に説明を求めるなど追加監査を実施、▽監査法人間の引き継ぎでは、前任は後任に問題点を詳しく伝え、監査調書の閲覧請求にも応じる―。
  • 大王製紙やオリンパスなどで会計上の不祥事が相次いだことを受け、監査を厳しくし、株式市場の信頼回復を目指す。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「政策、疑問ぶつける ~私たちの手で」

  • 選挙では、政党が党側の論理で公約を示し、有権者はその範囲内で選択をせざるを得なかった。しかし今回は違う。有権者が、政党や候補者に聞きたい政策や疑問を投げかけ、返ってきた情報を共有する。投票の基準を多く示そうという草の根運動が広がっている。
  • 社会学者の上野千鶴子氏らが呼びかけ人となる「ジェンダー平等政策を求める会」は、衆院選を前に各党に男女平等政策に関するアンケートを実施。結果をHPの「P-WAN」で公開している。八ッ場ダムの建設中止を求める「八ッ場あしたの会」も各党にアンケート調査を行った。「脱原発総選挙かなわが」は、各候補者の脱原発度をチェックする「脱原発つうしんぼ」を実施した。
  • 各団体は、活動の意義を次のように語る。▽ジェンダー平等政策を求める会=「アンケートが女性政策を考え直すきっかけになったのでは」、▽八ッ場あしたの会=「賛否を聞くだけでなく『なぜか』を問うことで政党の力量や政策の詰め方、有権者に開かれているかが手に取るようにわかる」、▽脱原発総選挙かなわが=「選挙前と後の言動に矛盾がないかチェックする」―。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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