2012.12.04 tue

新聞1面トップ 2012年12月4日【解説】未来を創造する礎

新聞1面トップ 2012年12月4日【解説】未来を創造する礎


【リグミの解説】

現在進行形の災害
かつて原発・エネルギー政策は、政治家や行政や電力会社が進めるものであり、国民は原発の立地自治体の住民
でない限り、原発の是非を意識することはありませんでした。そして原発が供給してくれる安定した電気という「便利」を一方的に享受してきました。去年の3月11日までは。

今回の衆院選は、3.11後、初の大型国政選挙となります。新聞は、民主党が圧勝し政権交代を果たした3年前と、今回の衆院選の相違をいろいろと記事にしていますが、未来から「今」を歴史の一幕として見れば、3.11が日本のターニングポイントになった、という視点が一致した「軸」になるだろうと思います。その3.11とは何か。一言で言えば、「災害が現在進行形となった」。

「異常」が「日常」となる現実
3.11直後は、パニックや犯罪が起きない日本の災害対応力の高さが外国から賞賛される場面もありました。日本
人自身も、東北の津波被害の甚大さに心を痛めながらも、復旧・復興に努めれば、再び平安な日常が戻ると期待していました。

しかし、東京電力福島第1原発事故は、そのような根拠なき楽観を許しませんでした。放射能汚
染は広域に及び、除染作業がいつ完了するかもわかりません。福島大学に勤務する方が、「線量計を持ち歩くのが日常になった」と語っていました。「異常」が「日常」になり、それに慣れてしまうのが怖い。そういう声も聞きます。

東京電力福島第1原発事故の深刻さが伝わると、政府や東電の対応のまずさなどに懸念と批判の声が上がりました。それは国内のみならず、海外からも起きました。原発事故は、日本中のみならず、周辺国まで、さらに言えば、世界中を巻き込む大事件となりました。風評被害も広がり、日本ブランドの評価は、急落しました。

3.11というターニングポイント
3.11の前後で起きたターニングポイントに、経済と外交も含まれます。経済では、戦後長らく維持してきたGDP
世界2位の栄誉を中国に譲り、3位となりました。その中国、および韓国と、領土問題をきっかけに外交関係が一気に冷え込みました。日本国内にいると、弱り目にたたり目のようにも思えてくる状況です。

こうした状況だからこそ、歴史的な振り返りをし、未来を大きく構想することが大事になります。1945年の敗戦で、日本は歴史を分断しました。「戦前」と「戦後」は、あたかもまったく別種の国家かのごとく振る舞ってきました。日本国内にいると、1868年の明治維新から1905年の日露戦争までの約40年間は、近代史として共有されていますが、そこから1945年までの40年間が「空白」となっています。ここを見ないようにしているので、戦前と戦後が分断されてしまっているのです。

歴史の「空白」と向き合う
今、自民党、日本維新の会などの保守系の政党は、憲法を戦後の「負の遺産」とみなし、強い日本を再生するべ
きだとの政策主張を打ち出しています。弱り目にたたり目の日本には、意気の上がる姿勢に見え、一見頼もしく見えます。しかし、そうした政党はなぜか、原発・エネルギー政策に関しては、曖昧な態度を取っています。「災害が現在進行形となった」にもかかわらず、そこを「空白」扱いにしています。

一方で、「脱原発」を強く打ち出す日本未来の党を初めとする政党も、GDP2位の座から陥落した日本の経済力の衰退を直視しているようには見えません。国力を維持増進できなければ、第2、第3の「トンネル崩落事故」のようなことが、日常的に起きるようになります。

今本当に必要なことは、日本人が歴史の「当事者」となることです。その手始めが、「原発・エネルギー政策」です。「脱原発」か「原発維持」かは問いません。原発問題(事故、将来の地震等のリスク、核廃棄物の最終処理問題、原発立地自治体の経済)を「空白」にしないことが肝要です。

原発・エネルギー政策という軸足
12月2日の「リグミの解説」で、「脱原発」をシングルイシュー(唯一の課題)にするのでなく、「セントラル
イシュー(中心軸の課題)」と位置付けることを提案しました。他人任せにしてきたことを、自分たちの手に取りかえすのが、「セントラルイシュー」のポイントになります。

「脱原発」にはこだわるが、「格差問題」は気にしない、ということはできません。「原発問題」は放置するが、「憲法改正」は積極的というのは本末転倒です。戦前の「空白」を作ったメンタリティーと、「原発問題」を風化させるメンタリティーは同種です。

「原発・エネルギー政策」で日本のみならず、世界に範を垂れることのできる中味ある政治を実行していくこと。それは日本人が日本が抱え込んできた問題の「当事者」となることを意味します。遠回りなようでも、「今の日本」にしっかりと軸足を定めることで、戦前の「空白」に真正面から向き合うこともできるようになると思います。それは、希望ある未来を創造する大きな礎となるものです。きょう、衆院選が公示されます。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「37トンネル緊急点検」

  • 国土交通省は3日、天井崩落事故のあった中央自動車道笹子トンネルと同じ構造のトンネルが、全国37ヵ所にあると発表した。同省は、高速道路5社と同省地方整備局に緊急点検を指示した。
  • 中日本高速道路は、笹子トンネルの検査で、つり下げ金具の打音検査をしていなかった。このことを受け国交省では、緊急点検では天板やつり金具、金具が固定されているコンクリートなどについて、「目視」「打音検査」「触診」の3つの方法で劣化度を確認するよう求めた。
  • 山梨県警は、中日本高速道路が安全確保を怠ったことが事故につながった可能性があると判断。同社の本社(名古屋)などを業務上過失致死傷の疑いで捜査することを決定した。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「12党混戦、1500人出馬」

  • 2009年8月以来、3年4ヵ月ぶりの衆院選が4日に公示される。現行制度で最多となる12政党による選挙戦となる。民主党は政権継続を訴え、自民党と公明党は政権奪還を図る。日本維新の会や未来の党などの第3極も勢力拡大を目さす。
  • 立候補予定者は、小選挙区(300議席)、比例代表(180議席)の計480議席に対して、1500人に上る(朝日新聞集計)。民主党は、267人の候補を擁立(比例単独候補3人を含む)。自民党は、326人の比例名簿順位を発表(比例単独候補49人を含む)。
  • 日本未来の党は、121人を擁立(比例単独候補10人を含む)。公明党は、比例単独候補45人の名簿順位を発表。日本維新の会は、173人の比例名簿を発表(比例単独候補21人を含む)。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「脱原発、問われる本気度 ~選択の手引き」

  • 東京電力福島第1原発事故を受け、各党は目標に差はあるが、原発依存から脱却を図るという一点では一致する。だが原子力施設が集中する青森2区では、事情が異なる。脱原発を唱えるのは共産新人のみ。自民前職、民主新人、さらに未来前職までもが、原発維持を語る。
  • 野田政権が「脱原発」方針を急に後退させたのは9月2日。「原発をゼロとする場合の課題」を洗い出す資料は、核燃料サイクルを巡り青森県六ケ所村や米国と共同歩調を取ってきた歴史や、建設中断中の大間原発がサイクルの中核原発であることを強調。それまで世論のムードで進めていた議論に対して、難しい事実関係を突き付けられた。「見通しが甘かった。気づくのが遅かったと言われればその通りだ」と首相側近は打ち明ける。
  • 「脱原発」なのか「原発維持」なのか。原発をなくしていくためには、原発に依存する日本の現実を真正面から見つめる作業が必須だ。各党の本気度が問われている。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「ローソン、ヤフーと宅配」

  • ローソンはヤフーと提携し、来年1月からインターネット宅配を始める。国内最大のポータルサイトの集客力をテコにし、ネットを「第2の店舗」に位置づける。
  • ローソン51%、ヤフー49%の新会社を設立。ローソン店舗で扱う2000品目に加え、食品や日用品を幅広く扱う。ローソンは、会員数約2700万人のヤフーの顧客基盤を生かし、自社サイトでは取り込めなかった顧客を開拓する。2015年度に売上高1000億円を目指す。
  • コンビニ他社では、ファミリーマートが買収した高齢者向け弁当宅配企業の販路を活用してコンビニ商品を届ける。セブンイレブンは、弁当や総菜の宅配「セブンミール」を約1万店で実施する。小売各社は、頻繁な来店が難しい高齢者や共働き世帯が増える中、店舗中心のビジネスモデルを変革し、消費者との接点を増やす。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「忘れない、誓う一票」

  • 政治は「3.11」を忘れていないだろうか。人々に温かいだろうか。2009年8月以来、3年3ヵ月ぶりの衆院選が、4日公示される。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故後、初めての大型国政選挙が行われる。
  • 立候補するのは、「民主党」「自民党」「日本未来の党」「公明党」「日本維新の会」「共産党」「みんなの党」「社民党」「新党大地」「国民新党」「新党日本」「新党改革」。新党日本を除く11党が比例代表に立候補する。
  • 各党は3日、比例代表各ブロックの名簿を公表した(未来は順位未定のまま公表)。立候補者数は、前回の1374人を大幅に上回ると予想される。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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