2012.12.02 sun

新聞1面トップ 2012年12月2日【解説】セントラルイシューを語ろう

新聞1面トップ 2012年12月2日【解説】セントラルイシューを語ろう


【リグミの解説】

知日派の英学者ドーア氏の指摘
情報誌『選択』2012年12月号の巻頭インタビューでロンドン大学のロナルド・ドーア名誉教授が、「政治の劣化
は国民にも責任」という主張の中で、メディアの責任にも言及しています。少し長いですが、引用します。

  • 「日本の政治をみると、シングルイシューに陥りやすい。過去には『郵政解散』『政権交代』というシングルイシューの総選挙が続いたが、今回はそれが『第3極』に変わったに過ぎない」
  • 「その責任の一端が、ものの見方が非常に狭く、しかも横並びのメディアの在り方にあるのは確かだ。例えば米国のニューヨーク・タイムズでは、右翼も左翼も、ドイツ人も中国人も投稿でき、興味深い意見が読める」
  • 「日本のメディアはその幅がまだまだ小さい。ここにこそ、国民の政治的関心が画一化し、育たない原因がある」

「シングル・イシュー」
ドーア氏の指摘を、本日の新聞1面トップ記事で比較すると、確かに幅が狭く画一的な印象です。読売新聞と朝
日新聞は、「北朝鮮のミサイル発射予告」について。北朝鮮の意図を推測するポイントが若干違いますが、「人工衛星という主張は偽り」「国際社会は容認しない」という指摘など、驚くほど近似しています。

シングルイシュー選挙の端緒になったのが、小泉首相のときの「郵政解散」だったと思います。ここ数日、各紙は主要政党の政権公約の比較をしています(本日も、毎日新聞と東京新聞が政権公約関連の1面記事)。公約の主要テーマは、「原発・エネルギー」「経済・財政」「社会保障」「子育て」「外交・安保」「憲法」などに渡るのですが、各紙とも主要な記述が「原発」で占められています。

「原発」が今回の衆院選の「シングルイシ
ュー(唯一の課題)」とは言えないまでも、各党の主張や方向性を判断する「軸」になっていることは、間違いありません。

深刻化する「格差」
ドーア氏は、原発一色になっているメディアに対して、「格差」の問題の方が社会全体の基盤を危うくすると言
う意味で、より根本的な社会問題なのではないかと指摘しています。「反原発デモはかなり激しくやっているが、脱原発だけに関心を持ち、格差が日増しに広がっている現状には同様の怒りを持てないというのは、あまりに偏りすぎていないか」。

本日の毎日新聞掲載の「ストーリー」(調査報道シリーズ)は、「ネットカフェで暮らす18歳の少女」を取り上げています。住所不定のためアルバイトもできず、日雇いの不安定な仕事をする新潟の母親の仕送りに頼るその日暮らしが続いています。取材時の所持金は、3494円。ネットカフェ一泊の料金が2400円。仕送りが途絶えると、路頭に迷うぎりぎりの生活を知り、胸が痛くなりました。

「原発」と「格差」のどちがらより重要な政治課題かは、難しい選択です。それは、「公約を掲げる政治家・政党」、「政策と政局を報道するメディア」、「メディアの情報に基づいて政治家・政党に投票する有権者」がどう連携するかに係っています。ドーア氏の指摘を援用すれば、「政治家も、メディアも、国民も偏っている」。

「セントラルイシュー」という考え方
東日本大震災と原発事故を体験した日本人に取って、「原発・エネルギー政策」は、避けて通れない根本課題です。しかしこれを「シングルイシュー」に留めると、「では経済はどうするか」「外交・安全保障との関係を無視するのか」となります。深刻化する「格差」も後回しにされ、手遅れになる可能性があります。

では、どうするか。「シングル・イシュー(唯一の課題)」を「セントラルイシュー(中心軸の課題)」に変えることを提唱したいと思います。
原発政策を「軸」に据え、そこから同心円上に広がるさまざまな政策課題のマップを作っていくのが、「セントラルイシュー」のイメージになります。

めざすのは、国民が背負う痛みも含めて理解共有し、納得して受け入
れることができる「政策物語」を創ることです。政治家も、メディアも、有権者も、「原発・エネルギー」を基軸に広がる「日本の全体像」を、イマジネーション豊かに語り合う。ドーアさんの問い掛けに対する回答です。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「北ミサイル発射予告」

  • 北朝鮮は1日、地球観測衛星「光明星3号」を運搬ロケット「銀河3号」で打ち上げると発表した。予告期間は、今月10日から22日の間。北朝鮮の宇宙空間技術委員会報道官の談話として、朝鮮中央通信が伝えた。
  • 日米韓は、北朝鮮にすべての弾道ミサイル活動の停止を求めた国連安全保障理事会決議違反に該当すると見ており、反発を強めている。北朝鮮はこれまでも「衛星打ち上げ」の名目で長距離弾道弾を発射してきた。
  • 今年4月に失敗した発射以来となる。1年に2回は初めて。発射予告期間に日本の衆院選(16日)と韓国の大統領選(19日)が含まれており、日韓の選挙戦に与える影響を計算している可能性がある。2期目に入ったオバマ政権を揺さぶる狙いもあるとみられる。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「北朝鮮、ミサイル発射へ」

  • 北朝鮮は1日、人工衛星を搭載したロケットを10日から22日の間に打ち上げると発表した。北朝鮮の宇宙空間技術委員会の報道官の談話を朝鮮中央通信が伝えた。
  • 17日の金正日総書記死去1年と、金正恩体制の事実上の発足1年に合わせ、国威発揚を狙ったものとみられる。北朝鮮は今年、「強盛国家(大国)の大門を開く」と国民に約束しており、4月の発射失敗を年内に挽回して、体制固めをする意図もあるとみられる。対外的には、2期目のオバマ政権に圧力をかけ、米朝協議の再開につなげる思惑がありそうだ。
  • 韓国外交通商省報道官は1日、「衛星名目の長距離ミサイル発射」と断定。安保理決議違反にあたるとし、計画の撤回を求めた。4月に続く「人工衛星打ち上げ」と称するミサイル発射実験に対して、国際社会の批判が強まるのは必至だ。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「『原発ゼロ』8党主張」

  • 衆院選に向けた主要各党の政権公約が、ほぼ出そろった。原発・エネルギー政策では、12政党中8政党が「原発ゼロ」を掲げる。ただし、各党公約はどれも、実現に向けた具体的手法や工程が曖昧であり、事後検証が難しい。マニフェスト選挙の在り方は、後退している。
  • 主要4党の原発・エネルギー公約は、以下の通り。▽民主党=「2030年代に原発稼働ゼロ。核燃料サイクルの在り方の見直し」、▽自民党=「再稼働は3年以内に結論。10年以内に電源構成ベストミックス」、▽日本維新の会=「既設原発は2030年代までにフェードアウト」、▽日本未来の党=「全原発が廃炉の『卒原発』。東京電力は破たん処理」―。
  • 主要4党の外交・安保公約は、以下の通り。▽民主党=「尖閣諸島をはじめ領土・領海の守りを固める」、▽自民党=「集団的自衛権の行使を可能に。尖閣諸島に公務員常駐」、▽日本維新の会=「防衛費1%枠撤廃。集団的自衛権行使の法整備」、▽日本未来の党=「東アジア外交を重視」―。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「車向け炭素繊維量産」

  • 帝人は炭素繊維を世界で初めて自動車向けに量産する。米国に300億円投資し、2015年までに生産能力を4割拡大する。米GMが量産車種に採用する計画で、帝人はGMと主要取引企業として契約を結ぶ。
  • 炭素繊維は、鉄と比べて強度で10倍、重さも大幅に軽い。米ボーイング「787」に東レ製の炭素繊維が採用され注目されたが、中長期的には、最大の需要は自動車産業となると予測される。
  • 車体を軽くできる炭素繊維は、日欧企業も採用を検討中だが、本格導入はGMが初めてとなる。主要素材の座を巡り、鉄鋼と化学大手の競争が加速しそうだ。炭素繊維は、帝人、東レ、光微レイヨンの3社で世界シェアの6割を占める。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「発送電3年で分離、未来が『卒原発』工程表」

  • 日本未来の党は1日、10年後の「卒原発」に向けた工程表の骨子を明らかにした。
  • 「卒原発」の工程表は、以下の通り。▽仕組み=「原子力賠償金額の大幅引き上げ(20兆円規模)」「使用済み燃料の総量規制と100年の乾式貯蔵場所決定」「建設中を含む原発の新増設禁止」、▽3年間の経過措置=「電力値上げ相当分の差額を交付国債で給付」「東京電力は法的整理をし、①電力供給 ②損害賠償 ③福島原発事故処理対応―に3分割」「発送電分離を含む電力システム改革を実施」、▽中後期プログラム=「開かれた競争力のある電力・エネルギー市場の確立」「再生可能エネルギーの飛躍的な普及」―。
  • 工程表は、党代表代行の飯田哲也・環境エネルギー政策研究所長らが作成した。「卒原発」の手順を具体化し、他党との差別化を図る狙いがある。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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