2012.12.01 sat

新聞1面トップ 2012年12月1日【解説】「サードビュー」の価値

新聞1面トップ 2012年12月1日【解説】「サードビュー」の価値


【リグミの解説】

党首討論会の報道姿勢
本日の新聞1面トップ記事は、読売、毎日、日経が「日本記者クラブ主催の11党首討論会」です。昨日のニコニコ
動画での党首討論会に比べ、扱いが大きくなっています。

新聞から見れば、インターネットはメディア的な秩序が確立されていない空間であり、「ほんもの」と「にせもの」の情報が交錯する、どちらかというと無秩序な空間に見えるのではないかと思います。視聴者の反応がリアルタイムでダイレクトの返ってくるところも、戸惑いの原因になっているのではないしょうか。

「編集」の限界
一言で言うと、「編集」が効きにくい空間がインターネットです。新聞は、限られた紙面に何を書くか、徹底し
て推敲します。タイトルの表現と大きさ、インパクトのある写真をどこに配置するか。こうした「読ませるための工夫」も、ネット空間に入ると、有象無象の情報に中に埋没してしまいます。

新聞と並ぶ2大メディアであるテレビもまた、「編集」を大前提としています。NHKの国会中継のような貴重な例外もありますが、基本的にテレビは政治家の発言を映像と共に細かく再編集します。NHKの元アナウンサーによると、インタビューで30秒のコメントを収録するために、1時間の取材をするそうです。

オンエアーに値するワンフ
レーズ、見出しに大書きする一文を引き出すために、アナウンサーや記者は「質問力」を鍛え、本社は「編集力」を発揮してきました。しかし新聞もテレビも、生命線であった「編集」に限界が見えてきました。

情報の独占
従来のメディアが、「編集」の価値を発揮できた大きな理由のひとつに、「情報の独占」がありました。一般人
は、政府や行政や企業などで何が起きているか、知る術はありませんでした。それを新聞やテレビが取材し、情報を編集して、読者や視聴者に提供してきました。

記者クラブという日本の独特の組織も、「情報の独占」には大変有効な仕組みなので、今日のように多くの疑問と批判に晒されるようになっても、大手マスコミから見直しの機運が生まれる兆しは見られません。

新しい時代の「目線」と「情報の質」
これからの報道の在り方を考える上で、2つのポイントがあります。1つは、目線です。「上から目線」か「対等
な目線」か。伝統的なメディアは、「情報の独占」によって、行政、立法、司法に次ぐ第4の権力と呼ばれるまでの存在になりました。しかし、ネットの時代には、あらゆる個人がメディアになります。そこでは、あらゆる情報が自由に往来しており、そうした情報の発信と受信は、「対等な目線」で行われています。

2つ目のポイントが、情報の質です。マスコミが情報を独占できた時代には、情報の質は問われませんでした。大衆にとって、それはほとんど唯一の情報源であり、マスコミは「正しい情報」を提供してくれていると信じられていました。この信頼は、3.11で崩れました。特に東京電力福島第1原発事故で、「官制報道」を繰り返したために、読者や視聴者は何が本当かわからない大きな不信と不安にさらされました。しかし、ネットの中はもっと混乱していました。何が「ほんもの」か、どの情報が「にせもの」か、わからない混とんの中にありました。

「サードビュー」の価値
党首討論会で、党首のパフォーマンス的なワンフレーズが飛び交い、それをマスコミが脚色して報道する姿勢が
、今回一層顕著になりました。今は、メディアの過渡期です。目線はどんどん「対等」になっていきます。情報はリアルタイムで双方向に流通するので、情報の独占を前提とした従来の「編集」は効かなくなります。その中で、「ほんもの」の情報をどうやって見つけていくか。

ひとつの現実的なソリューションに、「サードビュー」があります。マスコミの報道を横並びにし、客観的な「地図」にプロットすることで、A紙の「ファーストビュー」やB紙の「セカンドビュー」を俯瞰する「サードビュー」(第3の視点、全体を俯瞰する客観的な視点)を手に入れることで、自然と見えてくるものがあります。偏食は健康を害します。メディア情報も同じです。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「11党首、原発で論戦」

  • 日本記者クラブで30日、与野党11党首による討論会が行われた。1990年に国政選挙の党首討論会を開催して以来、最多の党となる。
  • 原発再稼働問題での各党の党首の考え方は、以下の通り。▽民主党=「自民党が10年も立ち止まって考えるのは『続原発』だ」と批判、▽自民党=「軽々にゼロにするとは言わない。これが責任ある政党の姿だ」と反論、▽日本未来の党=「原発から10年で卒業を目指す」と持論を展開、▽日本維新の会=「原発の淘汰は考えていく」「2030年代までにフェードアウト」という同党の公約に不満を示し、見直す考えを表明―。
  • 原発の再稼働の是非や、デフレ脱却のための金融政策など、公示に向けて争点は絞られてきた。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「甲状腺被曝、最高1.2万ミリシーベルト」

  • 東京電力は、世界保健機構(WHO)の要請の応じ、これまで詳細を公表してこなかった作業員の甲状腺被曝について報告した。福島第1原発事故の復旧作業で、最高1万1800ミリシーベルトの甲状腺被曝をした作業員がいたことが判明。
  • 甲状腺被曝量検査を受けた522人の線量は、以下の通り。▽100~200ミリシーベルト=15人、▽200~500ミリシーベルト=69人、▽500~1000ミリシーベルト=50人、▽1000~2000ミリシーベルト=32人、▽2000~1万ミリシーベルト=10人、▽1万ミリシーベルト超=2人―。
  • 甲状腺に100ミリシーベルト以上浴びると、がんが増えるとされる。チェルノブイリでは、50ミリシーベルトの甲状腺被曝でも、がんのリスクが上がるとの報告があった。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「11党首、直接対決」

  • 日本記者クラブ主催の与野党の党首討論会が、30日に開催された。3年ぶりの政権交代をかけた選挙を前に、民主党、自民党に加え、「第3極」勢力も入れた総勢11党首の論戦が展開された。
  • 焦点のエネルギー政策での発言は、以下の通り。▽野田首相=「10年も立ち止まるのは『続原発だ』。2030年代の原発ゼロを目指す」、▽安倍総裁=「どうやって供給電力を維持するか。軽々にゼロと言わないのが責任ある姿だ」、▽嘉田代表=「大地を汚す原発から卒業すべきだ。10年後の原発ゼロを目指す」―。
  • 外交政策での発言は、以下の通り。▽野田首相=「(尖閣諸島に公務員常駐を検討している自民党に対して、日中関係に)どういう影響を及ぼすと考えているのか」、▽安倍総裁=「民主党はずっと中国に遠慮してきた。それがこの結果だ」、▽石原代表=「(混乱は)中国のせいだ」―。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「安倍総裁『物価目標2%』、野田首相『1%が現実的』」

  • 日本記者クラブで30日、与野党11党首の討論会が行われた。自民党の安倍総裁は、デフレ脱却への物価上昇率目標について「2%のインフレ目標を設け、ありとあらゆる手段を取る」と表明したのに対し、野田首相は「1%が現実的」と反論した。
  • 11党首の主な主張は、以下の通り。▽民主=「一体改革を踏まえ年金・医療・介護に安心を」、▽自民=「インフレ目標2%設定し金融緩和を」、▽未来=「2022年までに原発から卒業を」、▽公明=「10兆円規模の大型補正を」、▽維新=「中央官僚支配の政治を見直す」、▽共産=「原発は即時ゼロ、消費増税に反対」、▽みんな=「中央集権体制の打破を」、▽社民=「消費増税・TPP反対、脱原発」、▽大地=「若者の雇用創出、TPP反対」、▽国民=「小泉政権下の郵政民営化の是正」、▽改革=「規制緩和・法人減税を」―。
  • 討論会には、新党日本を除く11党首が参加した。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「脱原発、未来伸ばす」

  • 東京新聞は、都民を対象に世論調査を実施した。都内有権者を対象に無作為で選んだ電話調査。有効回答1004人(回答率60.0%)。
  • 衆院選比例代表の投票予定政党は、以下の通り。①自民党19.9%、②民主党10.3%、③日本維新の会10.2%、④日本未来の党6.2%、⑤共産党6.0%、⑥公明党5.3%、⑦みんなの党3.7%、⑧社民党=1.5%、⑨新党大地0.2%、⑩新党日本0.1%、⑪新党改革0.1%、⑫その他2.1%―。「決めていない」27.0%、「わからない・無回答」7.6%。
  • 前回(11月15~17日)に比べ、自民、民主、維新の順番となる構図は変わらないが、「卒原発」を掲げた日本未来の党が支持を伸ばしていることがわかった。脱原発の核となる政党ができたことで、未来の党が脱原発を求める層の受け皿になりつつある。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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