2012.11.30 fri

新聞1面トップ 2012年11月30日【解説】対話する政治

新聞1面トップ 2012年11月30日【解説】対話する政治


【リグミの解説】

主要政党の政権公約
本日の新聞1面トップは、読売新聞と朝日新聞が「主要政党の衆院選向け公約」の記事です。興味深いのは、読売
が「民主党、自民党、日本維新の会」の3党の比較記事であるのに対して、朝日は「日本未来の党」を加えた4党を主要政党と位置付けている点です。朝日は、小見出しでは「民・自・未来・維新」と書き、日本未来の党を民主、自民に続く第3党扱いをしています。

朝日は、どちらかというと「リベラル色」が強い新聞ですので、「日本維新の会」が自民党に近い「保守色」を打ち出す中で、「リベラル」な政策が際立つ「日本未来の党」にスポットライトを当てていると思われます。対する読売は、どちらかというと「保守色」が強い新聞であり、また「原発推進」の論調を展開していることもあり、「脱原発」を政策の軸とする「日本未来の党」をあえてはずし、従来の「民・自・維新」の3極構造で政局を見ようとしているのかもしれません。

「保守」の特色、「リベラル」の特色
「保守」と「リベラル」の区分で政策論点を見ていくと、「保守」は「自由」「強さ」「自主独立」を打ち出す
傾向があり、「リベラル」は「公平」「弱者救済」「連携」を重視する傾向があるように思います。

主要政策を比較すると、「保守色」の強い自民党と日本維新の会は、「外交・安全保障」「憲法」の政策で、「(外に対して)強い日本」の志向性が際立ちます。

一方、「リベラル色」の強い日本未来の会は、「消費税」「社会保障」分
野で、「(内に対して)やさしい日本」を大切にしています。そして民主党は、両者の中間の「中道」路線に軸足を定めたようです。

原発をどうするか―保守の本音
そして原発の位置づけを決めるエネルギー政策です。3.11以前は、原発は争点にもなりませんでした。東京電力
福島第1原発事故の後でも、「将来、原発比率は上げるべき」との立場を主張する専門家や官僚、政治家が、一定数いました。それが、今夏の「国民的議論」を経て、最も「保守色」の強い立場の人でも、表立って3.11以前の原発比率(20%)以上を目指すべきとは言わなくなりました。

しかし「本音」では、日本の「強さ」と「自主独立」のために原発は不可欠という考え方はまったく変化していないのではないでしょうか。保守の本音を大きな声で主張してきた石原慎太郎氏は、「脱原発はセンチメント。経済政策を考えず、原発は黒か白かという議論はない」(11月20日)と発言。あえて意訳すれば、「『脱原発』などというのは女々しい感情論だ。『原発はこわいからイヤだ』、と子供のように駄々をこねて、経済をないがしろにするわけにはいかないんだ」と言いたいのではないでしょうか。

「脱原発」と「原発維持」をつなぐもの
「脱原発」と「原発維持」のどちらが正しいのか。ここでは答えを出すことはできません。それは、最終的には
国民が選択することです。ただ、その選択がどちらに向かうにしろ、大切なことが3つあります。

第1は、感情論を排することです。石原さんの発言をあえて意訳したのは、「脱原発派」と同じぐらい「原発維持派」も感情的な側面を持っていることを指摘したかったからです。感情的になると、建設的な「対話」が難しくなります。

第2が、情緒で原発を判断しないために、自分の「主義」を明確にすることです。「保守」「中道」「リベラル」といった主張や立場の違いが「主義」です。この「主義」は、今回争点になっている原発以外の政策(TPP、消費税、外交・安全保障、憲法など)の判断にも一貫して使用される自分の基本的な価値観になります。

そして第3が、「脱原発派」も「原発維持派」も避けて通れない最大の課題に焦点を当てることです。それが核廃棄物の最終処理問題です。この最も困難なテーマから逃げず、立場を超えた建設的な取り組みをすることは、政治の最も重要な仕事になると思います。

「対話」を始める
民主主義の成熟度を占う視点として、平等な選挙権、表現の自由や結党の自由、報道の正確さと客観性、そし
て公正な選挙制度などがあると思います。しかし、一番大事な視点は、異なる立場の人々をつなぐ建設的な「対話」の場があることではないでしょうか。

選挙は、「主義」や価値観の違いだけでなく、好みや感情が表立つ機会にもなります。それだけに、無意識的な嗜好性や感情論に振り回されず、各人が自分の内側にある深い「思い」に触れ、何が本当に大切なのかを問い掛ける必要があります。政治における「対話」の大切さ。その基本は、自分自身との「対話」にあります。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「民自、原発・金融で対決」

  • 日本維新の会が29日に政権公約を発表したことで、民主党、自民党と合わせて、主要3党の政策がそろった。いずれも、社会保障、経済・財政、エネルギー政策など、日本が直面する喫緊の課題に力点を置く。
  • エネルギー政策はの3党比較は、以下の通り。▽民主党=「2030年代に原発稼働ゼロ」と段階的な縮減を提示し、「脱原発」を求める世論に活路を見出したい、▽自民党=「再稼働の可否は、3年以内に結論を出す」とし、現実路線で原発維持の方針、▽日本維新の会=「脱原発依存」を公約に掲げ、政策実例で「結果として、既設の原発は2030年代までにフェードアウトする」と記し、同じ第3極内の日本未来の党に対抗―。
  • TPPを巡っては対照的に、維新の会が「交渉参加」を明記。これに対して、民自両党は党内に慎重派を抱えるため、曖昧な表現にとどめている。消費税に関しては、民・自・維新の3党とも、税率引き上げの必要性で一致し、消費増税反対の日本未来の党などとの違いを打ち出す。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「競う4党、公約交錯」

  • 次期政権を狙う主要4党の民主党、自民党、日本維新の会、日本未来の党の衆院選挙公約がほぼ出そろった。
  • 原発政策の4党比較は、以下の通り。▽民主党=「2030年代に原発稼働ゼロ」とし、野田首相は「丁寧にに一つ一つ乗り越えて着実に目指す」と訴える、▽自民党=「再稼働は3年以内に結論」と判断先送りし、安倍総裁は演説で原発にほとんど触れない、▽維新の会=「2030年代までにフェードアウト」を掲げ、橋下代表代行は「気持ちとしては捨てていないが、オプションができていない」と言葉を濁す、▽未来の党=全原発を廃炉とする「卒原発」を掲げ、嘉田代表は「義務教育の9年を目指してシステムを転換していきたい」と誓う―。
  • 経済政策では、民主・自民・維新の3党が「名目3%」の経済成長目標で一致する。消費増税では、民自公3党の枠組みに対して、維新は消費税の地方税化を掲げ、未来は消費増税凍結を訴える。TPPでは、民主が推進姿勢、維新は「参加しつつ、国益に反すれば反対」とし、自民と未来は反対姿勢を明確にする。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「首相、増税理解求める」
 

  • インターネット動画サイト「ニコニコ動画」の主催で、衆院選を前にした党首討論会が行われた。民主党の野田首相、自民党の安倍総裁、日本未来の党の嘉田代表、公明党の山口代表、共産党の志位委員長、みんなの党の渡辺代表、社民党の福島党首らが参加した。日本維新の会と新党改革は欠席。
  • 野田首相は、消費増税は「負担増と社会給付のセット」であることに理解を求めた。安倍総裁は、「デフレの時は増税凍結」の可能性に言及した。原発政策では、野田首相が「着実に脱原発に向かっていきたい」と自民党との違いを強調。安倍総裁は「安全神話の中にあったことは深刻に反省している。10年間でエネルギーのベストミックスを考えていきたい」と述べるにとどめた。
  • 野田首相が目指した「2大政党対決」にはならず、10党首がそれぞれの主張を一方的に展開する場面が多く、党首間の討論は深まらなかった。同サイトによると、140万3551人が視聴した。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「原発・交通も統合視野」

  • 三菱重工業と日立製作所は29日、電力システム事業を統合する発表した。火力発電システムを中心とした新会社を2014年1月に設立。電力需要が増大する新興国などで受注拡大を目指す。
  • 両社の電力システム事業統合の概要は、以下の通り。▽出資比率=三菱重工業(売上高2.8兆円)65%、日立製作所(売上高9.7兆円)35%、▽主要事業=「火力発電システム」(ガス・蒸気タービン、ボイラー、発電機など)、「地熱発電システム」、「環境装置」、「燃料電池」、▽統合新会社の売上高=1.1兆円―。
  • 三菱重工の大宮社長は、「国内で消耗戦をするより、一緒に海外で戦うことを選んだ」と説明。「良い組み合わせがあれば今後も協業を進める」と表明した。原子力発電や都市交通システムでも、事業統合を視野に日立との連携を深めたい考えを示した。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「脱石原、濃淡鮮明 ~選択の条件」

  • JR八王子駅前で29日、選挙カーの上で、前東京都知事の石原慎太郎の右手を猪瀬直樹が両手で包み込む。「継承」の場面だった。石原が「私のバトンをタッチした」と宣言すると、猪瀬は「改革を続けなくてはいけない」と誓った。
  • 石原氏の独自政策に対する主要候補者(届け出順)の考え方は、以下の通り。①新銀行東京:松沢=「清算」、笹川氏=「整理売却」、宇都宮=「清算」、猪瀬=「現状を改善」、②2020年五輪:松沢=「推進」、笹川氏=「推進」、宇都宮=「再検討」、猪瀬=「推進」、③尖閣諸島寄付金:松沢=「海上保安庁へ寄付も」、笹川氏=「寄付者の意見を聞く」、宇都宮=「寄付者へ返還」、猪瀬=「国の新政権に託す」―。
  • 主要候補者の立場(「石原都政の継承―転換」と「政党支援のあり―なし」)は、以下の通り。▽松沢=「転換」「政党支援なし」、▽笹川=「どちらかというと継承」「政党支援なし」、▽宇都宮=「転換」「政党支援あり」、▽猪瀬=「継承」「政党支援あり」―。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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