2012.11.29 thu

新聞1面トップ 2012年11月29日【解説】教養としての政治

新聞1面トップ 2012年11月29日【解説】教養としての政治


【リグミの解説】

専門家の話がわからない
ジャーナリストの池上彰さんは、東工大のリベラルアーツセンター教授です。この仕事を受けるに至った経緯を
池上さんは、次のように語っています。

  • 「きっかけは2011年3月11日です。大地震や津波の危険性を専門家たちが警告していたにもかかわらず、なぜそれが政治や行政、そして東京電力の安全対策に生かされなかったのか」
  • 「東京電力福島第1原子力発電所で事故が発生した後、記者会見やテレビで解説する専門家たちの発表や説明が、視聴者や読者にとって理解不能であったのは、どうしてなのか。」
  • 「理科系の専門家の発言が、文科系の国民に伝わらない。世の中で、あまりに『文科系』と『理科系』に分けれてしまい、大きな断層が生じているのではないか。」
    (『池上彰教授の東工大講義 ~世界編』文芸春秋 P7~8)

池上さんは、「教養」(リベラルアーツ)を身に着けることが、ひとつの答になると示唆します。「この世で戦う君に『知の世界地図』をあげよう」というサブタイトルに、意気が込められています。

「知の世界地図」
「地図」は、世界の在り方を、客観的に記します。地図の読み方を学べば、私たちは自分がどこにいて、どこに
向かおうとしているのか、正しく理解できます。地図といえは、山や川やが道路、建物といった地理情報を物理的に記したものを思い出しますが、池上さんが示唆する「教養としての地図」は、目に見えない世の中の機能や構造を地理情報のように東西南北に正確に落し込んだものです。この地図、東工大の学生以外にも役立ちそうです。

本日の新聞の1面トップ記事は、読売と毎日と日経が、衆院選に向けた各政党の政権公約や新党結成動き、また各党の支持率を問う世論調査になっています。ついこの前まで、新聞の1面は、中国との尖閣諸島の衝突問題で埋め尽くされていたのに、今は選挙一色です。しかも、ほとんどの情報が、いわゆる政局がらみ。

マスコミが伝えないこと
リグミ・SNSでのユーザ間の「まじめな雑談」で、あるライブに行った方が「マスコミがやってるのは政局のニュー
スだけで、政策は全然出てこない」とミュージシャンが発言するのを聞いて得心した、と語っていました。「なるほど、政局の話ばっかりだからニュースに興味がわかないのかって、やっとわかった」。

新聞を読んだり、ネットで情報検索をすれば、世の中のことはある程度つかめます。しかし、世の中の全体観をつかみ、自分がどうしらたいいか、ちゃんと判断できるようになるかといえば、心元ないものがあります。それは、新聞もネットも、正しい知識を客観的に提示した「地図」になっていないからです。「教養としての地図」は、どうしたら手に入るのでしょうか。

昔の人は、たくさんの古典を読み、歴史を学び、宗教や哲学を探求することで、教養を身に着けました。今日でも、この路線はありです。でも、世の中がグローバルにつながり、超特急で変化している現代、よほどの知力と時間がない限り、「教養としての地図」は身につきません。

自分で探求する
池上さんは、大学生は高校までの「教えられる立場」を忘れ、「正しいこと」を自分で見つけて行かないといけ
ない、と示唆します。「地図」は誰かが作り、与えてくれるものではありません。それは、自分の意志で見つけていくもの。「自分がどこにいるかわからない」と自覚することが、出発点になると思います。逆説的に言えば、地図がないから、世界はどうなっているのかを自分で探求する。その過程で、段々と世の中の様子が見えてきて、それが自分なりの「地図」の形になっていくのではないでしょうか。

こうしたことは、学生や専門家に限られた話ではありません。本日の東京新聞の1面トップ記事は、「母親ら『国動かしたい』」です。3.11以後、子どもたちを守る活動をするうちに、政治と関わるようになり、仲間とつながっていく母親たちの動きをレポートしています。ある母親は、「今まで世の中のメジャーにならない立ち位置に慣れていたんです」と語っています。原発事故で、「当事者」になり、主体的に動くようになりました。

教養としての「政治の地図」
教養はすぐの役立つノウハウと対極にあるものです。でも、いざ動こうとなったとき、とても役に立ちます。な
ぜなら、「教養という地図」があることで、たとえば、マスコミが伝える「政局」の奥にある世の中の大きな仕組みや歴史的経緯などが見えてくるからです。

池上さんの問題意識にある「専門家と一般人の分断」「理科系と文科系のギャップ」を埋める活動は、3.11以後の日本人にとって、本当に大切なことになってきています。そして今、もうひとつ必要なことがあります。それは、「政治家と有権者の隔たり」を埋めること。

大震災後、初めての総選挙が来月あります。政治家の言いなりになるのでなく、有権者が「政治の地図」という教養を手に入れ、心から良いと思える政治家と政党を主体的に選択する。政局の「お祭り騒ぎ」に騙されず、本当の「政(まつりごと)」にコミットする。そんな状況作りませんか。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「維新『TPP交渉参加』」

  • 日本維新の会は、衆院選政権公約「骨太2013~2016 日本を賢く強くする」を発表した。公約の柱は、以下の通り。①経済・財政、②社会保障、③国家システム、④エネルギー供給体制、⑤外交安全保障―。
  • TPPについては、「交渉参加、ただし国益に反する場合は反対」と明記した。日銀法改正の目的については、「政府と日銀の役割分担・責任の所在を再構築」とした。消費税は、地方税化を念頭に「地方共有税」の創設を掲げ、税率11%までの引き上げを盛り込んだ。
  • エネルギー政策では、「先進国をリードする脱原発依存体制」を構築し、安全基準などのルールの厳格化に取り組むとした。その上で、「既設の原子炉による原子力発電は2030年代までにフェードアウト(次第に縮小)することになる」と明記した。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「中間貯蔵、調査受け入れ」

  • 佐藤雄平・福島県知事は、東京電力福島第1原発事故に伴う除染で出た土などを保管する中間貯蔵施設の候補地調査を受け入れると表明した。環境省が求めていた双葉郡内の候補地12ヵ所が対象となる。
  • 佐藤知事は、双葉郡の首長らと協議。▽建設受け入れではない、▽地元への丁寧な説明など、設置主体として国が責任を果たす、▽調査の状況を適宜報告する―の3点を長浜博行・環境省に申し入れた。その上で、調査受け入れを決定した。
  • 佐藤知事は、「調査してみないと安全性については対応できない。受け入れの大きな理由だ」と説明。「私の責任で判断した。苦渋の選択だ」と語った。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「衆院選、12党の争いに」

  • 嘉田由紀子・滋賀県知事が結成した「日本未来の党」は、前衆院議員61人、参院議員12人の計73人となる見通しだ。最大勢力の「国民の生活が第一」の小沢一郎代表が影響力を持つことになりそうだ。
  • 「国民の生活が第一」と「減税日本・反TPP・脱原発を実現する党」は解党するため、衆院選に臨む政党は、12となった。「日本未来の党」の現有勢力は、民主党、自民党に次ぐ3番目。
  • 日本未来の党は、民主、自民、日本維新の会を除く各党に連携を呼びかけている。「脱原発」勢力の結集を図るとともに、第3極内で維新の会を孤立させる狙いもあるとみられる。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「投票先、自民23%、維新15%」

  • 日経新聞とテレビ東京は、26~28日に世論調査を実施した。嘉田由紀子・滋賀県知事が代表を務める「日本未来の党」の結成前の調査。
  • 衆院選で投票したい政党は、以下の通り。▽自民党23%、▽日本維新の会15%、▽民主党13%、▽公明党4%、▽みんなの党4%、▽国民の生活が第一3%、▽共産党2%、▽減税日本・反TPP・脱原発を実現する党1%、▽みどりの党1%―。「日本未来の党」に合流する「生活」「脱原発」「みどり」の単純合計は、5%。
  • 衆院選比例代表11ブロックを8つの地域にまとめた分類では、自民党がすべてトップとなった。日本維新の会が2位は、「北関東」「南関東」「近畿」「中国・四国」「九州」の5地域。民主党が2位は、「北海道・東北」「東京」「北陸信越・東海」の3地域。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「母親ら『国動かしたい』」

  • 東日本大震災が起きるまでは、母親たちは表舞台に出てこなかった。今、放射能から子どもたちを守る活動を通して、政治とかかわるようになった。都知事選と衆院選は、新しい仲間とつながり、社会を変える好機ととらえている。
  • 「子どもたちを放射能から守る全国ネットワーク」の伊藤恵美子さんは、8歳から21歳まで4人の子どもの母親。参院議員会館で開かれた「原発事故子ども・被災者支援法」の集会に参加した。「せっかくのいい法律が、選挙で国会議員が落ち着かない間に、官僚に骨抜きにされたら大変だから」。
  • 参院復興特別委員会で法案審議を傍聴し、初めて政治の熱気を体感し、「立法府」の意味をかみしめた。活動の中で連携できる仲間を見つけることの大切さを知った。選挙でも、同志になってくれる候補者を探し、その情報を広めることで仲間を増やしたいと思っている。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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