2012.11.21 wed

新聞1面トップ 2012年11月21日【解説】政治にもっと「女子力」を

新聞1面トップ 2012年11月21日【解説】政治にもっと「女子力」を


【リグミの解説】

「チャンバラごっこ」と「おままごと」
男の子は「チャンバラごっこ」、女の子は「おままごと」。昭和20年代から30年代頃の景色には、そんな子供たちの遊び方の典型
がありました。平成20年代の子たちは、どんな遊び方をしているのでしょうか。

時代が変わっても、性別が持つエネルギーの違
いが、好みや行動に反映されることに、変わりはないと思います。男の子は、どちらかというと、外側に直線的に強く発するエネルギーがあり、女の子は丸く内側に包み込むエネルギーとなる傾向があります。

本日の新聞1面トップ記事は、読売新聞と朝日新聞が「自民党の衆院選向けの公約案」です。毎日新聞は「自民党の安倍総裁の発言に対する日銀の白川総裁の反論」、東京新聞が「対立あおる政治脱却」を訴える記事です。いずれも今度の衆院選で与党復帰が予想される自民党の動静を伝えるものです。そのキーワードは、「右傾化」。

右傾化する自民党
長期政権時代の自民党は、「右」(タカ派、保守)から「左」(ハト派、リベラル)まで抱え込み、そのバランスをはかりなが
ら、全体としては「中道保守」の政党として政権を保持してきたと思います。政権を民主党に奪われ、下野したこの3年間で、自民党は、「国を統べる」責務から解放されたことで、自党をバランスさせていた「タガ」もはずれたように見えます。

総裁候補の中でも最も「右寄り」と言われた安倍氏が総裁に選ばれたことも影響しているようです。衆院選向け公約の中で、「右傾化」を特徴づける政策がいくつもあります。「教科書検定基準を抜本的に改善、近隣諸国条項も見直す」「集団的自衛権の行使可能に」、「国家安全保障会議の創設」「国防軍の保持を明記」「憲法改正の発議要件を衆参それぞれの過半数に緩和」―。

経済の衰退と右傾化
右傾化する大きな理由のひとつに、日本が坂道のピークを越えて、下り坂を降りていることがあると思います。日本は戦後、政
治・外交面で日米安保条約に守られ、国力を経済活動に集中できた時代が長く続きました。経済が右肩上がりで伸びていた時代は、経済力という「強さの源泉」がありました。

今、日本は衰退していく国と捉えられています。中国や韓国が、今までよりも
はるかに強い調子で日本を攻撃するのも、経済力の相対関係が逆転しつつあることが背景にあると言われます。

経済雑誌の日経ビジネスは、かつては政治ネタはまず特集しませんでした。それが2012年11月12日号の特集記事は、『ニッポンの国境』です。この特集の結語となるページには、「『強い日本』がすべての解」と書かれています。経済が弱くなったとき、「政治、外交で強くならなければ」と経済誌までが主張する時代になりました。

男女別セグメンテーション
毎日新聞の11月19日の朝刊に掲載された世論調査は、男女別のセグメントデータが開示されています。民主党の支持率は11%で、
男女ともに同じ数字です。ところが自民党は、平均は17%ですが、男性25%、女性10%と、男性の支持率が突出しています。右傾化する自民党を支持しているのは、強さを求める男性たち、という構図が見えてきます。

チャンバラごっこ」は、勝ち負けを競う遊びです。その奥には、破壊するエネルギーがあります。政治や外交は、「チャンバラごっこ」を繰り返します。「Win-Lose」のゲームを本能的にしようとします。男の子の危険な遊びという面は否定できません

「おままごと」は、守り育てる遊びです。その奥には、創造するエネルギーがあります。経済は、「おままごと」の要素がた
くさんあります。経済が発展するためには、企業同士は競争しますが、全体のパイが伸びなければ、国全体は豊かになりません

男の子」はもっと「女の子」と一緒に遊ぼう
女の子のエネルギーは、「おままごと」だけでなく、ファッションに、ライフスタイルに、料理やアート、さらに自然に親しむ
活動へと広がります。芸能のことで、女性に勝てる男性はどれだけいるでしょうか。「ソフトパワー」というりっぱな国富を、日本は戦後営々と育てきました。そのプロセスは、男性のエネルギーを経済活動に集中させたことで達成された面が大きいでしょう。

しかし、日本がこれだけ豊かになった本当の理由は、女性たちが豊かになった国の果実をどうエンジョイし、次の豊かさにつなげていくか身をもって示してきたからです。ファッションビジネスに携わってきた人なら、世界に冠たる今日の日本のファッションが、どうして生まれたのか、体感できると思います。女の子のエネルギーを家庭に縛り付けておいたつもりの男の子たちが、へたっていく間に、女の子たちは、どんどん「女子力」を発揮してきたのです。

右」に極端に傾いたり、「左」に暴走したりする男の子のエネルギーに対して、女の子のエネルギーは、いつも真ん中のあたりでバランスさせながら、包み込み、育てます。国家が多くの難題に直面する今、勇ましい男の子の「チャンバラごっこ」の政治メッセージに対して、女の子の感性や直感を「ままごと」と一笑に付さない懐の深い政治環境が、本当に大事になっています。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「集団的自衛権、行使可能に」

  • 自民党の衆院選公約の全文が明らかになった。「日本を、取り戻す。」と題した政権公約で、①東日本大震災からの復興、②経済の再生、③教育の再生、④外交の再生、⑤暮らしの再生―をうたう。
  • 自民党公約の骨子は、以下の通り。▽「日本経済再生本部」を設置、▽2%の物価目標を設定。日銀法改正を含め、政府・日銀の連携を強化し、大胆な金融緩和を実施、▽「6・3・3・4制」の学制見直しと大学9月入学の促進、▽集団的自衛権の行使を可能とする、▽全原発の再稼働について、順次、3年以内の結論を目指す―。
  • 防災対策は、東日本大震災からの復興と首都直下型地震などに備えた防災対策に力を入れる。事前防災と減災のための「10年間の集中計画」を推進するとしている。外交・安全保障に関して、「国家安全保障会議」の創設を盛り込む。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「自民、選挙公約きょう発表」

  • 自民党が衆院選に向けた公約案をまとめた。安倍晋三総裁の特徴である保守色のが強い内容となっている。
  • 自民党選挙公約案の骨子は、以下の通り。▽「国土強靭化」を推進。防災・減災対策を10年間強力に推進、▽「物価上昇目標2%」を明示。日銀法改正を含め、大胆な金融緩和、▽教育委員会制度を抜本的に改革。教科書検定基準を抜本的に改善、近隣諸国条項も見直す、▽国家安全保障会議の設置。集団的自衛権の行使を可能に、▽「聖域なき関税撤廃」を前提にする限りTPP交渉参加反対、▽消費税収は社会保障以外に使わない、▽原発再稼働の可否は全原発で3年以内の結論を目指す、▽衆院定数削減は次期通常国会終了までに結論。公務員総人件費を国・地方合わせて2兆円削減、▽国防軍の保持を明記、▽憲法改正の発議要件を衆参それぞれの過半数に緩和―。
  • 経済政策では「デフレ・円高からの脱却を最優先に名目3%の経済成長を達成する」と明記し、内閣に「日本経済再生本部」を設置するとしている。TPPや原発政策では、賛否が割れる党内事情に配慮して踏み込まなかった。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「日銀総裁、安倍氏に反論」

  • 日銀の白川総裁は20日、金融政策が衆院選の争点として浮上していることについて「(積極的な緩和は)既にやっている。日銀の強力な金融緩和策を反映して金融環境は緩和した状態にある」と述べた。積極緩和を求める自民党の安倍総裁らの動きに真っ向から反論した。
  • 白川総裁は、安倍氏が求める3%の物価上昇についても、一般論と断った上で、「現実的でない」と一蹴した。1980年代後半のバブル期でも消費者物価の上昇率が3%に達したことはないことを踏まえ、「今まで経験のない物価上昇率を掲げ、政策を総動員すると長期金利が上昇し、財政再建にも実体経済にも悪影響が出る」と指摘した。
  • 各党が日銀に関連する政策を競うように訴える現状については、「中央銀行の独立性は、金融の長い歴史から得られた国際的に確立されたもの」と牽制。「自らの責任と判断で中央銀行の使命を果たしたい」と述べた。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「NTT光回線値下げ」

  • NTT東日本は、光回線サービスの料金を大幅に下げる。最も広く使われている通信速度が最大毎秒200メガビットの「フレッツ光」が対象となる。
  • NTT東西の光回線サービス料金(月額)は、以下の通りとなる。▽NTT東日本(12月から4月までの新規顧客向け):「戸建て」5460円⇒3600円代、「マンション」3000~4000円代⇒2800円程度、▽NTT西日本(段階的に下げ、既存顧客も含む):「戸建て」5670円⇒3700円代、「マンション」3000~4000円代⇒2500~3400円程度―。
  • スマートフォンを通じてパソコンなどをインターネット接続する利用者が増えているため、光回線の契約数が伸び悩んでいる。スマホと割安に併用できることで、家庭のネット利用環境の向上と、通信料の軽減につなげられる。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「対立あおる政治脱却を ~私の手で(下)」

  • 10月初め、護憲団体事務局次長の高田さんに、台湾の市民団体から突然の連絡あった。尖閣諸島問題で中国や台湾と日本の関係が悪化している最中、暴力的行為ではなく、対話での解決を目指すシンポジウムを台湾で開きたいとのメッセージだった。
  • きっかけは、作家の大江健三郎さんらと共に「領土問題の悪循環を止めよう」との声明を発表し、中国語や韓国語訳をHPに掲載したことだった。政治が動こうとしない中、各国の市民の動きが実を結ぶ。その市民の多くが、日本の右傾化を懸念している。
  • 自民党で最もタカ派の安倍氏が総裁に就任。民主党も保守派の代表格の野田氏が代表選に勝利。さらに日本維新の会の橋下氏は、自由競争重視の改憲論者。そこに現行憲法破棄を持論とする石原氏が新代表として加わった。2大政党と第3極のトップがそろってタカ派となったことで、政界の重心は自ずと右へ移る。衆院選では、ムードに流されない選択が求められる。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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