2012.11.18 sun

新聞1面トップ 2012年11月18日【解説】民を愛する心

新聞1面トップ 2012年11月18日【解説】民を愛する心


【リグミの解説】

3つの脳
人間には、3つの「軸」があると言われます。「知・情・意」とも呼ばれもので、知性・感情・本能にあたるものです。脳神経生
理学者のポール・マクリーンは、『3つの脳説』を提唱しました。生物進化の歴史が人間の脳を形成しているとする学説です。

人間の脳を特徴づけるのは、発達した「大脳新皮質」で、知性を司ります。そのすぐ下には、「大脳辺縁系」と呼ばれる哺乳類の脳があり、私たちの感情の拠り所となっています。さらにその下に、「R複合体」と呼ばれる爬虫類の脳があり、本能的な行動を指令している脳です。1978年にピュリツァー賞を受賞した天文学者カール・セーガンの『エデンの恐竜』で紹介され、有名になりました。

政治家の「軸」はどこにあるのか、選挙を前に、「3つの脳」のどれを優先しているのか、示唆的な記事が今朝の新聞の1面トップにに掲載されています。朝日新聞「石原代表、橋下代行」、毎日新聞 「維新に太陽が合流」、東京新聞「しぼむ政策、顔優先」と、3紙のタイトルが示すように、野田首相の突然の衆院解散で、慌てて「第3極」づくりを進める石原慎太郎氏と橋下徹氏の動きです。

「知性の脳」より「本能の脳」
政局を追っていると、政党と企業組織とはまったく別物だということがわかります。会社法に基づく法人格を創り、株主総会の
決議で専任された取締役の契約観念に当たるものが、政治家にはありません。独立した政治家が、ボランタリーチェーンのように集まるのが政党のようです。それゆえ、石原慎太郎氏が「たちあがれ日本」の平沼赳夫氏と合流して「太陽の党」をたちあがたかと思ったら、あっという間に「日本維新の会」に合流しました。

平沼氏は、小泉政権時代に竹中平蔵氏が進めた郵政民営化に反対して自民党を離党しました。その竹中氏は、維新の会のブレインです。東京新聞は、「天敵同士」が合流する呉越同舟の連携を批判的に報道しています。政策の基本には、政治家の「軸」があります。政策とは本来、「知性の脳」が具現化する一貫した「主義」の産物のはず。その「主義」が正反対ともいえるふたりが合流して、何ができるのでしょうか。

石原氏と橋本氏の妥協ぶりは、もっと鮮明です。石原氏は、消費税の地方税化を受け入れ、橋下氏は「脱原発」の2文字を消去しました。第3極の動きを牽制した野田首相は、「小異を捨てて大同につくという言葉を安易に使ってしまうが、小異ではない、大事なものを捨ててくっつく野合になる」と、維新と太陽の合併を批判しています(毎日新聞)。これは、至極まっとうな批判だと思います。

政治屋と政治家
きわめて保守的な橋下氏は、リベラル派やエコロジストとは異なる視点で「脱原発」の本質をつかんだ政治家でした。そこに、
既成の「保守」とは異なる清新さを見て取った人も多いと思います。日本維新の会の「魂」は、どこに飛んで行ってしまったのでしょうか。

「腹を割って話す」とか「腹の探り合い」という表現があります。ここでいう「腹」とは「本音」のことです。選挙が眼前に迫って、政治家達の「本音」があぶりだされました。「政治屋は次の選挙を、政治家は次の世代を考える」という諺があります。

「脱原発」と「原発推進」のどちらが正しいかは問いません。問題は、エネルギー政策の在り方が、次世代に多大な影響と負担を与えるということです。何十年もかけて、次世代の国の在り方を提示し、あるべき姿へと導けるのは、政治家しかいません。次の選挙に翻弄される政治屋ばかりでは、日本は不幸です。

政治家の愛
「腹」が象徴するのは、「本能の脳」です。政治家(政治屋)の本音は、選挙に落ちる恐怖との戦いです。「本能の脳」は、生
命の危機を恐れる感覚と、この世を物質的に支配しようとする感覚の両方をもっています。この圧倒的な感覚の前では、「知性の脳」が紡ぐ政策や主義は、泡沫のような「建前」に過ぎないのでしょうか。

「本能の脳=爬虫類の脳」は、大きくなることで生命の危機を回避し、この世を支配しようとします。巨大化した恐竜のように、とにかく大きくなろう。政策の不一致は後回しでいい。小異も大異も関係ない。でも、巨大な身体に小さな脳をもった恐竜は、進化の袋小路に入り、地球環境の激変に遭遇し、絶滅してしまいました。

政党が掲げる政策や公約、マニフェストの類は、何のためにあるのでしょうか。民を救うためなのか。それとも民を騙すためなのか。政治家の「建前」(「知性の脳」が紡ぐ政策)と、「本音」(「本能の脳」が突き動かす実際行動)を結合するものがあります。それが、「感情の脳」です。政治家の胸の中心にあるハート、魂です。

建前と本音が一致するところに、人間の本当の
心があります。マクリーンは、「3つの脳学説」を「三位一体の脳」と呼びました。政治家の三位一体の脳の中心に、「民を愛する心」が鎮座していることを願います。

(文責:梅本龍夫)


讀賣新聞

【記事要約】 「投票先、自民26%民主13%」

  • 今月16日、17日に実施した読売新聞の世論調査によると、衆院比例選の投票先は、筆頭が自民党26%(前回は25%)、次が民主党13%(前回は10%)だった。日本維新の会は、3番の8%(前回は12%)に下がった。太陽の党も5%で、前回の9%(石原新党との回答)から後退した。第3極は失速気味だ。維新の会と太陽の党を単純合算すると、民主党に並ぶ13%になる。
  • 政党支持率は、自民22%(前回24%)、民主13%(前回11%)。第3極の連携に「期待する」は48%で、前回の52%から下がった。「期待しない」は46%。政権後の枠組みは、「自民、公明、維新」16%、「民主、自民、公明」15%、「自民、公明」13%、「民主中心」12%と大差がない。有権者が政権の枠組み選びに迷う現状が見える。
  • 野田内閣の支持率は24%(前回19%)、不支持率65%(前回68%)。野田首相がこの時期に衆院解散を決めたことを「評価する」は52%で、「評価しない」37%を上回った。「野田首相と安倍自民党総裁のどちらが衆院選後の首相にふさわしいと思うか」では、「安倍総裁」37%(前回39%)、「野田首相」31%(前回25%)だった。解散に動いた野田首相に対する一定の評価が見られる。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「石原代表、橋下代行」

  • 日本維新の会と太陽の党は17日、基本政策で合意し、合併することを決めた。太陽が解党し、維新に合流する。党名は日本維新の会とし、新代表は石原慎太郎氏、代表代行に橋下徹氏が就く。
  • 石原・橋下両氏の合意文書の骨子は、以下の通り。▽中央集権体制に打破(地方交付税廃止、消費税の地方税化)、▽地方交付税の廃止分などで社会保障財源立て直し、▽TPP交渉参加、国益に沿わなければ反対、▽新エネルギー需給体制の構築(原発安全基準などルール構築、電力市場自由化)、▽尖閣は中国に国際司法裁判所への提訴を促す―。
  • 石原氏は15日、減税日本との合流を発表したが、橋下氏が減税の合流に難色を示したため、維新との合併を優先。減税との合流は白紙に戻った。また、維新との共通公約づくりで合意したみんなの党とは合流せず、同一選挙区内の候補者調整をする。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「維新に太陽が合流」

  • 日本維新の会は17日、太陽の党が解党し維新の合流したと発表した。新代表に太陽の石原慎太郎共同代表が就き、維新代表の橋下氏は代表代行となる。
  • 太陽と維新が合意した基本政策骨子は、以下の通り。▽地方交付税を廃止し消費税を地方税化(消費税は11%を目安とし、うち6%を地方間の財源調整に使用)、▽社会保障財源は交付税廃止分(保険料適正化と給付水準見直し、資産課税などで立て直し)、▽TPP交渉に臨むが国益に沿わなければ反対、▽新しいエネルギー需給体制の構築(原発は安全基準などのルールを構築、電力市場を自由化)、▽企業・団体献金を廃止(経過措置として上限を設定)―。
  • 石原氏は、「大同団結して最初の一戦で戦おう。あとは橋下さんにバトンタッチする」と述べた。橋下氏は、今回の衆院選出馬をあらためて否定した。維新は、1次公認候補者80人超の擁立を目指していたが、大幅に下回る47人に留まった。最終目標とする衆院過半数の241人以上は、難しいとみられる。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「ミャンマー支援、500億円」

  • 政府は、ミャンマーに対して500億円規模の円借款を2012年度中に実施する。円借款再開は、27ぶりとなる。経済特区のインフラ整備や地方開発を支援する。日ミャンマー首脳会談で野田首相がいち早く表明した。日本企業を後押しし、ミャンマーへの影響力を強める中国を牽制する。
  • 円借款の対象事業と最近の日本企業のミャンマーにおける主な動きは、以下の通り。▽「14地方自治体の生活基盤インフラの整備」(イオンが衣料品生産委託、全日空が定期便再開、清水建設が再進出、ローソンなどが進出検討)、▽「火力発電所の改修」「ティラワ経済特区の周辺インフラの整備」(三菱商事・住友商事・丸紅などがティラワ経済特区の開発で事業化調査)
  • 500億円の円借款は、2011年度供与額で見ると、2000億円を超えるベトナム、インドに次ぐもので、数百億円のフィリピン、バングラデシュ、スリランカと並ぶ。他の主要国に先駆けて、民主化に取り組むミャンマーを支援する。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「しぼむ政策、顔優先」

  • 日本維新の会と太陽の党は17日、太陽の党が解党し維新の会に合流すると発表した。新代表に太陽の石原慎太郎共同代表が就き、維新代表の橋下氏は代表代行となる。
  • 両党は合流に先立ち、8項目の政策で合意した。石原氏が否定的だった消費税の地方税化が盛り込まれ、橋下氏がこだわっていた「脱原発」が消えた。橋下氏は、「一番見解の隔たりがある事柄について合意ができた」と胸を張るが、選挙が近づき、慌てて持論を捨てて歩み寄っただけの印象だ。
  • 維新のブレーンは、小泉改革を主導した竹中平蔵元総務相。一方、太陽の党の共同代表だった平沼赳夫氏は、郵政民営化に反対して自民党を離党した。天敵ともいえるふたりが合流する「呉越同舟」ぶりに、急ごしらえで連携した新党同士の亀裂の芽が見える。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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