2012.11.16 fri

新聞1面トップ 2012年11月16日【解説】「大きな物語」を競い合う政治

新聞1面トップ 2012年11月16日【解説】「大きな物語」を競い合う政治


【リグミの解説】

国政政党の数
日本は、集団主義の国とも言われてきましたが、その実態は、小さな集団をたくさん作ることに特徴があるのでしょうか。本日
の新聞1面トップは、読売、朝日、毎日の3紙が「衆院きょう解散」です。東京新聞は、同じテーマで、国政政党が15に上ることを指摘しています。

小選挙区比例代表並立制による衆院選挙が始まった1996年から16年経って、政党数が最も多くなっているのは、制度の趣旨を考えると不思議な感じがします。大政党に有利で、少数意見が反映されにくい選挙制度をあえて採用した理由は、日本に2大政党制を定着させるためでした。

2009年の衆院選で、長期政権の自民党から民主党に政権交代したことは、日本の民主主義にとって画期的なことでした。国民の意志がはじめて明瞭な形で示されたからです。それは、「民主党が良い」ではなく、「自民党がダメ」という判断でした。まずは2大政党の勢力を作り、それがどう機能するかやってみよう、という意志表明であったとも言えます。

民主党の最大の問題点
この3年間の民主党政権に対する評価には厳しいものがあります。しかしそれをもって、2大政党制は日本では機能しない、と結
論づけられるものではありません。マニフェスト(政権公約)に現実性がなかったこと、あるいはマニフェストにない消費増税を強行したこと、そして大震災や原発事故の対応に問題があっとこと、さらに日米、日韓、日中という基軸となる外交関係で次々と懸案を浮上させてしまったこと、等々。民主党政権の問題点は、実にたくさんありました。

しかし、民主党の最大の問題は、そうした個別の事象の奥にあると思います。それは、「選挙に勝つ」ことだけを共通目標とした「寄り合い所帯」だったということです。かつての自民党の田中派から旧社会党系まで、いわゆる「右」から「左」まで、思想も主義も異なる政治家が、政策の一致を見ないまま民主党という政党を形成していきました。そんな政党は、「選挙で負けそうだ」となると、離党者が相次ぎ、分裂していきます。

野合を繰り返さない
日本の民主主義が今一番学習しなければいけないことは、「野合」では日本を変えられないということです。それにもかかわら
ず、「第3極」と称する動きがあり、2大政党制を早くも崩そうとしています。ダメだから変える、では何も変わりません。

その
方法論を選択した理由、理念、目的を再確認し、徹底検証し、再挑戦するのが、大きな未来を構築する戦略的なアプローチの常道です。それをせず、政策の基本で一致しそうもない新党同士が、「選挙で勝つ」という一点のみで連携して「第3極」を形成しても、日本の政治の漂流は止まるどころか、ひどくなるだけだと懸念します。

今、政治家と政党に必要なものは、「主義」です。個々の「政策」に違いがあっても、「主義」が一致すれば、政策のすりあわせはしていけます。では、「主義」は何によって具体化するのか。それは「物語」です。日本をどんな国にしたいか、という「物語」。それが「大きな物語」と呼べる包括的なものであれば、個々の政策は自ずとその中にポジションを見つけていくことができます。

2つの「大きな物語」
政治・社会・経済の「大きな物語」を語れる政治家が、大きな政党を率いることができれば、2大政党制は機能するようになりま
す。なぜなら、国民はどちらの「物語」の登場人物になりたいか、具体的にイメージし、選択できるからです。それは国の将来に希望を抱き、自ら当事者として、国づくりにコミットしようと意欲を持てる「物語」であることが大切です。

そういう意味で、国論を二分してきた原発を、最大の争点にし、「主義」を明確にし、そこから日本をどういう国にしていくか、民主党と自民党は「大きな物語」を創ることを提唱したいと思います。それを政策的に具体化したものがマニフェストとなります。

日本の政治が、小集団の集積になるのは、一貫した「主義」をもった「大きな物語」を創れないからです。15の「小さな物語」ではなく、骨太な構想を実現する2つの「大きな物語」が魅力を競い合うのが2大政党制です。国民を納得さ
せるストーリーテリングのできる政治家と政党は、登場するでしょうか。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「衆院きょう解散」

  • 野田首相は16日、衆院を解散する。政府は解散後に臨時閣議を開き、衆院選日程「12月4日公示―12月16日投開票」を決定する。
  • 衆院は15日の本会議で、赤字国債の発行を2015年まで認める特例公債法案の修正案と、衆院の「1票の格差」是正のため小選挙区を「0増5減」する選挙制度改革法案を、民主、自民、公明など賛成多数で可決した。法案は参院に送付、16日に参院本会議で可決、成立する。
  • 2009年8月以来、3年4ヵ月ぶりとなる衆院選に向け、各党は事実上の選挙戦に入る。2大政党の民主、自民に対抗する第3極の新党の設立が相次ぐ中、政権の枠組みの在り方が最大のポイントとなる。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「衆院きょう解散」

  • 野田首相は16日、衆院を解散する。これに先立ち参院本会議で、特例公債法案、衆議院選挙制度改革法案、議員歳費削減法案が成立する見通し。
  • 野田首相が示した解散判断の条件の状況は、以下の通り。▽「特例公債法案」=民自公3党は、2015年まで赤字国債の自動発行で修正合意、▽「衆院選挙制度改革」=民自公3党は、「0増5減」先行で合意、比例定数削減は来年の通常国会に持ち越し、▽「社会保障国民会議」=民自公3党は、月内の立ち上げで合意、3党で人選を進める、▽「国会議員歳費2割カット」=民主党が法案提出し衆院通過、16日に成立―。
  • 首相がかかげた解散条件は、すべて整うことになり、衆院総選挙は「12月4日公示―12月16日投開票」で実施される。民主党の現有勢力は244人、離党者は9人となる。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「衆院きょう解散」

  • 衆院は16日の本会議で解散される。15日の衆院本会議では、特例公債法案の修正案、衆議院選挙制度改革法案などが可決された。野田首相が条件表明していた解散への環境は、16日に整う。
  • 首相は、民主党の最大の支持母体である連合との政策協定調印式に出席し、「解散前夜に連合と改めて協定を取り結ぶことができ、勇気百倍だ」と語った。しかし民主党内では解散への反発が広がり、衆院議員6人が離党を表明。与党民主党は、事実上過半数を割り込んだ。
  • 輿石幹事長は、「責任は十分感じている。責任をきちっと取るためにも選挙は陣頭指揮する」と語った。民主党は、選挙で退潮が予想される。首相は、背水の陣で総選挙に臨むことになる。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「中国、改革足踏み懸念」

  • 中国共産党は15日、新体制を始動させた。習近平国家副主席が、総書記と党軍事委員会主席(軍の事実上のトップ)を兼務する。激しい権力闘争の末、最高指導部となる政治局常務委員は、江沢民・前国家主席に近いベテランが大勢を占めた。
  • 新政治局常務委員のメンバーは、以下の通り。①習近平(59)=太子党、②李克強(57)=共青団、③張徳江(66)=江沢民派、④兪正声(67)=太子党、⑤劉雲山(67)=江派に近い、⑥王岐山(64)=太子党、⑦張高麗(66)=江沢民派―。
  • 胡錦濤氏の直系は1人だけ。民営企業の育成などに前向きな若手の登用はなかった。経済構造改革は、足踏みする恐れがある。また対日政策では、強硬姿勢を続ける公算が高い。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「異例の多党選挙」

  • 衆院は、16日に解散となる。12月16日に向けた選挙戦が始まるが、定数480の議席を争う国政政党は、15日現在15に上る(公職選挙法などで定められた要件を満たす政党の数)。
  • 衆参両院の政党別人数は、以下の通り。①民主党=衆院234人(参院87人)、②自民党=118(82)、③国民の生活が第一=45(12)、④公明党=21(19)、⑤共産党=9(6)、⑥みんなの党=7(8)、⑦日本維新の会=6(4)、⑧社民党=5(4)、⑨減税日本=5(0)、⑩国民新党=3(3)、⑪新党大地・真民主=3(2)、⑫みどりの風=2(4)、⑬太陽の党=2(3)、⑭新党日本=1(0)、⑮新党改革=0(2)、⑯無所属=18(6)―。
  • 2大政党制を目指し、小選挙区比例代表並立制による衆院選挙が始まった1996年以来、最も政党数が乱立している。大政党に有利で、少数意見が反映されにくい選挙制度であるにもかかわらず、それに逆行する状況が進んでいる。これは、民主、自民両党が、2大政党の機能を果たしていないことを物語っている。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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