2012.11.09 fri

新聞1面トップ 2012年11月9日【解説】現代史のファーストドラフト

新聞1面トップ 2012年11月9日【解説】現代史のファーストドラフト


【リグミの解説】

囲碁の対戦と政局
政治は、囲碁や将棋のようなものか。それとも、野球やサッカーのような団体競技に似ているのか。いずれにしても、勝ち負
けを競うゲームやスポーツのように政治を動かすことを「政局」と呼ぶのでしょう。本日の新聞1面トップ記事は、読売、朝日、毎日、日経がそろって、「特例公債法案が成立の見込み」という速報です。

衆院解散時期の攻防について、各紙ニュアンスや情報に多少の違いがあります。

読売は、「野田首相がTPP参加表明で自民党との差別化を図る」という観測を出しています。
朝日は、「1票の格差是正に『0増5減』を先行させるか」についての民自のポジションの違いに光を当てています。
毎日は、「赤字国債発行が遅れていることで地方に負担をかけている」ことに対する首相の対応
に触れています。
日経は、「首相が年内解散を探っているのに対し、民主党内には慎重論が多い」と報じています。


この中で、情報的にちょっと面白いと思ったのは、読売の「TPPの指摘」でした。でもそれは、囲碁の一手の意外性としてという程度のこと。もし囲碁・将棋の対局のように論じるのであれば、「定石型」なのか「戦略型」なのか、あるいは「喧嘩型」や「腕力型」なのか、はたまた「局地戦対応型」や「変幻自在型」なのか、といった人物像やパーソナリティー論を語ってもらった方が面白いと思います。

政治家の人物像
欧米の「クオリティー・ペーパー(高級紙)」は、記者が独自の取材源を持ち、テーマを設定し、それを長い「物語」として報
道すると言われます。昨日のオバマ大統領再選報道であれば、ロムニー候補の敗戦にスポットライトを当て、ロムニー氏の人物像を浮かび上がらせます。

一例は、「ウォールストリートジャーナル紙」で、ロムニー氏は選挙当日に1つのスピーチしか書いていなかったと報じています。それは「1118字から成る勝利宣言の素案」でした。その夜、ロムニー氏は、たった646字の「譲歩スピーチ(敗北宣言)」を公表しました。そして、選挙を支えたスタッフを労い、「I am not going away(私は立ち去らないよ)」と伝えました(参照:Wall Street Journal)。

茂木健一郎さんは、昨日の「連続ツイート」で、米大統領候補は、過酷な選挙プロセスで政策のみならず、その資質と人格が、白日の下に晒される価値に触れています。「地球上で最も影響力のある地位に就く人物が、戦争でも、根回しでも、権力争いでもなく、『投票』だという点が肝要なのだ」。

現代史のファーストドラフト
私たちは、総理大臣と政権政党に、本当のところ、何を求めているのでしょうか。大手マスコミの代表である新聞を読んでいる
限り、囲碁の対局としての「政局」の「読み」は見えても、囲碁を打つ人物の「型」や「性格」はまったく見えてきません。「政局」ではなく、「政策」を、というのは正しい指摘だと思います。ただ、「政局」の積み重ねで「政策」が実現するのが現実です。一番大事なのは、政治家の資質、人物像、理念、価値観、そして行動パターンを見極めることです。

私たちは、囲碁盤ばかり見させられています。囲碁打ちの素顔、心の内側までえぐる「物語」を共有し、心から応援し、名勝負を期待するのが、「成熟民主主義」の醍醐味です。そういう「物語型ジャーナリズム」の中で、核心を突いた本物が出現すれば、政局の渦中にある政治家の人物像から、大きな「時代」の様相が立ち上がってくると思います。それは、「現代史のファーストドラフト」と呼ぶにふさわしいものとなるでしょう。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「首相、年内解散を検討」

  • 野田首相が、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉参加表明をし、その直後に衆院解散に踏み切ることを検討していることが判明した。11月下旬から12月中旬に解散し、投開票日は12月中か年明けの1月が有力と見られる。
  • 首相は、「近いうち」の解散を判断する前提として、①特例公債法案の成立、②衆院小選挙区の「1票の格差」是正を含む衆院選挙制度改革法案の成立、③社会保障制度改革国民会議の設置―を掲げていた。しかし、「近いうち」を表明してから3ヵ月が過ぎ、これ以上解散を先送りすると世論の反発が高まると懸念しており、特例公債法案の成立を前提に、TPP参加表明を掲げて解散する道を探っている。
  • 首相は、TPP交渉参加表明をすれば、TPPに慎重な自民党との「違い」を際立たせ、選挙で有利になると判断している。オバマ大統領が再選されたことで、TPPの交渉参加国による協議が加速するのは確実だ。ただ、TPPに反対している民主党議員が集団離脱する可能性もあり、政局は一気に緊迫する可能性がある。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「公債法案、成立見通し」

  • 民主、自民、公明の3党は8日、特例公債法案を15日の衆院本会議で通過させる日程を合意した。与党の賛成多数で可決し、参院も可決・成立する見通しだ。赤字国債の発行に必要な法案が成立する見通しが立ったことで、衆院解散の環境整備が進む。
  • ただし、選挙制度改革法案では、自民、公明両党が「0増5減」の先行処理を求めているが、民主党内からは異論が相次いでおり、選挙制度改革法案の調整は難航しそうだ。民主党政治改革推進本部は、「0増5減」と定数40削減の同時処理方針を確認、対応を輿石幹事長に一任している。
  • 野田首相は、衆院解散を判断する前提として、①特例公債法案の成立、②衆院選挙制度改革法案の成立、③社会保障制度改革国民会議の設置―を掲げている。首相は8日の衆院本会議で、この3条件を満たした段階で「きちっと自分の判断をしていきたいと考えていることにいささかも変更はない」と改めて言明した。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「特例公債法案成立へ」

  • 民主、自民、公明の3党は8日、特例公債法案を15日の衆院本会議で通過させる日程を合意した。自民党の脇・参院国対委員長は民主党の池口・参院国対委員長に、参院審議でも成立を容認する考えを表明した。
  • 特例公債法案が成立していないため、政府が地方交付税の支給を遅らせた影響で、道府県は金融機関から予定外の借入れを強いられている。野田首相はこれに対して、「財政負担に支障が生じないよう、国が必要な配慮を行う」と説明した。
  • 首相は衆院解散時期について、①特例公債法案の成立、②衆院選挙制度改革法案の成立、③社会保障制度改革国民会議の設置―の3点が前提条件となることを改めて強調した。そのうえで、「(環境整備ができた)その時においてきちっと自分の判断をしていきたい」と話した。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「年内解散、緊張高まる」

  • 民主、自民、公明の3党は8日、今年度の予算執行に必要な赤字国債を発行するための特例公債法案を、15日の衆院本会議で通過させる日程を合意した。衆院解散の環境整備の3条件の1つが大きく前進した。
  • 野田首相は、衆院解散時期について、①特例公債法案の成立、②衆院選挙制度改革法案の成立、③社会保障制度改革国民会議の設置―の3点が前提条件となるとしてきた。条件が整えば、「その時にきちっと自分の判断をしていくことにいささかの変更もない」と言明もした。
  • 首相は、自公が求める年内解散も視野に入れるが、苦戦が予想される民主党内には慎重論が多い。衆院選はできるだけ先送りしたいのが、選挙基盤の弱い民主党議員の本音だ。首相が年内解散に動けば、「内閣総辞職を求める声」(民主党議員)が高まったり、「解散直前に離党する」とする議員も出てくる可能性がある。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「過激派対策費水増し」

  • 法務省公安調査庁でも、東日本大震災の復興予算の不適切使用問題が明らかになった。2011年度第3次補正予算に2800万円を計上し、過激派対策の車両を購入していた。
  • 公安調査庁が復興予算を使った事業内容は、以下の通り。▽事業名=被災地等における治安確保のための調査基盤強化、▽規模=2011年度第3次補正予算(復興予算)に2800万円、▽内容=調査活動用の乗用車14台を購入、▽配備先=東北1台、首都圏13台―。
  • 公安庁は、「被災地の治安維持」が目的とするが、14台のうち1台のみが東北地方に配備される(仙台市の東北公安調査局)。例年、調査用車両は一般会計で購入しており、復興予算の活用は水増しともいえる。公安庁は、「被災地で過激派が勢力拡大を図ろうとする動きを活発化していた。車両購入で調査能力の向上を図る必要があった」と釈明する。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



【本日の新聞1面トップ記事】アーカイブ