2012.11.07 wed

新聞1面トップ 2012年11月7日【解説】「政権公約」と「政権仮説」

新聞1面トップ 2012年11月7日【解説】「政権公約」と「政権仮説」


【リグミの解説】

「政権仮説」
マニフェストは「政権公約」と訳されますが、民主党のマニフェストは「政権仮説」とした方が実態に近いと思います。本日の
読売新聞の1面トップ記事は、民主党が2009年の衆院選で掲げたマニフェストの内容を棚卸し、「全面謝罪」するというものです

民主党政権の3年間について、」「マニフェスト違反」や「マニフェストに書いていないことをごり押しした」などの批判が渦
巻いています。政権を取ってからの民主党は、一所懸命マニフェストを実現しようとしたように見えますが、そもそもの見立てや見通しが甘かったのではないかと思います。実態に基づかない空理空論の部分が少なくなかったのでしょう。

そうは言っても、野党時代が長かった民主党は、入手できる情報やデータも限定されていたため、財源などマニフェストの基軸となる部分を「想定」で埋め合わせたのではないでしょうか。それは致し方のないことと言えます。問題は、「想定」を「想定」にとどめ置いて、壮大な「公約」を掲げたことです。

「想定」とは、「こんな感じではないか」と仮定する状態です。「財源
はあるはず」「事業仕訳をすれば埋蔵された無駄が浮上し、3兆円の経費削減が可能」といった「想定」にどれだけの裏付けがあったのでしょうか。

「謝罪」より「検証」を
細野政調会長らがまとめた「マニフェスト重要政策説明用資料」の全容は、まだわかりませんが、「謝罪」以上に大事なのは、
「検証」です。当初の「想定」と何がどう違ってしまったのか。そこのところを徹底して洗い出し、次につなげなければ、同じ過ちを繰り返します。あるいは、「あつものに懲りて、なますを吹く」の諺のように、数値を掲げたマニフェストはもうこりごりとなってしまいます。

ビジネスでは、年度事業計画を立てます。それは通常は、中長期の計画の中の1年間の具体的な活動目標であり、数年かけて向かって行きたい方向への「着実な一歩」と位置付けられます。その基本にはかならず数値目標があります。売り上げや利益を明示しない計画は、計画の名に値しません。

ビジネスは、しかし「想定外」との戦いです。計画とずれたら、原因を調べ、対策を立てます。そ
して可能な限り修正をかけます。この一連のプロセスを「計画(P)⇒実行(D)⇒検証(C)⇒修正(A)」のマネジメント・サイクルと呼びます。「P⇒D⇒C⇒A」がしっかりできている会社は、計画が当初想定からはずれても、着実に修正をかけ、結果を残します。

「想定」から「仮説」へ
言葉を代えれば、事業計画とは、「想定」(こんな感じかなという漠然とした感覚)を「仮説」(裏付けをもったロジック)に
組み立てたものです。民主党に欠けていたのは、まさに「仮説」をがっちり組み立てていく視点と取り組みだったのではないでしょうか。

「仮説」がしっかりしていれば、「P⇒D⇒C⇒A」のサイクルを回せます。そして仮説を修正してよりリアリティのあ
る計画に高めていけます。しかし、「仮説」がなく、単なる「想定」で行動していては、「検証」もおぼつきません。「できませんでした」と「謝罪」して終わりです。これでは学びがありません。「謝罪」するときは「原因」を特定し、その「責任」を具体的に取った上でしなければ、うまくいかなかったという「結果に対する責任」しか残りません。

これからのマニフェストはどうあるべきなんでしょうか。ひとつの提案として、与党と野党のマニフェストの位置づけを変えるというのがあります。与党は、政権を取っており、現実がわかっており、情報源にもアクセス可能です。与党は、次期政権をめざし、文字通り「政権公約」を掲げるべきです。一方、野党は「政権仮説」と明言し、その「仮説」がどういう情報・数値データとロジックに基づいているか、詳細に明らかにします。そして、政権を取った暁には、どのように「P⇒D⇒C⇒A」のサイクルを実行するかを国民に約束をします。

「サードビュー」の確立
同時に、政権と国会から独立した「マニフェスト検証第3者員会」のようなものを設け、年単位で政権を取った政党のマニフェス
トの実施状態を検証していけると良いのではないでしょうか。福島原発事故の国会事故調のように、そのプロセスはできるだけ公開するのが望ましいです。こうした監査と提言のできる客観的な組織が、政権に対して「サードビュー」(客観的な視点)を提供できると、国民も選挙のときにだけ正党を選択して終わりにならず、継続して国政に関わり続けることができます。

あと、各政党はしっかりした政策シンクタンクを持つべきだとも思います。政権政党は、官僚機構の情報・データにアクセスできますが、「官」に依存しない独自の政策立案能力を保持することが大事です。医者の「セカンドオピニオン」を持つようなものです。野党であれば、シンクタンクの提言が「ファーストオピニオン」になります。日本の志ある有能な頭脳を官僚機構に独占させず、シンクタンクという独立した組織にも取り込み、日本の「国家百年の計」を立てていく。それは、日本の民主主義を大きく成長させていく取組みになるのではないでしょうか。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「マニフェスト全面謝罪」

  • 民主党は6日、「マニフェスト重要政策説明用資料」の原案をまとめた。2009年衆院選のマニフェスト(政権公約)やその後の政権運営についての「反省点」を総括した。原案は、11の主要マニフェスト項目とマニフェスト以外の7重要政策について、見通しの甘さや説明不足を認め、全面的に謝罪する内容になっている。細野政調会長らが作成した。
  • 原案の主な内容は、以下の通り。▽マニフェストの財源確保=「歳入・歳出とも見通しが甘かった。選挙で掲げたことをできなかったことを認めおわびする」、▽社会保障と税の一体改革=「マニフェストには消費税の記載はない。政権を取れば財源は何とかなるという甘い見通しがあったことを国民におわびする」、▽米軍普天間飛行場移設問題=「沖縄県民や国民の期待を結果として裏切り、日米関係を一時的にせよ冷え込ませたことは民主党政権の大きな失敗。沖縄県民と国民におわびする」―。
  • 民主党は、次期衆院選が近づく中、2009年マニフェストに明確なけじめをつけることで、党への信頼回復を図りたい意図があるとみられる。ただ、鳩山元首相ら、主要政策に関わった議員からは、異論が出る可能性もある。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「不認可『未決に戻す』官僚が一計」

  • 田中文部科学相は、3大学の新設を不認可とした問題で、一転して「新基準での再審査」を打ち出した。来春開学の道が残された形となるが、スケジュールは未定。「不認可と決めたわけではなかった」という文科省の説明に、大学側は反発している。
  • 「大学の乱立に歯止めをかけて教育の質を向上させたい。それが私の真意だ」と話した田中文科相は、会見場に再登場し「今の設置認可の仕組みを見直した後、新しい基準で改めて(3大学について)判断します」と表明した。その直後、文科省の前川官房長が「(3大学について)不認可と伝えたとしたら、その言葉遣いは不適切だ」と説明。
  • 文科省は、「認可も不認可も決めていない」状態にリセットすることで、来春開学の可能性を残した。しかし、新基準の内容はほとんど決まっていない。大学側からは、「うちは文科省から不認可と言われた。詭弁中の詭弁だ」、「大変失礼な話だ」、「受験生がほかの大学に進路を決めた後で開学してみ、学生が集まるかどうか」といった反発と困惑の声が広まっている。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「廃炉費、政府に支援要請」

  • 東京電力は6日、福島第1原発事故対応が今後10兆円規模の達する可能性があり、単独での負担は不可能と判断し、政府に追加支援を要請する方針を固めた。税金をさらに投入することへの批判は必至であり、政府はリストラの進捗も踏まえ、追加支援の是非を慎重に判断する構えだ。
  • 7日午後に東電が発表する「中長期経営計画骨子」では、福島復興と東電のコスト削減策などを列挙する。そして賠償や電力の安定供給を続けるために、追加支援要請を盛り込む。除染費用は、数兆から10兆円規模に達する見通し。廃炉費用も、実質国有化時に策定した試算額1兆5000億円を上回るのは確実な情勢だ。
  • 追加支援について政府は、国民負担に直結することから慎重姿勢を崩していない。「国の一部負担もありえる」との枝野経産相の発言もあったが、国民の反発は避けられないため具体的な検討は進んでいない。支援額が巨大であり、東電の株主や銀行など貸し手の責任を問うべきだとの声が広がる可能性もある。

(毎日jp http://mainichi.jp/


日経新聞

【記事要約】 「新電力拡大策、前倒し」

  • 経済産業省は、電力業界の当面の競争促進指針をつくり、新電力(特定規模電気事業者)が大口需要家に電気を販売しやすくする。7日の電力システム改革専門委員会で指針を示し、意見公募などを経て来年から順次実施する。新電力の新規参入が増え、日本全体の電力供給量が増える効果も期待する。
  • 電力市場の競争促進策は、以下の通り。▽「新電力が売る電気がない」⇒新電力の販売拡大量の3割は大手電力が供給、▽「大企業向けには新電力1社では供給しきれない」⇒大手電力と新電力の共同供給で指針、▽「新電力がどこに発電所を作れば送電線網につなぎやすいかわからない」⇒電力会社の送電網の情報は原則公開―。
  • 大手電力各社も、卸電力市場に原発4基分の電気を売却する方針を示す。ただ、今回の競争促進策は、大手電力各社の収益を圧迫する要因となるため、原発の稼働が停止し各社の収益が軒並み悪化する中、新たな指針によって経営への影響を懸念する声も出る可能性がある。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「80年変わらぬ規制 ~変えたい選挙制度(中)」

  • NPO代表の原田さんら20代の有志は、ブログやメールを使えるよう公職選挙法の改正を求める「ワンボイスキャンペーン」を始めた。全国会議員に賛否を問うアンケートを送ったが、700人以上いる議員のうち回答したのは1割以下の70人ほどだった。「市民が最も政治に興味を持つのは選挙の時。そこで(有権者)を取り込まないでどうするか」と原田さんは語る。
  • 候補者や政党以外の演説会の禁止や、投票を依頼する戸別訪問の禁止など、公職選挙法は「べからず選挙」とも言われる。選挙運動に規制が加わったのは1925年(大正14年)で、戦後の新憲法下でも規制は残った。「自由化すると、組織力のある革新政党に有利に働くという保守政権の危機感があった」と上脇神戸学院大大学院教授は指摘する。
  • 国連が、80年以上続く規制に真っ向から異を唱えた。2008年10月に、自由権規約委員会が日本政府に、表現の自由と参政権の観点から、個別訪問禁止や文書制限の廃止を勧告した。この勧告の伏線となったのが、大分県豊後高田市の市議選での公選法違反による逮捕。弁護側証人として国連規約委元委員が「戸別訪問の全面禁止は国際人権規約に適合しない」と証言。しかし裁判所は「国連の公式見解ではない」として退け、有罪判決を下した。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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