2012.11.06 tue

新聞1面トップ 2012年11月6日【解説】「成熟民主主義」は可能か

新聞1面トップ 2012年11月6日【解説】「成熟民主主義」は可能か


【リグミの解説】

選挙のお金
選挙はお金がかかる。この「常識」がどれぐらい正しいか、よく調べてみる必要はありますが、本日の東京新聞1面トップ記事は
、ひとつの指標になります。選挙に出る際には、日本の公職選挙における供託金を選挙管理委員会などに寄託する必要があります。東京新聞は、その供託金が日本は世界一高い、と問題視しています。

衆議院に立候補するには、300万円を供託する必要があり、しかも有効投票総数の10分の1を獲得できなければ没収されます。地方選挙では金額が下がりますが、没収点が10%得票であることは基本的に同じです。この制度、気楽に立候補しようとする人にブレーキをかけるために、ハードルを上げているように見えます。

供託金の位置づけ
選挙にお金がかかるのは、立候補者だけでなく、選挙を挙行する自治体や国も諸々の管理費がかかります。泡沫候補がむやみに
出てくると、収拾がつかないので、一定のブレーキをかけたいという思惑もあると思います。政治家として活動したいなら、それ相応のコミットメントと覚悟を示すことが必要だ、という考え方も背後にあるのでしょうか。いずれにしても、社会を良くしたい、政治を変えたいという「思い」だけでは、政治家になれないことは、供託金制度ひとつ見ても明らかです。

では民主主義の「先進国」ではどうなっているのか。東京新聞は、米国、フランス、ドイツ、イタリアは供託金がなく、英国で約6.5万円、カナダが約8万円に過ぎないと伝えています。日本は逆に、公職選挙法改正の際に供託金の額が引き上げられてきたようです(参照:Wikipedia)。このあたりは、日本における選挙、そして民主主義の制度と実態をしっかり棚卸し、今の時代にふさわしい在り方を模索する必要性を感じました。東京新聞は、そうした意味で、参考になる記事でした。

世界に広がるナショナリスティックな動き
ところで、NHK『クローズアップ現代』の10月30日の放送で、「アメリカで影響力を及ぼす韓国系住民」という特集が放映されま
した。米国の韓国系住民は、結束力が強く、積極的に政治を支援している様子が伝わってきました。通りの名前を「ルーズベルトアベニュー」から「従軍慰安婦アベニュー」に変更する運動が紹介されたのを驚きを持って見ました。アジア系移民は、一般に政治的に「中立的」と見られるため、共和党と民主党の双方が投票を期待して接近してくる、と番組は紹介し、米大統領候補のロムニー氏の息子たちが、韓国系住民の政治集会に参加する様子を写しだしていました。

日本は、3.11を契機に新しい時代に入りました。首相官邸前デモに象徴される新しいムーブメントも生まれました。新しい日本的な民主主義の在り方が、ここから生まれ、成熟していけるか、問われています。一方で外国とは、日中、日韓の対立とナショナリズムの台頭という厄介な問題に直面しています。その動きは、中国や韓国の国内に留まらず、ネットを介して世界中に広がり、また中国系や韓国系の移民の活動を通して米国や欧州などでも展開される時代になっています。

「成熟民主主義」は可能か
「ハードパワー」と「ソフトパワー」の関係では、「ソフトパワー」を上手に発揮し、「Win-Win」を創造することが、結局はあ
らゆる国とっても最良の結果をもたらすことは、間違いありません。しかし、「政治力」というものは、一見「ソフトパワー」の発揮に見えても、実は「ハードパワー」志向であることが多いもの。つまり、自分たちの利益をもっぱら求める「Win-Lose」を目指すケースが圧倒的に多いかもしれません。

だからこそ逆説的に、日本は国内でも国外でも、「Win-Win」を志向する高度に「ソフトパワー」の発達した「成熟民主主義」の国になるべきではないでしょうか。そのための一歩として、供託金のようなものでハードルを上げて、「普通生活者」を政治から遠ざけるのでなく、慎重に制度を変えていき、国民が政治の「当事者」になっていく道を制度的にも開くべきだと思います。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「ツアー強行、現地任せ」

  • 中国河北省北部の万里の長城近くでの登山ツアーに参加した日本人4人と中国人添乗員1人が遭難した事故で、ツアーを主催したアミューズトラベルの板垣・総務部課長が記者会見をした。悪天候にもかかわらず、ツアーを強行した判断は、中国人添乗員と現地ガイドだったと述べた。
  • 外務省は、行方不明だった柳井俊一郎さん(76)の死亡を確認。小川陽子さん(62)、渡辺邦子さん(68)と合わせて邦人死者は3人になった。救助された添乗員によると、天気予報で雪が降ることは把握していたが、大雪までにはならない予報だったため、ツアーを決行したという。
  • アミューズ社は、ツアー企画を現地に任せ、現地ガイドの氏名も経験も把握しておらず、コースの下見もしていなかった。板垣課長は、「自分たちより現地に詳しい旅行会社に任せた」と語る。同社は、2009年7月に参加者ら8人が死亡した北海道大雪山系トムラウシ縦走ツアーを主催。安全確保の仕組みを構築していないとして、観光庁の業務停止処分を受けた。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「旅行会社、下見せず」

  • 中国河北省懐来県の万里の長城で登山ツアーに参加した日本人4人と中国人添乗員1人が遭難した事故で、北京の日本大使館は、邦人3人の死亡を確認した。亡くなったのは、小川陽子さん(62)、渡辺邦子さん(68)、柳井俊一郎さん(76)。
  • 同行していたフリーランスの現地ガイドが下山して遭難を伝えた。5人は簡易テントで待機していた。渡辺美世施さん(59)と中国人添乗員の明平銘さん(25)は救助された。軽い凍傷を負っているが、体調は少しずつ回復しているという。
  • ツアーを主催したアミューズトラベルによると、ツアーは「グレートウォール100キロトレッキング」という初の企画。計7日間で100キロ余を踏破し、予備日は設けていなかったという。同社の担当者は、天候悪化に伴うツアー中心判断を現地任せにし、気象情報の定時連絡をせず、現地の下見もしていなかったとして、謝罪した。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「日本人死者3人に」

  • 中国河北省張家口市郊外の万里の長城で登山ツアーに参加した日本人4人と中国人添乗員1人が遭難した事故で、北京の日本大使館は、日本人3人の死亡を確認した。亡くなったのは、小川陽子さん(62)、渡辺邦子さん(68)、柳井俊一郎さん(76)。渡辺美世施さん(59)と中国人添乗員・明平銘さん(25)は救助され、軽い凍傷はあるが徐々に回復しているという。
  • 4人は「世界遺産 万里の長城 グレートウォール・100キロトレッキング」という、初開催のツアーに参加し、遭難した。添乗員と共に民宿に泊まりながら、7日間で100キロ余りを歩く計画だった。ツアーを企画したアミューズトラベルは、直接の現地視察を行っていなかったことが判明した。
  • 日本旅行業協会などが作成したツアー登山運行マニュアルには、「自社社員または地元ガイドによる事前調査」を求める指針がある。しかしアミューズ社は、下見を現地の旅行会社に依頼。ガイドについての正確な情報も把握していなかった。観光庁は、旅行業法に基づき、同社を立ち入り検査する。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「CATV大手、電力販売」

  • CATV最大手のジュピターテレコム(JCOM)は、新電力のサミットエナジーと組み、年内にマンション向けの電力小売りに参入する。JCOMは、電気料金を東電より7%程度安く設定し、放送・通信サービスとセットで契約すれば10%程度安くする。
  • 電力小売りは、契約電力50キロワット以上のビルや工場などが対象で、新電力は各家庭に直接電力を供給できない。JCOMは、受信契約などで家庭と接点を持っており、新電力からまとまった電力を安く仕入れ、マンションの各戸に小分けすることで、柔軟な料金設定をできる。
  • JCOMは、370万の加入世帯を持つ。来春にはCATV2位のジャパンケーブネットと統合し、加入世帯は500万となる。年内にサービスを始め、1年以内に1万世帯への売電を狙う。サミットエナジーは、住友商事の新電力子会社で、火力など自前電源を持つ。自家用発電設備を持つ企業からも安く電力を調達している。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「世界一高い供託金 ~変えたい選挙制度(上)」

  • 静岡沼津市長選で落合秀郷さんが出馬を断念したのは、投開票日の10月28日の1週間前だった。立候補に必要な100万円の供託金を集められなかった。供託金以外にも、50種類近い申請書や証明書を用意し、平日の日中に市役所窓口に提出しなければならない。「組織の利益になる人には資金も集まる。お金集めができる人しか選挙に出られないのか」と落合さんは悔しがる。
  • 供託金は、国政では300万円(比例代表では600万円)まで上がる。他国は、米国、フランス、ドイツ、イタリアは供託金がなく、英国で500ポンド(約6.5万円)、カナダ1000カナダドル(約8万円)、香港5万香港ドル(約50万円)、韓国でも1500万ウォン(約110万円)で、日本は世界一高額だ。
  • 普通に働く人が、立候補という選択肢を取るのは至難だ。2009年の衆院選に立候補した1374人のうち、地方政界17%、政党役員13%、議員秘書9%、官僚7%、実業界5%と、政官財で5割を超える中、会社員はわずか3%足らずの38人だった。東京都知事選、衆院選、参院選と選挙が続く。原発事故を経て、市民は民主主義を問い直し始めたが、民意を託したい人が立補しやすく、選ばれやすい仕組みになっていない。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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