2012.11.03 sat

新聞1面トップ 2012年11月3日【解説】新しい時代のフォロワーシップ

新聞1面トップ 2012年11月3日【解説】新しい時代のフォロワーシップ


【リグミの解説】

トップダウン型のリーダーシップ
リーダーシップのスタイルは、「トップダウン型」と「ボトムアップ型」の2種類があります。一方、リーダーには、「新世界を
創造する」「現状を維持する」「旧弊を破壊する」の3つの役割が求められます。

本日の朝日新聞の1面トップは、田中真紀子・文科相のリーダーシップ・スタイルを象徴する記事です。田中氏は、文科省の大学設置・学校法人審議会が認可した3件の大学新設申請を不認可としました。朝日は、30年間1度もなかった前代未聞のこととして、驚きと戸惑いと批判の目線で報じています。田中文科相は、兼ねてから「大学が多すぎ質が低下している」という考えを持っていたようで、この機に「旧弊を破壊する」「トップダウン型」のリーダーシップを発揮しました。

日本では、少なくともこの10年ぐらいずっと、閉塞感や将来に対する不安が語られてきました。こういう状況が長く続くのは、リーダーシップが不在だからではないかという不満が強まり、現状を打開してくれる強いリーダーを求める気持ちが強くなります。尖閣諸島問題や竹島問題でも、「毅然とした姿勢」を示し、「勇ましい発言」をし、「果敢に行動」する政治家が頼もしく見えたりします。

リーダーシップとフォロワーシップ
しかし、かくも長く変化を拒む政治・経済・社会の状況があるのは、リーダー不在だからではないと思います。むしろ、「現状
を維持する」リーダーシップが粛々と機能しているからです。リーダーシップはそもそも、一方的に発揮されるものではありません。この人についていこうといフォロワーが現れて、はじめてリーダーが生まれます。リーダーシップとフォロワーシップは、不即不離の関係にあります。

これが、日本では特に顕著で、あまりに見事にフォロワーが「フォローアップ」するために、あたかもリーダー不在のように見えてしまいます。事務局が事前に根回しをして、会議が予定調和で進むように準備するなどは、日本の組織のお家芸ともいいべき「チームプレイ」です。つまり、日本では「現状を維持する」「ボトムアップ型」のリーダーシップ・スタイルが、一番機能しやすいといえます。

問題はここからです。現状維持を志向する「チーム・ジャパン」は、一体全体どこに向かいたいのでしょうか。日本を覆う閉塞感や不安感は、「現状維持は良い将来をもたらさない」ことを人々が見抜いているからです。現状は維持したい。でもその結果訪れる未来の姿は受け入れたくない。それがフォロワーの中にある漠とした「思い」だと思います。この「集合的な気分」を察するリーダーは、巧妙に現状維持の網の目を張り巡らせ、「変化」や「改革」を阻止します。

フォロワーはリーダーの意を汲
み、リーダーはフォロワーの思いに寄り添う。この関係の一番の問題は、「共依存」の関係になってしまい、結果として誰も望まないネガティブな未来を作り出してしまうことです。

「Win-Win」を実現するには
昨日の「リグミの解説」で、戦後の日本の「平和主義」は米国への「依存」することで成立した、と述べました。「依存」の反
対は「自立」。今、「毅然とした姿勢」を示し、「勇ましい発言」をし、「果敢に行動」しようとする政治家は、日本の「自立」を志向しています。しかし、あらゆる事象が複雑に絡み合い、瞬時に世界中を駆け巡るグローバル・マーケットの時代には、「自立」は部分最適にしかなりません。それは「Win-Lose」志向であり、互いに自分だが「Win」しようとせめぎ合えば、未来に待っているのは、「Lose-Lose」です。

今日の世界では、「Win-Win」という全体最適を目指すしか道はありません。その前提は、「相互依存」を積極的に進めることです。「相互依存」は「共依存」とは似て非なるものです。「相互依存」は、当事者として自立した者同士が、両者のメリットを最大化する関係です。真のリーダーシップの発揮のしどころが、ここにあります。「現状維持」すべきものはしっかり守り、旧弊は思い切って「破壊」し、希望の持てる新世界を「創造」する。この一連の流れを、ひとつの大きな「物語」のように実行していくのが、優れたリーダーシップのあり方です。

全員参加の「物語」
この「物語」には、全員が参加しています。「トップダウン」ばかりでなく、もっぱら「ボトムアップ」ということもない。リ
ーダーとフォロワーが、問題解決の不可欠の当事者として、相互に深く関係し合い、ひとつの「物語」を紡ぎ出していく。これが新しい時代のリーダーシップ&フォロワーシップのあり方です。

次期衆院選で大勝したい日本維新の会の橋本徹さん、東京都を飛び出して国政選挙の第3極の軸になりたい石原慎太郎さん、そして念願の大臣に返り咲いて持説を実現したい田中真紀子さん。「旧弊を破壊する」「トップダウン型」で非ニッポン的なリーダーシップを発揮する3人の政治家の中で、新しい時代の「フォロワーシップの創造」まで視野に入れたリーダーは、果たしているのでしょうか。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「厚年基金『5年で解散』」

  • 厚生労働省は2日、5年間の特例期間を設けて「厚生年金基金」を解散させる改革案をまとめた。大半の基金の財政状況が悪化していることへの対応であり、10年で制度自体も廃止する。
  • 厚生年金基金は、中小企業を中心とする企業年金で、国が運用する「厚生年金」から資金を借りて運用している。「代行部分」と呼ばれる借入は、基金の半数で解散時に国に返還するための積立金が不足する「代行割れ」状態だ。代行割れの総額は、1兆1100億円に上り、厚労省は制度存続は困難と判断した。
  • 厚労省案は、基金側が「代行部分」の返還ができない場合、基金の母体企業が負担する。厚労省は、資産差し押さえなどの強制徴収も想定し、それでも回収できない部分は厚生年金保険料で穴埋めしたい。しかし、与野党には慎重論が多く、制度改革は流動的な段階だ。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「不認可、大学や学生困惑」

  • 田中真紀子・文部科学相は2日、文科省の大学設置・学校法人審議会が認可した3件の大学新設申請を不認可とした。審議会の答申が覆されるのは、過去30年で初めて。田中文科相は、同審議会の大半の委員が大学関係者であることを問題視した。大学自体の評価には触れていない。
  • 不認可とされたのは、秋田公立美術大、札幌保健医療大、岡崎女子大の3大学。いずれも来春開学予定だったが、再申請をしなければならず、開学は早くても2014年にずれ込む。編入を予定したり、進学を希望していた学生、生徒を巻き込んだ混乱が広がっている。
  • 秋田公立美術大の設置を目指している秋田市の穂積市長は、「大臣の意向で覆す決定は到底承服できない」と話す。文科省から届く文書で理由を確認の上、田中文科相に不認可取り消しの緊急要望を出し、面会して撤回を求める意向だ。岡崎女子大の申請をしている学校法人清光学園の長柄理事長は、「遺憾であり、理不尽さを感じる」と話す。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「オスプレイ、月内に本土で低空訓練」

  • 森本防衛相は2日、全国知事会議に出席し、垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの本土での訓練が開始されると報告した。キャンプ富士(静岡県)と岩国基地(山口県)を使い、低空飛行や空中給油などの訓練を行う。会議に同席した野田首相は、沖縄の負担軽減のため、オスプレイ訓練の本土への分散移転に協力を要請した。
  • 本土での低空飛行訓練(高度地上約150メートル以上)について、米政府が6月に公表した環境審査報告書には、東北、四国、九州など6ルートが記載されている。1日1ルート以上、年間各55回ずつ使用するとある。森本防衛相は、報告書記載の回数を飛ぶとの見解を示した。
  • 静岡県の川勝知事は、「何の打診もなく、突然のことで驚いている。上から降ってきた暴力にほかならない」と強く反発している。山口県の山本知事も、「明らかになっていない事柄がたくさん残っているとの印象を受けた」と政府・米側の対応を批判する。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「東電、福島に『復興本社』」

  • 東京電力は2日、た2013、2014年度の経営方針の中で、「福島復興本社」(仮称)を来年1月にも福島県に設置することを明らかにした。全社員の1割強にあたる4千人以上が配置され、福島第1原発の賠償、除染、復興支援を一体で進める。
  • 東電の2013~14年度の経営方針のうち「福島への償い」は、以下の通り。▽4000人以上の「福島復興本社」を設置し、賠償・除染・地域支援を統合、▽全社員が福島で支援業務(年2~3回福島入りし、年間延べ10万人体制で家財搬出など生活支援にあたる)、▽除染担当を3倍の300人規模に、▽浜通り地区で高効率の石炭火力の増設を検討―。
  • 東電は、経営方針として「福島が原点」を表明。「復興本社」は、企画や人事の機能も与え、本社から予算、人員、権限を移す。廃炉では、福島第1原発4号機のプールからの燃料棒の取り出し開始時期を目標の2013年末から1年前倒しする。また、来期の黒字化目標に向け、年1千億円超の経費削減を追加する。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「一目ぼれして38年同じ部屋 ~ドナルド・キーンの東京下町日記」

  • ドナルド・キーンさんは、半世紀以上も前の1953年に京都大学に留学。ニューヨークのコロンビア大学で教えるようにっても、留学時代の古い日本家屋で夏を過ごす日米二重生活だった。しかし、1960年頃に新幹線工事で景色が台無しになり、思い切って東京に出た。
  • 東京では、自ら英訳した太宰治の『斜陽』に出てくる文京区西方を選んだ。近くに白山の花街が残り、風情もあった。コツコツと貯めたドルを円に換えてマンションを買ったが、騒々しい通りと消防署のサイレンに悩まされた。そんな時、北区西ヶ原の旧古川庭園を友人に教えられ、訪ねた。すてきな庭園の近くに白いマンションを見つけ、一目ぼれした。2年待って空いた部屋を買った。
  • それから38年住み続けている。日本好きのキーンさんにとって、安永年間の石碑が残る町並みも気に入っている。以前は自室から見えた旧古川庭園の池が、周囲の木が伸びて見えなくなったことだけが残念。「池の木は夜にこっそり切ってやろうか―と時々考えている」。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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