2012.11.02 fri

新聞1面トップ 2012年11月2日【解説】「相互依存」の時代

新聞1面トップ 2012年11月2日【解説】「相互依存」の時代


【リグミの解説】

「依存」の67年
日本は戦後67年、「平和主義」を貫いてきました。それは、「依存」のテーマを抱えこんだものでした。


本日の読売新聞の1面トップ記事は、「レアアース問題」です。重要な資源、仕入れ先、販売先などを一ヵ所に集中させれば、効率が良く、安定した事業基盤を築けます。この大きなメリットの裏側に、危険が潜んでいます。それが、「依存」の問題です。日本は、レアアースの殆どを中国からの輸入に頼ってきたため、2010年の尖閣諸島での中国漁船衝突事件で、中国が資源カードを切ったときに大慌てしました。

「依存」の反対語は「自立」。日本が、取れる道は2つあります。レアアースの調達先を分散すること、そして、技術革新を進め、レアアースに代わる素材開発をすることです。日本は、この路線を今進んでいます。

追い詰められた時
日本は、大きな戦略を立て、先験的なことを世界に先駆けて行うことが決して
苦手な国ではないと思います。しかし、米国などと比べて、イノベーションの文化に欠ける印象があるのも事実です。背景にはいろいろな理由がありますが、「依存」のメンタリティーが強いことが一因としてあります。

大きな存在に頼り、安定した基盤を確保し、安心したい。日本人に共通する安定志向は、停滞とはちょっと違います。安定基盤を持つことで、こつこつと現場から改良改善を行い、チームプレイでいつの間にか進化した状況を創造している。これが日本のいわばお家芸です。このやり方が、ぴたっと型としてはまるとき、日本は成長しますが、世界が不確定で変化し続ける不安定さに満ちていると、行先を見失い、停滞感に包まれます。

「依存」していた環境が大きく変化するとき、他国であれば、そうそうに見切りをつけて方向転換します。しかし、日本人はなかなか「自立」の選択肢を取りたがりません。今まで築き上げてきた均衡状態、一種の調和ともいうべき社会的環境を壊したくないからです。「空気」を読み合うという現象も、こうしたメンタリティーの反映と言えます。ではどうするか。日本が大きく変化するのは、追いつめられた時です。いよいよダメだとなったとき、日本人は突然大きく動き出します。

自立」の歴史
レアアースは希少資源であり、これがないとハイブリッド車や、ハイテク家電などのお家芸製品が作れなくなります。そこで政
府も企業も、遅まきながら事態の深刻さに気付き、「中国リスク」の回避に走りました。今回のカザフスタンからのレアアース輸入は、その成果のひとつのようです。しかし、中国漁船衝突事件から2年経った今年、再び尖閣諸島問題を契機に勃発した「中国リスク」は、前回をはるかに上回るものとなっています。

ぎりぎりまで「依存」し、いよいよ追いつめられると一気に「自立」に反転する。それが良い方向の選択となった場合、日本は旧弊を脱皮し、気付くと大きく進化しています。幕末から明治維新への変革は、ひとつの好例と言えます。一方で、追いつめられて悪い方向の選択をした歴史もあります。石油の輸出を止められて、対米開戦に暴走し、わずか4年で国土を焦土にしてしまった太平洋戦争の悪夢です。

「相互依存」の時代
日本は戦後70年近く、「平和主義」の国家を築いてきました。それは、米国という軍事力と経済力の両面で文字通り世界一の大
国である米国に「依存」することで成立するものでした。そこに、経済を急成長させた中国が台頭し、日本は経済においては、米国以上に中国に「依存」する状況になってきました。その中国は、米国と違う体制や価値観の国です。日本の「平和主義」が今までと同じように続けられる保障は、ありません。

しかし、今日のグローバル・マーケットの本質は、「相互依存」です。相対的に「依存」が強い、あるいは「自立」している、ということはありますが、互いに連結し合い、ひとつの大きなシステムを形成しており、このシステムはますます複雑に絡み合うようになっています。過度な「依存」を回避し、「自立」の基盤を前広に確保することは、国家も企業も成していくべきことです。

同時に、「相互依存」の意味を洞察し、グローバル・マーケットがシステムとして有効に機能する基盤を創造する責任と義務が、日本にはあります。「相互依存」の本質は、「Win-Win」か「Lose-Lose」しかない、ということです。とすれば、相互繁栄を築く試みを、あらゆるレベルで重層的に取り組むしか道はありません。追いつめられる前に、未来のあるべき姿を構想すること。今こそ、日本の「平和主義」の在り方を進化させ、その大きな価値を東アジア、そして世界に広めるべき時です。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「カザフから重レアアース」

  • カザフスタンからのレアアース(希土類)の輸入が、来年1月にも始まる見通しとなった。政府の支援によるもので、輸入量は年約1500トン、日本の年間需要量の7.5%となる。希少性の高い重レアアースも含まれる。中国以外からの輸入は初めて。
  • 重レアアースは、ハイテク産業で機能向上の材料として使用される。ジスプロシウムは、ハイブリッド車やスマートフォンのモーター製造に欠かせないもので、年間需要量の3%にあたる年約20トンをカザフスタンから輸入する計画。開発・輸入は、2009年に住友商事がカザフスタンの国営資源企業と合意した。
  • 日本は、重レアアースの供給をほぼ全量中国に依存している。2010年の尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件を機に、中国がレアアースの対日輸出を一時停止した。政府はこれを受けて、レアアースの調達先の多角化を進め、資源を武器にした中国の外交圧力をかわしたい考えだ。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「3月業績下方修正」

  • 東証1部上場企業で、2013年3月期の業績予想の下方修正が相次いでいる。9月中間決算発表を終えた469社(全体の39.7%、金融を除く)のうち、売上高予想を下方修正したのは、175社(37.3%)。営業損益は145社(30.9%)、純損益で148社(31.6%)が下方修正した。
  • 東証1部上場企業全体(金融を除く)の期初想定は、営業利益が前年比15.5%増だったが、今回の集計企業では、9.1%増に鈍化した。製造業では、期初想定営業利益24.9%増が、12.9%増に半減。特に輸出依存型の企業で顕著な下方修正が見られる。電気の純利益は、87.8%減、鉄鋼も78.5%減。
  • 東日本大震災と超円高の影響で業績が厳しかった昨年に対して、今年は海外市場をテコに「V字回復」する期初予想が多かったが、欧州危機の長期化と中国景気の減速により、業績にブレーキがかかった。日興証券の伊藤・株式調査部次長は、下期以降に明らかになる日中関係悪化の影響は、「大半の企業では現時点では織り込まれていない」と指摘する。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「電波障害対策100億円」

  • NHKと在京民放5社は、東京スカイツリーで想定以上の電波障害が判明した問題を受け、受信対策などで最大100億円を負担する。内訳は、各家庭のアンテナ調整や交換などの受信対策に70億円、コールセンター設置や広報などの費用に約30億円。
  • 受診状況のサンプル調査で、マンションなどの集合住宅で10.5%(約1900世帯中約200世帯)、戸建てで11%(約2700世帯中300世帯)の世帯がスカイツリーからの電波を正しく受信できなかった。
  • サンプル調査は深夜だったため、回答数が少なかった。より詳細な実態把握のため、早朝や昼間の試験を検討している。民放の中には、CMへの影響を懸念する声もあり、早急に受信対を万全にし、来春にも東京タワーからスカイツリーに移転したい考えだ

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「アジア決済、収益源に」

  • 大手銀行は、アジアにおける貸し出しに続く軸として、決済分野のサービスを強化し、アジア・ビジネスの拡大を急ぐ。2008年秋の金融危機後、欧米銀行は資産圧縮を進めたが、邦銀はそれに代わる形でアジアでの貸し出しを拡大してきた。欧米銀行が先行していた決済分野にも攻勢をかける。
  • 3メガ銀行のアジアでの決済分野の拡大策は、以下の通り。▽三菱東京UFJ=3年間で業務粗利益を5割増の3000億円弱、決済業務の担当者を3割増の200人体制とする、▽三井住友=貿易金融の拠点をニューデリーなど8拠点に新設し、世界30拠点で対応可能とする、▽みずほ=送金など人民元の取り扱いをアジアの大半の拠点で可能にする、決済分野の収益割合を5年以内に10%から20%に増やす―。
  • 欧米大手銀行は、決済分野で邦銀を上回る投資を続け、充実した拠点網を持つ。中長期の確実な成長が見込めるアジアで、内外の金融機関の競争が激化する見通しだ。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「税金に殺されてたまるか ~名もなきケイザイの唄」

  • 『何に使うかなどとお尋ねにならないことです。そう、私は税金取り』。重い税負担に不満をこめたビートルズの『タックスマン』(1966年)。デフレに苦しむ日本経済は、消費増税、復興予算の流用問題により、立ち直りをさらに遠くしようとしている。
  • 東京多摩地区にある工場の社長は、帳簿に斜線を入れる。9月以降、取引先25社の半分から連絡がない。「リーマンショックの時よりもひどい」。電話が鳴ると、税務署員が「法人税を滞納しています」と冷たく言う。今まで経費として認められた社長自らへの未払い給与が課税対象になったという。売り上げが乏しく、自分の報酬は後回しにしていた。
  • ここにきて急速に景気が減速している。「税金に殺されるわけにはいかない」。機械の動かない工場に、社長の言葉が響いた。『何に使うかなどとお尋ねにならないことです。税金を増やしたくないならね。そう、私は税金取り』。今の日本を、ビートルズだったらどう唄うのだろうか。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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