2012.11.01 thu

新聞1面トップ 2012年11月1日【解説】ブランド時代のマネジメント

新聞1面トップ 2012年11月1日【解説】ブランド時代のマネジメント


【リグミの解説】

ブランドの時代
「ブランドの時代」が続いています。かつては、一部の高級ファッションなどの「専売特許」であったがブランドが、今では地方自治体にまで浸透しています。街起こし、地域起こしのために、イメージ・キャラクターを創り、特産品や観光名所を売り込むのは、普通のことになっています。熊本県のゆるキャラ「くまモン」は、全国区の人気になり、その経済波及効果は「数百億円」と言われます(参照:日経ビジネスオンライン)。

ブランドの原義は、家畜の烙印で、所有者を明示することで他者の家畜と区別する目的のものでした。転じて、商品を見分ける
ために製造元が製品につける商標やマーク、タグなどの付属物を指すようになりました。ですので、ブランドの第1の機能は「認知」。知ってもらうことです(参照:Wikipedia)。

無名では、スタートラインに立てません。しかし知ってもらっても、使ってもらい、いいものだと
認めてもらえなければ、ブランドの価値は高まりません。①「商品などの存在が認知される」⇒②「試しに使用される」⇒③「使った人が満足する」⇒④「それが評判となって広がる」⇒⑤「ブランドへの信頼・親しみ・好み・忠誠が確立する」というサイクルを繰り返して、ブランドは育っていきます。

パナソニックの赤字
本日の新聞1面トップは、朝日、毎日、日経が「パナソニック7650億円赤字」という決算報道です。パナソニックは、前期も7721
億円の赤字でしたので、合わせて1.5兆円強の累積赤字です。買収した三洋電気の太陽電池やリチウムイオン電池事業がうまくいっていないことの影響が大きいですが、携帯電話のスマホ対応でつまづくなど、事業推進の課題が大きく浮上した形です。

パナソニックの前身は、言うまでもなく松下電器産業です。2008年10月1日に社名変更をしました。「経営の神様」と称された創業者・松下幸之助の名を冠した社名を変えることは、大変難儀なことであったと思います。かつては「松下」「ナショナル」「パナソニック」のブランド名を使い分けていましたが、世界展開をする中でそのデメリットが増大しました。そこで、海外で知名度の高い「パナソニック」への統一が検討されましたが、幸之助氏が激怒し、棚上げとなったそうです。創業者の死後、「パナソニック」が国内外に十分に浸透していることを考慮して、社名変更をし、「ナショナル」ブランドも廃止しました(参照:Wikipedia)。

新生パナソニックは、しかし業績で大きくつまづきました。存在が十分に認知されたパナソニックは、②「試しに使用される」⇒③「使った人が満足する」というブランドの足元固めのプロセスで、いろいろな課題に直面しました。

上記のブランド・サイクルの④「評判
」や⑤「信頼」を、派手な広告宣伝などで一時的に作ることは可能です。過去のブランド資産があれば、ブランドスイッチをしないロイヤリティーの高い顧客基盤を維持することも可能です。でも、そのいずれも「賞味期限」は限られています。パナソニックは、足元からブランドを再構築すべき状況にあると思います。

ブランドは不易流行
企業は、現状に満足せず、絶えざるイノベーションによって脱皮し続ける必要があります。同時に、変えてはいけないものを大
切に守り続けることも、イノベーションと同じぐらい重要です。松尾芭蕉が俳諧のスピリットとして説いた「不易流行」は、ブランドビジネスの要諦です。絶えず時代の先を創造する「流行」と、根幹の価値観やDNAを軸として持ち続ける「不易」。このふたつのことを、どうバランスさせていくか。

小さなファッション・ブティックも、巨大なエレクトロニクス企業も、「ブランド価値をどう創り上げるか」という意味では、商売の目の付け所は同じです。社名変更を断行したパナソニックは、グローバルに広がる「ブランドの時代」に対応しようとしました。それは、「流行」を体現する経営判断でした。しかし、新生パナソニックは、「松下」や「ナショナル」といった老舗ブランドが担っていた「不易」のスピリットを、どこかに置き忘れたのではないでしょうか。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「首相、年内解散触れず」

  • 野田首相は30日、衆院本会議の代表質問で、安倍・自民党総裁と初の論戦を行った。安倍氏は、年内の衆院解散を迫ったが、首相は具体的な言及を避けた。
  • 野田首相は、解散を判断する条件とする①特例公債法案の成立、②衆院選の「1票の格差」の是正、③社会保障制度改革に関する国民会議の設置―の3課題に加え、新たな経済対策の実施も重視する姿勢を示した。解散時期の特定については、「『近いうちに国民の信を問う』と申し上げた意味は大きい。特定の次期を明示しない中でのぎりぎりの言及だ」と釈明した。
  • 安倍氏は代表質問後、「全く誠意ある回答がなく、残念だ」と不満を表明し、国会審議でさらに首相を追求する姿勢だ。解散をめぐり、与野党の攻防は激しさを増している。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「パナソニック7650億円赤字」

  • パナソニックは31日、2013年3月期の純損益の業績予想を発表した。7月時点で見込んでいた黒字500億円から、赤字7650億円に下方修正した。2012年3月期も7721億円の赤字で、2期連続の7千億円超の赤字という国内大手企業としては異例の業績となる。
  • 赤字7650億円の内訳は、以下の通り。①2009年に買収した三洋電気資産価値の見直し(太陽電池やリチウムイオン電池の国際市況の悪化)に伴う減損処理=2378億円、②含み損を抱える他事業の処理費用=1177億円、③これら事業の黒字を前提に計上していた「繰り延べ税金資産」の取り崩し=4125億円―。
  • 同社は、前年度の赤字を受け希望退職募集や生産拠点集約などを進めている。減損処理は、現金の支出を伴わないため、大規模な追加リストラには踏み込まないが、年間配当は63年ぶりの無配とする。海外工場を閉鎖し、役員・管理職の報酬カット幅を拡大する。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「パナソニック7650億円赤字予想」

  • パナソニックは31日、2013年3月期の最終(当期)損益の業績予想を発表した。従来予想の黒字500億円から、赤字7650億円に下方修正した。2012年3月期の赤字7721億円に続くもので、製造業で過去最悪の日立製作所の赤字7873億円(2009年3月期)に迫る赤字を2期連続で計上する。
  • 赤字7650億円の内訳は、以下の通り。①携帯電話・太陽電池・リチウムイオン電池の「のれん代」損失処理=2378億円、②その他の資産の損失処理を含む事業構造改革費用=1177億円、③将来の税負担軽減を見込んで計上していた「繰り延べ税金資産」の取り崩し=4125億円―。
  • 薄型テレビやブルーレイレコーダーの市況悪化、海外の景気減速などのより、2013年3月期の連結売上高を従来予想8兆1000億円から7兆3000億円(前期比7.0%減)に下方修正。営業利益予想も、2600億円から1400億円(前期比3.2倍)に引き下げた。業績悪化に伴い、2013年3月期の年間配当をゼロにする(従来予定は10円配当)。無配は、1950年以来となる。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「パナソニック7650億円赤字」

  • パナソニックは31日、2013年3月期の連結最終損益(米国会計基準)の業績予想を発表した。従来予想の黒字500億円から、赤字7650億円に下方修正した。2012年3月期の赤字7721億円に続く大型赤字となる。
  • 同社の主な構造改革は、以下の通り。▽「構造改革」 ①薄型テレビ・パネル事業の組み立て拠点清算、②欧州スマホ事業から撤退・国内生産撤退、③ソーラー事業のマレーシア工場投資の凍結、▽「緊急対策」 ①投資抑制と不動産売却で2000億円のキャッシュフロー創出、②役員報酬を月額前年比20~40%返上、管理職の冬季賞与を前年比35%削減―。
  • 背景には、M&A戦略の狂いがある。8000億円を投じて三洋電気を買収したが、電池事業をテコにした成長戦略の前提となる事業環境が大きく変化した。結果として、前期と合わせて5000億円の減損処理となった。携帯電話事業では、スマホの展開で遅れた。民生用リチウムイオン電池事業は、価格と需要の両面で厳しい環境に直面している。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「『高線量下の作業違法』労基署に申し立て」

  • 東京電力福島第1原発事故の収束作業について、福島県いわき市の元作業員男性が、福島県富岡労働基準監督署に申し立てをした。東電と作業を請け負った関電工が、高い放射線量の中で、被曝を最小限に抑えるよう必要な措置をせず、作業を続けさせたのは、労働安全衛生法違反に当たるとする。
  • 男性によると、事前に聞いていた説明では、作業に危険はない程度の線量という説明だったが、建屋地下には大量の高濃度汚染水がたまり、線量も高かった。東電社員らの作業班は、毎時400ミリシーベルトの放射線量を計測したため撤退したが、男性のいた班は作業継続を指示された。
  • 作業員は、「一つ間違えば命に関わった。末端の作業員は危険手当もろくにもらわず、被曝しながら命懸けで作業をしている。東電や元請け会社の責任は重い」と訴えた。男性の弁護団は、同じ場所で別の作業班が撤退したにもかかわらず、関電工が作業員を危険にさらしたのは違法だとして、関電工に対する処罰を求めた。発注元の東電に対しては、線量管理などのあり方を是正するよう求めた。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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