2012.10.31 wed

新聞1面トップ 2012年10月31日【解説】ぴかぴかの未来型エンジン

新聞1面トップ 2012年10月31日【解説】ぴかぴかの未来型エンジン


【リグミの解説】

日銀の機能
本日の新聞1面トップ記事は、読売、朝日、毎日、日経がそろって、「日銀の追加緩和」を報じています。

中央銀行である日本銀行の役割は、3つあります。

  1. 発券銀行=銀行券(お札)を独占的に発行。お札の信用が損なわれないよう、汚れたり破損したものを廃棄するなどお札の管理も行う。
  2. 銀行の銀行=民間銀行は中央銀行に当座預金口座を開設。これを通じて民間銀行から預金を受け入れたり、貸し出しをするなど「銀行にとっての銀行」の役割を果たす。
  3. 政府の銀行=税金など政府の資金を管理。また政府の一時的な資金不足に対して貸し出しを行ったり、国債の償還・利払いの事務なども扱う。

日銀は、これらの機能を組み合わせて、物価の安定や景気の調整をはかり、経済の健全な成長を維持する「金融政策」を実施します(参照:nikkei4946.com)。

物価の番人
日銀というと、「物価の番人」という言葉が最初に浮かんできます。バブル景気が過熱した1989年から1990年にかけて、急激な
金融引き締めを実施した当時の三重野総裁の印象が強いからでしょうか。三重野氏は、バブルを退治し、「平成の鬼平」ともてはやされたが、その後の経済の長期低迷を招いたとの批判もあります。

「物価の番人」がキーワードになるということは、そこに焦点を絞ることで、「景気の調整」をはかれ、「経済の健全な成長」を維持できる、という理屈だと思います。しかし、それは「過剰なインフレ」をコントロールする局面ではよく機能しても、「デフレ」が止まらない局面では、十分な効果を発揮しないように見えます。

金融の素人の感覚論に過ぎませんが、日銀などの中央銀行が取る「金融政策」は、経済の動きを「調整」するだけであり、経済を推進する「エンジン」になることはできないように思います。「エンジン」が過熱したり、冷え込んで動きが悪いときに、調整をして、安定的な走行を果たすことはできても、「エンジン」そのものが構造的な問題を抱えたり、時代に合わなくなったりしているところでは、何をやっても「焼け石に水」に近いのではないか。

ぴかぴかの未来型エンジン
燃費が悪く、壊れやすい「旧式のエンジン」のままの日本を、「最新のハイブリッド・エンジン」や「高効率の小排気量エンジ
ン」に変えない限り、日本経済は浮上しないのかもしれません。「旧式エンジン」とは、個人や小企業のイノベーションを支援できない社会経済構造、既得権益を守りつづける様々な政財官の仕組み、女性など多様性の価値を取り込めない企業や組織のあり方などです。

「平成の鬼平」三重野さんは、今年4月に亡くなりました。「失われた20年」が、ずるずると「失われた30年」に延長されてしまう前に、動き出す必要があります。悪人どもをしょっぴく鬼平に変わり、今日本が必要なのは、自分たちの内側にある「無限の可能性」を引き出してくれるビジョンの人です。いつまで経っても幕末の英雄しか例に出せないのも困りものですが、「平成の竜馬」の方が、希望を感じさせます。

坂本竜馬は、国を開き、海を渡り、他流試合をすることを夢見ました。それは徳川幕府という旧式のエンジンを破壊し、明治維新の新式エンジンを創造する試みでした。「創造的破壊」を恐れない姿勢が、日本に「ぴかぴかの未来型エンジン」をもたらすのではないでしょうか。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「日銀11兆円追加緩和」

  • 日本銀行は30日、政策委員の全員一致で、追加の金融緩和を行うことを決定した。景気悪化を防ぐため、日銀が基金を通じて世の中に供給するお金の量を11兆円増やす。
  • 日銀の決定内容の骨子は、以下の通り。▽資産買い入れ基金を11兆円程度増額し、総額91兆円程度に(内訳=短期国債5兆円、長期国債5兆円、上場投資信託など計1兆円)、▽金融機関に低金利で無制限に貸し出す新たな融資制度を創設、▽物価上昇率は「2014年度には1%に直実に近づいていく」―。
  • 今回の追加緩和は9月に続くもので、2ヵ月連続となるのは、2003年4、5月以来。加えて、白川総裁、前原経済財政相、城島財務相の連名による共同文書を発表し、政府と日銀が歩調を合わせてデフレ脱却に取り組む姿勢を示した。政府と日銀が、共同文書をまとめるのは、初めて。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「日銀、2ヵ月連続緩和」

  • 日銀は30日、金融政策決定会合で、11兆円の追加の金融緩和を行うことを決定した。中国経済の減速などで、日本の景気は失速しており、異例の2ヵ月連続の緩和に踏み切った。
  • 日銀の措置と経済見通しは、以下の通り。▽2ヵ月連続の追加緩和(2003年4、5月以来)、▽融資を増やした金融機関に、日銀が低金利で無制限に貸し出しをする(初めて)、▽デフレ脱却に向け、政府と日銀が共同声明を発表(1998年4月の新日銀法施行以来初めて)、▽2014年度の物価上昇率の見通しは0.8%(日銀の目標の「1%」に届かず)―。
  • 物価意味通しが1%に届かなかったことは、2014年4月に予定されている消費増税の第1段階の実施に、影響を与える可能性がある。与野党からの増税先送り論を避けるため、政府が日銀に一段と金融緩和圧力を高めることも予想される。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「日銀11兆円追加緩和」

  • 日銀は30日、金融政策決定会合で、11兆円の追加の金融緩和を全員一致で決定した。日銀は、異例となる政府との共同文書も発表した。内容は、政府と中央銀行が政策目標を共有し、達成に向けた施策を定める政策協定(アコード)と言えるもの。
  • 日銀の追加緩和は、以下の通り。▽資産買い入れ基金の規模を11兆円増額(総額91兆円規模)、▽増額の内訳=長期国債5兆円、短期国債5兆円、上場投資信託や社債などリスク性資産を計1兆円程度(増額は2013年末までに完了)、▽日銀が無制限で資金供給し金融機関に融資を促す「貸出支援基金」を創設、▽政府・日銀はデフレの早期脱却に一体となって最大限努力―。
  • 日銀は、2014年度の消費者物価上昇率見通し(生鮮品を除く)は0.8%とし、事実上の物価目標の「1%」に届かず、デフレ脱却が遠のく形だ。政府は、共同文書を根拠に、追加緩和圧力を強めることが予想され、日銀の独立性との関係が注目される。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「日銀、11兆円追加緩和」

  • 日銀は30日、金融政策決定会合で、11兆円の追加の金融緩和を全員一致で決定した。政府との協調をアピールするため、政府・日銀の共同文書も初めて公表した。同文書に、早期のデフレ脱却に向け「一体となって最大限の努力を行う」と明記。
  • 金融政策決定会合の要旨は、以下の通り。▽「追加金融緩和」=①資産買い入れ基金を11兆円程度増額(総額91兆円程度)、長期国債と短期国債を5兆円ずつ増額、上場投資信託なども購入増額、②銀行の貸出増加を促す基金の創設(貸出増額分は全額資金供給、資金供給総額は無制限)、③政策金利は事実上のゼロ金利を維持、▽「政府との政策協調」=初の共同文書、▽「景気判断」=弱含みに下方修正、▽「展望リポート」=2014年の物価上昇率見通しは0.8%(日銀がめどとする「1%」に届かず)―。
  • 日銀展望リポートでは、足元の経済情勢について、海外経済の減速で輸出や生産が落ちていることを指摘。内需にもその影響が一部及び始めており、景気が弱含んでいると分析。従来の表現より厳しい見方に修正した。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「線量計隠し現場へ」

  • 厚生労働省は30日、東京電力福島第1原発で起きた、線量計を鉛カバーで覆って被曝線量をごまかした問題についての調査結果を公表した。見つかったのは、線量データの誤記など19件の不適切なケースだけで、意図的なごまかしはなかったとの内容。だが、東京新聞の取材で、元作業員の男性は、線量計を持たずに現場に行っていたことを新たに証言した。
  • 証言したのは、福島県いわき市の20代の男性。「5年間で100ミリシーベルト」(年平均20ミリシーベルト)という作業員の被曝線量限度をあっという間に使い果たし、働けなるため、男性は線量計を隠したまま作業を続けることを思いついた。線量計を隠したままの作業は、5ヵ月間で約20回に上った。同じことをした同僚もいた。
  • 線量計隠しをしても、男性の被曝線量は、5ヵ月で40ミリシーベルトを超え、解雇された。鉛カバーを自作した別の作業員は、「仕事を失わないため必死だった。分からないよう慎重にやった。厚労省のような聞き取り調査では、実態はなかなかわからない」と話す。厚労省の担当者も、「悪質な事例を申し出れば、法令違反に問われる可能性もある。行政の調査で掘り起こすのは正直難しい」と認める。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



【本日の新聞1面トップ記事】アーカイブ