2012.10.05 fri

新聞1面トップ 2012年10月5日【解説】男と女の「違い」

新聞1面トップ 2012年10月5日【解説】男と女の「違い」


【リグミの解説】

皇位継承と女性
読売新聞の1面トップは、皇位継承問題についてです。有識者ヒアリングを基に政府がまとめたもので、「女性宮家創設を内親王
に限定して進める案」で皇室制度の改正を検討する、という内容です。

皇室典範では、天皇家の当主である天皇は、男性のみ認めており、女性天皇は認められていません。また、女性皇族が皇族以外の男子と結婚した場合は、皇族ではなくなると規定されています。皇族がほとんど女性となっているため、男系天皇を前提とした現行制度では、皇位継承ができなくなる可能性があります。

この問題は、男系という皇室の伝統をどう見るか、歴史上数名存在する「女性天皇」をどう解釈するか、さらに「女性天皇」と「女系天皇」の違いなど、なかなかややこしいものがあります。今回の検討案は、「女系天皇」の可能性を開くものになるのでしょうか。

開かれた議論への一歩
日本は、1972年に男女雇用機会均等法が施行され、1999年には男女共同参画社会基本法も施行されました。しかし女性の社会進
出は、諸外国に比べて遅れていると言われます。米国の非営利団体の調査によると、企業の女性取締役の割合で、日本はわずか1.4%で、調査国42ヵ国中の38位だったそうです。そんな「男社会」が続く日本で、日本の歴史文化の中枢を担う皇室の継承問題は、最終的にどういう決着を見るのでしょうか。

ちなみに、筆者のまわりでキャリアを積む女性経営者やプロフェッショナル職の女性に、皇位継承問題について意見を聞いたところ、「男系天皇が良い」というコメントが多かったのが印象的でした。「一般社会と皇室の伝統は異なる」、「ずっと男系できた皇室に関係のない男性が入ると、もう同じ家系でなくなる感じがする」、「男性は支配欲があるので、いつの間にか皇室を乗っ取る危険を感じる」といった意見でした。

天皇・皇室問題は、かつては公に議論することが難しいタブーのひとつでした。差し迫った事情があるとはいえ、憲法で日本国の象徴と規定され、日本社会をひとつにむすぶ存在である天皇の皇位継承問題について、制度に入って論じられるのは大きな進歩です。

政府はこのあと、幅広く国民から意見を募る方針だそうです。これを機会に日本の歴史と伝統を振り返り、未来の社会の在り方に思いを馳せる良い機会だと思います。皇位継承問題に限らず、社会における男性と女性の役割について、さまざまな意見やアイデアが出てくることを期待したいと思います。

男性と女性の「違い」を活かす社会
社会における女性の地位に関連して、「女性の首相はいつ誕生するのか」というテーマがあります。皇位継承問題に比べればず
っとシンプルなテーマですが、今のところその兆候は見えません。ビジネスでも政治でも、女性の指導者がいつどのように登場するかは、日本社会の針路を推し量るポイントのひとつだと思います。

「社会と女性」つながりでもうひとつ。昨日の東京新聞に、日本維新の会の国会議員はすべて男性であり、維新八策には少子化対策が触れられていないことから、維新は女性軽視だ、という批判記事がありました。7人の子供をもつ橋下市長は、どう考えているのでしょうか。維新の会の支持者の男女比も見てみたい気がします。

3日の朝日新聞に掲載された世論調査で、原発問題に関連して興味深い数値が出ていました(「リグミの解説2012年10月3日」)。

  • 「原発をどうしたら良いか」 
    • ―2030年代より前にゼロ  36% (女性45%―女性で最多の答え)
    • ゼロにしない         31% (男性39%―男性で最多の答え)
女性が脱原発を牽引し、男性は原発推進を支持している―。ちょっと単純化し過ぎかもしれませんが、子供たちの安全を重視する女性と、経済活動を優先する男性の「違い」が見えた感じがしました。

以前の日経新聞による領土問題についての世論調査でも、男性は「強力に対抗すべきだ」、女性は「対話で解決すべきだ」という傾向が出ていました。


男性視点に偏り過ぎない社会をどう創るか。未来の日本の在り方にまでつながる大切なテーマです。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「女性宮家、内親王に限定」

  • 政府がまとめた女性宮家創設に関する論点整理の全容が明らかになった。今年2月から7月にかけて有識者12人からヒアリングした結果を踏まえてまとめた。
  • 骨子は以下の通り。①制度改正の対象範囲は内親王に限定(内親王=天皇の子、孫にあたる女性。愛子様、眞子様、佳子様の3人)、②女性宮家の創設の検討を進めるべき、③女性宮家の配偶者や子にも皇族の身分を与える案(I)と与えない案(II)がある、④女性皇族が皇籍離脱後も公的な立場での皇室活動を可能にする案もある―。
  • 女性宮家創設に反対する立場の一部有識者が提案していた「尊称保持案」(結婚後に「内親王」や「女王」の尊称を使って皇室の活動に参加)は、実施困難とし、事実上否定された。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「iPS細胞から卵子、出産」

  • 京都大の研究チームは、マウスのiPS細胞(人口多能性幹細胞)から卵子をつくることに成功した。つくられた卵子を体外受精させ、子供や孫も生まれた。iPS細胞から生殖機能のある卵子ができたのは初のケース。
  • 人間に応用できれば、卵巣の病気で卵子ができなかったり、卵子の老化で妊娠が難しくなった女性でも、皮膚細胞などからiPS細胞を経て、新しい卵子をつくれることになる。チームは昨年、マウスのiPS細胞から生殖が可能な精子をつくったことも報告している。このため理論上は、精子ができない男子と卵子ができない女性が、皮膚細胞などをもとに自己の遺伝情報を継承する子供をつくる道が開かれる。
  • ただ、人とマウスのiPS細胞は性質が違い、人間で始原生殖細胞をつくるのはかなり難しいという。iPS細胞をつくる際に遺伝子に傷がつく恐れもある。生命倫理上の懸念も指摘される。研究チームの斉藤通紀教授は、卵子に機能の問題がなく、倫理上の問題も解決されることを前提に、「成果が不妊治療に役立てばいいと強く思う」と語る。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「福島検討委、委員発言県振り付け」

  • 東京電力福島第1原発事故を受けて、福島県が実施中の県民健康管理調査で、委員が発言すべき内容を記述した議事進行表が事前に作られていたことが判明した。調査結果への見解の「結語」(結びの言葉)も記されていた。
  • 「取扱注意」と書かれたA4版2ページの資料に、発言予定として「セシウム134及び137による内部被ばくについては、合計しても1ミリシーベルト未満であり、相当に低いと評価。他の地域の住民では、さらに低いと思われる」と記されていた。
  • 他に「SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム)再現データの質疑に終始しない」と求める記述もあった。県の担当者は、「座長(山下俊一・県立医大副学長)のメモ的なものとして作った可能性はある」と話す。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「中国暴動特約を停止」

  • 大手損保各社は、中国での暴動被害を補償する保険の新規契約を中止した。現在は契約企業の被害調査を優先しており、新規契約の再開は「年明け以降になる」(大手)という。新たに中国進出する企業は、当面暴動に対し「無保険状態」となる。
  • 通常の企業向け損害保険では、暴動による被害は補償対象外だが、「SRCC(ストライキ危険)」という特約に入ると暴動やストライキによる物的損害や、工場や店舗の休業で失った利益の補償を受けられる。近年は、年間約2000社が新たに中国進出をしており、大半の企業が「SRCC」特約付きの火災保険をかけている。
  • 損保各社は、契約更新企業を含めて、保険料の引き上げを検討している。背景には、補償額の一部を肩代わりする再保険会社の姿勢の変化もある。日本企業というだけで襲われるリスクを想定した「ジャパンプレミアム」として再保険料を上げることも検討されている。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「これが復興予算か」

  • 東日本大震災の復興予算が、被災地の復興とは無関係な事業に使われていると指摘される問題に、国会と政府がようやく調査に乗り出し始めた。衆院決算行政監視委員会の平理事(自民)は、「25年も増税して財源をつくるのに、不適切と思える事業が多い」と指摘する。
  • 企業の設備投資を国が一部負担する「国内立地推進事業費補助金」2950億円について、経産省は被災地と取引があるとの理由で中部や近畿の会社を補助対象としたと説明。岩手、宮城、福島の被災3県には全体の1割未満しか事業費が支出されなかった。沖縄の緊急輸送道路整備や、刑務所の訓練用小型機械に復興予算が使われた例もある。
  • 不適切な使途がまかり通り理由は、復興財源で「被災地再建」に加え「日本再生」にも取り組む、と政府方針に明記したため。説明を求められた官僚は、「日本再生に向けた政府方針に沿って使っている」の一点張りに終始する。これに対し、与党側からは、腰の引けた対応も目につく。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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