2012.09.21 fri

新聞1面トップ 2012年9月21日

新聞1面トップ 2012年9月21日


【リグミの解説】
 
解決困難な「二項対立」
原発のサードビュー(さまざまな見方・考え方を客観的に俯瞰する視点)を「見える化」するひとつの手法として、2軸のマトリクスの活用が考えられます。9月15日の「リグミの解説」で、横軸に「原発賛成―原発反対」、縦軸に「経済と生活を優先―安全と安心を優先」を使用しました(参照:9月15日解説)
 
この縦軸は、原発論議の対立軸の基本になっていると思います。脱原発派は「安全をないがしろにしては安心して暮らせない」と言い、原発推進派は「原発がなければエネルギーコストが上昇し経済が成り立たない」と言います。一方で、「安心して暮らしたいが、生活が困窮するのも困る」と考える人は、立場を決めかね、この対立軸の中間に立ち止まっています。
 
「中間うろうろ派」の出番
でも、中間のあたりにうろうろしていては、この難しい課題を解決することはできません。「立場」をはっきりさせ、進む方向をはっきりさせる必要があります。そこで、「中間うろうろ派」は奇策を思いつきます。脱原発派と原発推進派の両方に「安全・安心と経済・生活が、同時に成り立つ方法を考えてくれ」と提案。そして、より魅力的で説得力のある方に1票を投じる、と約束します。
 
ここで「中間うろうろ派」は、優柔不断で日和見、傍観者的で無責任な立場を捨て、積極的に2つの派閥に働きかけます。「原発賛成―原発反対」は、さまざまな理由があって選択された立場なので、簡単には折り合えないもの。それでも、「経済と生活を優先―安全と安心を優先」という一番基本的な相違点で、何らかの妥協点を探れれば、現実的な解決の方向性を定めることができます。
 
「二項同体」の伝統
これは実は、日本人の伝統的な知恵です。「白黒」「善悪」をはっきりさせる西洋的な「二項対立」に対して、日本人は昔から「二項同体」ともいうべきアプローチを取ってきた、と編集工学研究所の松岡正剛さんは言います。古くは中国から漢字を輸入し、それを和語の「かな」と融合して、独特の文字文化を作った例。明治維新以後の和洋折衷の建造物や料理、生活習慣など。
 
今日の日経新聞の1面トップは、トヨタがハイブリッド車(HV)を倍増させるという記事です。HVは、ガソリンと電気という「対立軸」を同時に成り立たせた「いいとこどり」の産物で、「二項同体」の典型ともいえます。HVが登場したとき、欧州自動車メーカーは、どこも相手にしませんでした。それが今や年産120万台となり、年産150万台の独BMWに迫る勢いです。
 
トヨタをはじめとする日本車は、「クオリティー」と「コスト」は「二項対立」するものというのが常識であった1970~80年代に、燃費が良く、故障せず、質感も高く、しかも安いクルマを大量に作り、世界市場を席巻していきました。「二項同体」は、日本のお家芸であり、伝統ともいえます。
 
新しい「ソフトパワー」
賛成派と反対派が歩み寄れない原発問題。領土問題で揺れる日中関係と日韓関係。日本は今、内も外も「二項対立」の嵐が吹き荒れています。ここは「二項同体」の伝統を復活させる時です。しかし、知恵の発揮の仕方は、昔と少し違います。
 
「中間うろうろ派」が立ち上がり、「当事者」となって対立する2つの立場それぞれに徹底して耳を傾け、理解と共感を示す。そして、そこから見えてくる第3の道を一緒に考えていく。「説明責任」や「見える化」を徹底し、プロセスをオープンにします。土俵のルールを明示し、誰もが理解納得できる客観的な審判を心がけます。
 
争い事の現場で、徹底したチームプレイで、こうした創意工夫を積み上げていけば、21世紀の今にふさわしい「二項同体」が見えてくると思います。それはきっと、グローバルな価値をもつ日本の新たな「ソフトパワー」になっていくでしょう。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事】 「漢字書く力衰えた」66%

  • 文化庁は20日、「国語に関する世論調査」を発表した。全国の16歳以上の男女2069人から回答を得た。電子メールなどを使うことで「漢字を正確に書く力が衰えた」と感じている人が66.5%に上った。10年前より25.2ポイント増えた。
  • 年代別で「漢字書く力が衰えた」と回答した人の割合は以下の通り。16~19歳=48.7%、20代=74.9%、30代=77.6%、40代=79.5%、50代=77.1%、60歳以上=55.6%。
  • 「手で書くのが面倒」と感じている人が42.0%(10年前の10.1ポイント増)、「直接会って人と話すことが面倒」と感じるようになった人も18.6%(同7.3ポイント増)だった。文化庁は、「こうした傾向はさらに広がることが確実で、子供が日本語能力を身につける上で深刻な課題だ」と危機感を募らせている。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事】 日本製品の税関検査強化

  • 中国の税関が、日本製品の通関手続きで検査を強化し始めた。尖閣諸島の国有化に反対している中国が、「経済制裁」を始めた動きとみられる。
  • 天津港の税関は19日、日本企業に対して「日本国を原産とする製品について検査率を上げる」と通告してきた。対象品目や上昇率は「検討中」という。理由は明らかにしていない。
  • 北京に近い天津港は、北部の中心的な港で、中国に進出する日本企業の部品などの調達に遅れが出るおそれがある。荷物の取扱量がさらに多い上海や広東省の港に広がれば、生産への影響は増す。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事】 シャープ、インテル提携交渉

  • シャープが、米インテルと資本提携に向け交渉を進めていることが分かった。インテルがシャープに300億円超を出資する方向で協議している。早ければ、10月にも合意したい考えだ。
  • インテルはパソコン向けMPU市場をほぼ独占しているが、スマートフォンやタブレット端末向け半導体では、韓国サムスンや米クアルコムの後塵を拝している。一方シャープは、最新鋭の中小型液晶パネルやスマートフォンなどの分野で高い技術を持つため、インテルは自社製半導体を使ったスマートフォンなどの協業相手として有望視している。
  • 経営再建中のシャープは、台湾の鴻海精密工業との資本・業務提携交渉が難航しており、新たな出資先を模索している。ただ、鴻海との交渉も継続する方針で、インテルとの提携実現には不確実性も残る。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事】 ハイブリッド車倍増

  • トヨタ自動車の2012年のハイブリッド車(HV)の生産が、120万台と前年の2倍になる見通しだ。これは他社の全生産台数にも匹敵する規模だ。
  • トヨタのHVの取組は以下の通り。量産セダン「カローラ」にHVモデルを追加、高級車「レクサス」の全シリーズにHVモデルを設定、高級車「クラウンマジェスタ」をHV専用モデルに変更、タイに続きインドネシアでもHVの組み立てを検討。
  • HVの電池やモーターは、電気自動車や次世代の燃料電池車にも活用できる基幹部品であり、量産化しコストを下げれば、エコカー開発全般で優位に立てるとみられる。トヨタの技術を獲得するために、米フォードモーターや独BMWもHVに歩み寄っている。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事】 3党合意、破棄は1人

  • 民主党、自民党、公明党は、3党合意で、消費増税法を成立させた。ただ、増税は最終的には来年秋ごろに閣議で決定される見通しだ。「次の首相」が、消費増税の最終決定権を握る。3党合意について、民主党の代表選候補者と自民党の総裁選候補者、計9人のうち、真っ向から反対するのは、民主党・原口氏。民主党代表に選ばれれば、破棄する考えだ。
  • 他の8人の候補は、3党合意を認めるが、温度差がある。民主党の野田氏、自民党の町村氏、石原氏、林氏は「堅持」。一方、民主党の赤松氏、鹿野氏と自民党の安倍氏、石破氏は、「条件付き容認」だ。自民党の安倍氏と石破氏は、努力目標の「景気条項」を厳格にとらえ、デフレが続いたり、税収が見込める状況でなければ、増税を見送る考えだ。民主党の赤松氏と鹿野氏は、低所得者対策として、生活必需品などを対象とした軽減税率の導入を提唱している。
  • 消費増税法成立前は、国会議員の定数削減などの「身を削る改革」の必要性が語られてきたが、9候補による「身を削る改革」の論調は低調だ。私たちの1票が、「次の首相」を決める。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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