2012.09.16 sun

新聞1面トップ 2012年9月16日

新聞1面トップ 2012年9月16日


【リグミの解説】

2つの騒乱
昨日の新聞は、イスラム教の預言者ムハンマドを侮辱する米映画への抗議行動が、中東イスラム圏からアフリカ、アジア、欧州にも広がっていることを大きく報じました。抗議対象も、米大使館から英独大使館にも及び、「反米」が「反米欧」になる様相です。

そして、本日の読売、朝日、毎日、日経の各紙はそろって、1面トップで中国の反日デモを報じています。1日のデモとして、1972年の日中国交正常化以来、最大規模といわれ、中国各地で抗議行動が過激化し、日系企業や店舗への破壊行動が続いています。日経新聞は、日系工場への攻撃は過去にあまり例がない、と驚きをもって報道しています。

この2つの騒乱は、問題の背景も、発生地域も、当事国もすべて違います。それにもかかわらず、驚くほど似ている感じがします。反米デモも反日デモも、インターネットでデモの呼びかけがあり、同時多発的に拡大しています。さらに、記念日や公式行事などに絡めて、デモが過激化することが懸念されるています。反米活動は、イスラム教の金曜礼拝の影響が指摘され、反日活動は、満州事変の発端となった柳条湖事件の発生日となる18日に、さらに過激化する懸念があります。

そしてどちらのデモも、抗議行動の矛先が、今後どこに向かうことになるかわからないことが、一番やっかいな点です。デモ参加者の本当の「思い」はどこにあるのか、そのことが問われています。

デモの本質
反米デモは、預言者ムハンマドを侮辱する映画に抗議する意図があったのでしょうが、それならば映画製作者を非難すれば良いものを、なぜ米国政府が攻撃対象となってしまうのでしょうか。同様に、尖閣諸島の国有化に抗議するのであれば、反日デモは日本政府にのみ向けられれば良いものを、なぜ日本料理店や日本車や日系工場が襲撃されてしまうのでしょうか。

同じデモという形の抗議行動でも、労働組合の賃上げ交渉や、薬害被害者が国に救済を訴える行動などは、活動の大義と具体的な要求内容が一致しており、目標達成に向けて軸をぶらさずに進みます。

歴史的に大きな成果を上げたデモとして記憶されるのが、マハトマ・ガンディーのインド独立運動と、マーティン・ルーサー・キング牧師が米国の黒人差別撤廃を求めた公民権運動です。どちらも巨大なうねりとなった抗議活動でしたが、非暴力と調和を志向していたことにおいて、見事に一致していました。

「対話」の始まり
デモは、共通の「思い」をもった人々が自主的に集い、自由に意思表明し、抗議行動をするという現象です。しかしデモの本質は、示威と破壊にはありません。むしろその逆です。デモが暴徒化したとき、デモの大義は汚され、破壊されます。共通の「思い」をもった人々が結託し、抗議対象に理不尽な攻撃を加えた時、デモは理念を失うのです。


デモが本当に効果を発揮する大前提は、非暴力です。そして、誰に対して何を要求するのかという軸をぶらすことなく、静かな意志で、高邁な理念達成に向け、忍耐強く活動する。そのことで、はじめてデモは、所期の目的を達成しえる行為となります。なぜなら、非暴力の高邁な行為は、かならず傍観者の共感を得るものとなり、やがて反対者の耳にも真摯に届くものとなるからです。

そこから、本当の「対話」が始まります。


(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事】 中国デモ、日系企業襲う

  • 日本政府による尖閣諸島の国有化に抗議するデモが15日、中国の40都市以上でで行われ、数万人が参加した。1日の反日活動としては、1972年の日中国交正常化以来、最大規模となる。
  • 主なデモ発生都市と人数、被害は以下の通り。北京=1万人以上、青島=数万人規模・日系スーパーで略奪・日系工場に乱入、東莞=最大3千人規模・日本料理店襲撃、長沙=3千人以上、重慶=1千人以上、昆明=千人以上。
  • インターネットでは、16日と18日(満州事変の発端となった柳条湖事件が起きた日)にもデモが呼びかけれており、さらに拡大する恐れもある。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事】 日系企業襲われる

  • 日本政府が尖閣諸島を国有化したことに抗議する中国の反日デモは15日、約50都市に広がった。
  • 青島のパナソニック工場がデモ隊に放火された。イオン黄島店では、デモ隊がエレベーターを破壊し、約2億元(約24億円)の店頭在庫の大半を略奪または破壊した。長沙市では、平和堂・五一広場店にデモ隊が押し入り、ガラスを割り、商品を破壊し、店前の建材に放火した。
  • 北京では2万人以上がデモに参加。日本大使館の館内に押し入ろうとするデモ隊を、中国当局は武装警察を動員し阻止した。しかし、地方では日系企業への破壊行動は黙認された。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事】 中国反日デモ放火、略奪

  • 日本政府が尖閣諸島を国有化したことに抗議するデモが、中国国内の50都市以上で行われ、6万人以上が参加した。1日当りのデモ参加人数や発生都市数では、1972年の日中国交正常化以来、最大規模となる。
  • 青島のデモには数千人が参加し、多くが暴徒化。日系電機メーカーの工場に放火した。ジャスコ黄島店では、デモ隊が店舗を破壊し、商品を略奪した。長沙の平和堂でも、デモ隊が暴徒化し、店内に乱入し商品を略奪、店前で放火した。蘇州では、日本料理店など約40軒が襲撃された。
  • 18日は満州事変の発端となった柳条湖事件の発生日にあたるため、デモがさらに大規模になる可能性が高い。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事】 日系企業を破壊・略奪

  • 日本政府による尖閣諸島の国有化に抗議するデモが15日、少なくとも十数ヵ所の主要都市で行われた。50都市以上でデモが発生し、8万人以上が参加したという情報もある。
  • 日系企業に被害が相次いだ。青島と蘇州のパナソニック工場にデモ隊が乱入した。青島のトヨタ販売店が放火され、ほぼ全焼した。中国全土の多くの販売店で、車両破壊の被害が発生した。青島の開発区にある複数の日系企業が放火などの被害に遭った。日系工場への反日デモによる被害は、過去にあまり例がない。
  • 中国政府はデモを一部容認する姿勢を示し、中国メディアも日本批判を展開。デモ参加者の行動は過激化しやすくなっている。16日以降も、各地で反日デモの呼びかけがあり、日本企業の中国事業への悪影響が広がるのは避けられない情勢だ。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事】 復興予算、原子力ムラに

  • 政府の2012年度予算の復興特別会計が、復興と直接関係ない「原子力ムラ」の事業に使われていた。高速増殖炉「もんじゅ」などを運営する独立行政法人・日本原子力開発機構の核融合エネルギー研究費に42億円が計上されていることが判明した。
  • 同予算が復興と無関係との指摘に対して、原子力機構は「被災地の研究拠点を通じて、復興を支える技術革新を促進できる」と強弁する。文科省も「被災地の産業振興だけでなく、日本全体の復興につながる」と説明。
  • 文科省は、2013年度の復興特別会計でも、48億円の研究費を概算要求している。背景には、復興を口実にした各府省による事業予算の取り合いがある。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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