2012.09.03 mon

新聞1面トップ 2012年9月3日

新聞1面トップ 2012年9月3日


【リグミの解説】
時代ごとに、中心となる「主義」や「理論」があります。米ソが二大陣営として鋭く対峙しあった冷戦時代は、「自由主義」を標榜する西側と「共産主義」を謳う東側が、互いの勢力拡大を図り、一触即発の状態が続きました。極度の緊張状態の中で、米国の戦略の背景にあったのが「ドミノ理論」でした。

「ドミノ理論」は、ある国が共産主義化すれば、ドミノ倒しのように近隣諸国が次々と共産主義化してしまうという考え方を指します。米国は、この考え方でベトナム戦争に突入していきました。泥沼の戦争の末に、米国が支援した南ベトナムは敗れ、共産主義の北ベトナムが南北を統一しました。しかし、東アジアにおける共産主義のドミノ倒しは起きませんでした。

ドミノ理論は、まったく間違っていたわけではないと思いますが、想定された理屈通りには進みませんでした。にもかかわらず、ドミノ理論的な考え方は、今の政治の世界でも根強く存在しています。「尖閣諸島問題で中国に弱い対応をしたら、どんどん押し込まれる」という捉え方も、形を変えたドミノ理論だと思います。

今日の朝日新聞と毎日新聞は、東京都が尖閣諸島を購入する前提で現地調査をおこなったことを、1面トップ記事で報じています。東京都には300以上の島があり、一番遠方の南鳥島は約1900キロ離れています。離島の行政に慣れた東京都が、南鳥島と同じぐらいの直線距離の尖閣諸島を購入するという選択肢自体は、ありえると思います。ただ、その動機は、よく見極める必要があります。

仮に石原都知事の考えの背景に、「中国の海洋への拡大を水際で阻止しないと、とめどなく膨張する」という「ドミノ理論」があるとしたら、要注意です。なぜなら、この理論には少なくても3つの欠点があるからです。1つは「二項対立」を前提にしていること、2つ目は「恐れ」の心理があること、そして第3に「作用と反作用の法則」を忘れていることです。

「二項対立」は「善と悪」の白黒をつけ、「勝ち負け(Win-Lose)」にこだわるもの。しかし今日の世界は、もっと多様で複雑です。単純な二項対立が行き着く先は、「負け負け(Lose-Lose)」です。「恐れ」の心理は、相手を理解しないとどんどん増幅します。そして相手は「悪の権化」に見えてきます。でも思い切って相手の懐に飛び込めば、相手の本音や等身大の姿が見えてきます。

あらゆることは、「作用と反作用の法則」に従っています。ドミノ理論の最大の欠陥は、このことを理解していないことです。物事は、単純に一方向に進むことはありません。単純な「理論」や「主義」に頼りすぎると、「想定外」のことが次々と起きて、泥縄の対応になっていきます。ドミノ理論的な政治・外交戦略を取るのであれば、「想定外のない想定」を練り上げる知的鍛錬と覚悟が必要です。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事】 谷垣氏、再選険しく

  • 自民党総裁選での谷垣総裁の再選が厳しい。谷垣氏は、社会保障・税一体改革の3党合意が軌道に乗るまでは党首としての責任があると発言し、今国会の会期末(8日)前後に出馬表明したい考えも示している。しかし、谷垣氏を支えてきた石原幹事長は、谷垣氏が出馬すれば支持するとしてきたこれまでの方針を修正し、自らの出馬に意欲を示す。
  • 谷垣氏を支持してきた森元首相は、3党合意を否定する内容の首相問責決議案可決に踏み切ったことを批判し、支持を撤回した。背景には、派閥の領袖やベテランの意向をに配慮してこなかった谷垣氏の党運営への不満がある。中堅・若手議員も、次期衆院選は「党の顔」を代えて臨みたい、という意見が強い。
  • 谷垣氏は出馬に必要な推薦人20人は確保できる見通しだが、出身派閥の古賀派会長の古賀元幹事長との関係が冷え込んでおり、支持を取り付けられない可能性もある。谷垣氏が再選されない場合、野田首相と谷垣氏が進めてきた民主、自民、公明の3党協調路線にも影響しそうだ。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事】 尖閣、都が洋上調査

  • 尖閣諸島の購入を目指す東京都が2日、洋上から現地調査を実施した。都職員、不動産鑑定士、学者ら25名からなる調査団が、チャーターした海難救助船で、魚釣島に到着した。小型船やゴムボートに分乗し、海岸線や陸地を目視し、動植物の生態調査、海水採取、および大気測定を行った。北小島と南小島も調査し、石原都知事が主張する漁船の避難場所の設置の可否を探るため、入江を調査した。水深が約3メートルであることも確認した。
  • 都は、土地購入の際に価格を決めるために現地調査を原則としている。10月末までに不動産鑑定を終え、11月に購入価格を決定し、12月の都議会で購入予算案の提案を目指す。
  • 一方、野田政権は、地権者に3島の購入金額として約20億円を提示し、交渉は大詰めを迎えている。「野田政権のうちに国有化する」と閣僚の一人は語り、早期の国有化に踏み切りたい考えだ。石原都知事が国有化の条件とする漁船の避難港設置には応じない方針だ。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事】 都、尖閣を洋上調査

  • 東京都の調査団が2日、尖閣諸島の購入に向け、約9時間半にわたり周辺海域を現地調査した。調査したのは、都が購入対象とする魚釣島、北小島、南小島の3島。政府の上陸許可が下りなかったため、小型船とラバーボートで各島に接近した。調査団は、海洋施策専門家や不動産鑑定士、都や石垣市職員ら計25名。
  • 不動産鑑定のため、島の平野部の割合や海岸線の地形を確認した。取得後の活用策の検討のため、動植物の生息状況の観測、海水位の温度測定、沿岸部の水深調査、および漁船の避難候補地探しをした。
  • 調査団長の坂巻・都尖閣諸島調整担当部長は「予定通りの調査はできた。購入価格の算定にしっかり役立てたい」と話す。石原都知事は、10月予定の再調査に同行する意向を示している。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事】 セブン&アイ大型店加速

  • セブン&アイ・ホールディングスがショッピングセンター(SC)の出店を加速する。スーパーのイトーヨーカ堂を核テナントに50以上の専門店を組み合わせた商業施設「アリオ」を、首都圏を中心に開く。現在の13店を2015年までに20店強に増やす。スーパー事業が頭打ちとなる中、SCのアリオ部門は増収増益が続き、収益の柱に育っている。
  • 飲食やサービスなど多彩な店舗が入るSCは、幅広い消費者を集客でき、外部テナントからの安定収入もあるが、2007年の大型店の出店規制強化以降、出店は低水準だった。だが、製造業の工場閉鎖なえどで出店余地が広がり、自治体が制度の運用を緩めて誘致する事例も目立つ。
  • 国内最多の120のSCをもつイオンは、ここ数年2~4店にとどまっていた出店ペースを大幅に引き上げる。各社は、今後の規制緩和と消費増税後の競争激化をにらみ、好立地で収益性の高いSCの開発を急いでおり、有望な出店候補地の争奪戦が過熱しそうだ。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事】 2100年、東京の人口半減

  • 東京都や都内自治体などでつくる有識者研究会は、東京都の人口が2100年には713万人に減少するとの推計を発表した。2010年の国勢調査で1316万人だった人口は、2020年の1335万人をピークに減り始め、88年後の2100年には半減(2010年の45.8%減)する。
  • 700万人強の人口は、太平洋戦争直前の1940年頃と同程度だ。研究会は「働き盛りの世代が減り、自治体財政は厳しくなる。少子化対策と高齢者福祉の充実が大きな課題だ」と指摘する。
  • 推計は、都への転入者数が転出者数を上回る傾向が続く前提だが、都の合計特殊出産率(女性1人が生涯に産む子どもの推定人数)が1.12という全国最低レベルのまま回復しない前提で試算した。


(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/


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