2012.08.18 sat

新聞1面トップ 2012年8月18日

新聞1面トップ 2012年8月18日


【リグミの解説】 
NHKの連続テレビ小説「梅ちゃん先生」の今朝の回で、梅ちゃん先生の姉の松子が突然産気付き、産婆さんと一緒に初の出産に立ち会った梅ちゃん先生こと梅子。産後に夫のノブに「赤ちゃんね、早くこの世界に出てきたいって、言ってた気がする」と語りました。「ふ~ん、そんなもんかな。この世も結構たいへんなんだけどな」と応じるノブに、梅子は「それがいいのよ」と答えます。


赤子は、お腹が減った、おむつが気持ち悪い、暑い、寒い、と言えません。だから、ちょっとでも不快なことや悲しいことがあれば、泣いて訴えます。でも、お母さんやお父さんが対処をしてくれれば、すぐに泣きやみます。不快感からくる怒りも不安も悲しみも、原因が取り除かればたちまち消え、欲求が満たされた喜びに包まれるからです。しかし年をとると、ことはそう簡単でなくなります。

今、韓国と中国が日本に対して、領土問題で攻勢をかけています。日本国内は、驚きと戸惑い、さらには不快感と怒りで事態の推移を見守り、政府の毅然とした対応を求めています。野田首相も、「(尖閣諸島への不法侵入に対して)法律に則り厳正に対応する」「(竹島問題の国際司法裁判所への共同付託に韓国は)堂々と応じて欲しい」といった言葉を発しています。

領土問題の背景には、海洋資源などの権益を求める計算づくの国家戦略があります。今朝の東京新聞がトップに持ってきた特集記事は、中国が官民一体となって周到に海洋権益を拡大する様子を伝え、膨張する中国の脅威を体感させます。しかし領土問題などの外交問題には、国家戦略とは別次元の動機も隠されています。過去のいきさつなどに納得できない、不快な思いをさせられた、ひどい仕打ちを受けた、といった感情的なしこりが、怒りとなって表現される、という側面もあります。韓国大統領による竹島訪問には、こうした背景が色濃くあります。

自我が芽生える前の赤子の怒りは、純粋に生理的なものです。だから引きずりません。怒りは命の表現であり、身を守る術です。しかし、大人たちが表現する怒りは、もっとやっかいです。怒りは他者を巻き込み、集合的な広がりを見せます。私たちはそれを「世論」と呼びます。しかしその実態は「社会的な感情」と呼ぶべきもので、「論」と呼べるような冷静かつ大局観のある意見・考え方を練り込んだものではありません。

さらにやっかいなのは、怒りを燃料とする「社会的な感情としての世論」は、何世代にも渡って継承される、ということです。日本が中国と韓国との関係で、常に難しいかじ取りを求められる原因もここにあります。2世代から3世代前の戦争の記憶が、今の現役世代に継承され、対日政策に多大な影響を与えている現実があります。日本人の大半は、過去の戦争を「被害者」の目線で見ていますが、中国、韓国の国民の大半は、自分たちこそが「被害者」であり、日本は悪名高き「加害者」である、と見ています。

歴史の負の遺産を引きずる東アジア。国家同士で政治的に合意し、正式に調印を交わし、解決済みとされた問題が、何度もぶり返すのはなぜか。それは「怒りの連鎖」が収まっていないからです。この世界がたいへんなところでも、梅ちゃん先生が「それがいいのよ」と言えるのは、さまざまなトラブルに見舞われる人々を救済する、生きた「知恵」を身に着けてきたからです。現実の政治は、朝ドラのようなわけにはいきませんし、「怒りの連鎖」が赤子のように簡単に収まる見込みもありません。それでも、私たち一人ひとりの中には、生活に支えられた「知恵」があります。怒りに怒りで答えない「大人の対応」という知恵が。


讀賣新聞

【記事】 尖閣14人を強制送還

  • 政府は17日、尖閣諸島の魚釣島への不法上陸で入管難民法違反容疑で逮捕された香港の活動家ら14人に、同法に基づき国外退去を命じ、強制送還した。刑事処分は見送った。
  • 入管当局が中国大使館と協議した結果、活動家ら7人は民間機の香港エクスプレス便で香港に送還、ほか7人は不法上陸に使用された抗議船「啓豊2号」で退去させた。
  • 活動家らの逮捕により、中国各地で反日デモが拡大し、日中関係が悪化することを避けるため、政府は事件の早期解決を図った。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事】 日中韓、対立の悪循環

  • 東アジア外交の「負の連鎖」が止まらない。韓国の李大統領の竹島上陸を機に日韓関係は大きくきしみ、尖閣諸島をめぐる日中の対立も先鋭化する。東アジア重視を掲げて2009年に誕生した民主党政権だが、ナショナリズムの高まりを背景に、周辺国との関係は混迷を深める。
  • 日本政府は17日、竹島問題をめぐり国際司法裁判所(ICJ)への共同提訴を韓国側に提案することを決めた。しかし韓国側は、「一顧の価値もない」と反発した。野田首相は、李大統領の一連の言動に対して「遺憾の意」を示し、ICJへの共同提訴を韓国側に提案する大統領宛の親書を出した。日韓両政府は、「未来志向の関係構築」を目指してきたが、双方の対立感情が高まっている。
  • 戦後のアジアを引っ張った日本の国力が落ち、中国が台頭する国際環境の激変は、日中関係をゆがませる。「中国はまだまだ力で押してくる」(日本政府関係者)との警戒感がある一方で、国内世論を背景に双方が引くに引けない状況になれば、対立の悪循環が続く。「双方がエスカレートしないよう、どこかで線を引かないといけない」と外務省幹部は危機感を募らせる。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事】 日韓通貨融通縮小へ

  • 政府は17日、韓国への金融支援策として実施している日韓通貨交換(スワップ)協定の拡大措置を見直す方針を固めた。李明博大統領の竹島上陸や、天皇陛下への謝罪要求など、対日批判発言への対抗措置となる。
  • 安住財務相は李大統領の竹島上陸などについて、「あまりにも礼を失し、看過ならない」と非難。スワップ協定の融通枠を1年に限り130億ドルから700億ドルに拡大する時限措置が10月末に期限切れとなることについて、「厳しい韓国側の経済状況を考慮して手を差し伸べたつもりだった。延長するかどうかを含めて白紙」と述べた。
  • 枝野通産相は、「主権に影響を与える行為を十分に取り締まっていなかったり、大統領みずから行っている」と批判。「我が国の主権にかかわることについて敵対的な対応をしている国との取引に大きなブレーキがかかるのは当然だ」と述べ、韓国や中国との通商・経済関係に影響は避けられないとの見方を示した。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事】 穀物輸入、価格変動を回避

  • 日本の穀物調達は北米に偏ってきたが、干ばつによる相場高騰や調達リスクを回避するため、大手商社は独自の調達網を構築する。
  • 伊藤忠商事は、アフリカのモザンビークで食用大豆の生産を現地農家などに委託し、早ければ2014年に収穫した大豆を日本の食品メーカー向けに輸入する。食品メーカーには既にサンプル品を出荷し、品質検査を進めている。基準に合致した品種が見つかり次第量産に入る予定だ。丸紅は、ブラジルでの大豆の集荷を増やす。豊田通商もブラジルでの調達を増やす。
  • 現在の日本の食用大豆の輸入量は年間70万トンであり、9割を北米に依存する。伊藤忠商事は、2022年以降に年間10万トンをモザンビークから輸入することを目指す。これは日本の輸入量の14%に相当し、大豆調達先に分散化に寄与しそうだ。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事】 権益拡大へ中国加速~地殻変動-2

  • 「美しい三沙を愛し、海洋国土を守れ」。南シナ海に浮かぶ中国南部・海南島の街中には、こうした標語の横断幕が目立つ。「三沙」とは、中国とベトナムとフィリピンが領有権を争う西沙、南沙、中沙の3諸島を指す。
  • 中国は、共産党指導部の方針が決まると、一気に目標に突き進む。「3諸島の行政組織を三沙市への格上げ」「ベトナム近海の石油・ガス田開発への外国企業の入札呼び掛け」「人民解放軍による三沙市の警備区の設置」など、官民一体で領土・領海を「死守」するために、矢継ぎ早に強硬策を繰り出す。
  • 三沙の漁師の8割が民兵組織に入り、射撃訓練に参加。「海上民兵」の身分でベトナムの漁民と対峙する。海南省の漁船30隻が南沙諸島で試験操業したあと、ミスチーフ礁(中国名・美済)に入り、既成事実となった領有権をアピールした。ここは元は、フィリピンが抑えていたが、中国が1995年に軍事拠点を設け、実効支配を開始した。今後の日中関係やアジア情勢次第で、中国が尖閣諸島に対しても、官民一体の強行策を取る可能性は大いにある。


(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/


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