2012.08.06 mon

新聞1面トップ 2012年8月6日

新聞1面トップ 2012年8月6日


【リグミの解説】 ロンドンオリンピックでの日本選手の活躍が続いています。朝日新聞は「フェンシング男子フルーレ団体の決勝進出」、毎日新聞は「競泳400メートルメドレーリレーで男女がメダル」を1面トップにもってきています。

メダル圏外と見られた男子競泳チームですが、大奮起しました。日本競泳界を引っ張ってきた北島康介は今大会メダルを逃していました。男子競泳主将の松田選手は、北島選手を除く3人のリレーメンバーに「康介さんを手ぶらで返すわけにはいかないぞ」と話していたことを試合後のインタビューで明らかにしました。入江選手は個人でメダルを取ったときに、「競泳は8日間において27人で1つのリレーをしているようなものなので、最後の、男子のメドレーリレーの自由形の選手がタッチするまで27人のリレーは終わらないです」と語っていました。

フェンシング男子フルーレのメンバーの三宅選手は決勝戦前に、北京大会銀メダリストの太田選手や同学年の千田選手の世代から「未来に引き続く責任が僕にはある」と語っていました。そして、銀メダル獲得後のNHKの番組で男子フルーレ団体チームの特徴を聞かれた千田選手は、「団結力ですね!」と即答しました。それは、各自の世界ランキングだけを見れば、到底決勝に残れるチームではなかったことを自覚しての発言でした。

体操男子で個人総合優勝を果たし、種目別の床演技でも銀メダルを獲得した内村航平選手も、北京大会で中国に敗れた団体戦の雪辱を果たすために、ロンドン大会の照準を団体戦金メダルに当て、チームメンバーを牽引してきました。団体は力を発揮しきれず銀メダルに終わりましたが、ロサンゼルス大会の個人総合金メダリストの具志堅幸司さんが「天才」と絶賛する内村選手が、今大会でチームの優勝を最優先に取り組んできたことも印象的でした。

オリンピックは、数でいえば個人競技が圧倒的に多いわけですが、個人以上の力量を団体戦で発揮する日本人選手は、世界的にも珍しいアスリートたちなのではないかと思います。もちろんこれは、スポーツだけの世界でなく、日本社会の際立った特徴であると言えます。例えばトヨタ自動車は、カンバン方式(ジャストインタイム生産システム)という、まったく新しいビジネスモデルを提示し、世界の製造業を大きく変革しましたが、このトヨタのものづくりの思想の根底にあるのも「団体戦」です。工場の生産工程で、「前工程」と「後工程」は連携せず、それぞれで在庫を持つのが当たり前であった欧米のメーカーの発想に対して、トヨタはすべての工程がひとつのチームとなり、ひとつでも欠品や不良が生じれば、工場のラインすべてが停止するやり方に挑みました。この逆転の発想の結果、トヨタは世界一級の規模、利益、品質を達成しました。

卓球女子も、個人では惜しくもメダルを逃しましたが、団体では見事決勝戦に進出しました。日本選手は、これからもたくさん出場します。それぞれの個人競技で精いっぱい頑張って欲しいと思います。そして団体戦がある競技では、ひきつづき日本人のチームワークの真髄を発揮してもらいたいと思います。

そしてこんなことを言えば「鬼が笑う」かもしれませんが、未来のオリンピックにも思いは馳せます。もし、2回目の東京オリンピックが実現したら、新しく追加したい競技は何か。多くの人が心ひそかに想定しているのが、「駅伝」ではないでしょうか。オリンピックの花形の陸上競技の最後を飾るのは男子マラソンです。その陸上競技の舞台に、世界中の国別の駅伝競走が加わったら、どんな世界が展開するでしょうか。「タスキをつなぐ」駅伝のチームスピリットを体現する各国のアスリートたちは、きっと世界中の人々に新鮮な感動と共感をもたらすでしょう。


讀賣新聞

【記事】 首相問責あすにも

  • 自民党は、社会保障と税の一体改革関連法案の参院での採決を前に、野田首相から衆院解散・総選挙の確約が得られない限り、参院に首相の問責決議案を提出する方向で検討に入った。同時に、衆院にも内閣不信任案を提出する方向だ。
  • 自民党首脳は読売新聞の取材に対して、「首相に求めているのは、法案の早期採決ではなく、採決の前に国民に信を問うことを約束することだ」と語った。これは、問責・不信任案提出を見送る条件が「早期採決」から「早期解散」に引き上げられたことを意味する。
  • しかし、野田首相は3日の内閣記者会のインタビューで「(解散日程について)明示的なことは寝言でも言うつもりはない」と明言しており、自民党の解散要求には応じない意向のため、自民党による問責・不信任決議案の提出は不可避の情勢だ。政局は、一体改革関連法案の成立が危ぶまれる事態に発展してきた。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事】 フェンシング、銀以上

  • ロンドンオリンピック第10日の5日、フェンシングの男子フルーレ団体で、日本は準決勝でドイツを下し、銀メダル以上を確定させた。この種目では初のメダルとなる。
  • 団体戦は1チーム3人(補欠1人)による総当たりだ。千田健太、三宅諒と共に稼ぎ出した3ポイントのリードで迎えた最終試合で、エース太田雄貴は逆転され、もがき苦しんでいた。残り9秒。太田は2点のリードを許していた。崖っぷちで1点差に詰め寄り、残り2秒の攻防でついに追いつき、1本勝負の延長戦に持ち込んだ。攻撃権が目まぐるしく入れ替わる攻防の中、ビデオ判定で太田の攻撃の有効性が認められた。ウクライナ人のマツェイチュクコーチが太田を抱き上げ、喜びを爆発させた。
  • 「団体戦は日本の総合力が試される。勝てば本当の意味で日本のフェンシングが認められる」と太田。千田と三宅は、「太田に頼らずに、自分たちが日本のフェンシングを未来に引き継ぐ責任がある」と語った。その決意通り、決勝進出の原動力となったのは、この2人だった。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事】 競泳メドレーリレー、男子「銀」女子「銅」

  • ロンドンオリンピックは4日、競泳の男子400メートルメドレーリレーの決勝が行われ、日本(入江陵介、北島康介、松田丈志、藤井拓郎)が3分31秒26で銀メダルに輝いた。この種目で日本勢は3大会連続のメダル獲得となり、銀メダルは過去最高。
  • 劣勢が伝えられ、3大会連続のメダル獲得に黄信号がともっていた男子400メートルメドレーリレー。競泳主将の松田は、「(北島以外の)3人で『康介さんを手ぶらで返すわけにはいかないぞ』と話していた」と明かした。日本競泳史上、同種目で初の銀メダルを射止め、日本チームの目標であり憧れであった北島への感謝を形に表した。北島の意地と後輩たちの感謝の念がもたらした良質のフィナーレは、感動とともに、「驚き」を見る者に与えた。
  • 5日、体操の男子個人別種目の床運動で、内村航平が15.800点で2位になり、団体総合の銀、個人総合の金に続いて3個目のメダルを獲得した。男子フェンシングのフルーレ団体は、北京大会個人銀メダリストの太田雄貴らを擁する日本が準決勝でドイツを延長戦の末、41-40で破り、イタリアとの決勝戦に進出、銀メダル以上を確定した。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事】 日本車、欧州の提携縮小

  • 日本車メーカーが欧州のメーカーとの提携関係を縮小する。欧州の新車販売は昨秋から前年割れが続いており、部品や完成車供給など足元の販売状況に影響されやすい分野を中心に関係を見直す。日本車の欧州での販売シェアは低く、債務危機の直接の影響は限定的と見られるが、欧州勢の販売不振により、日本メーカーの提携戦略に影響が出てきた。
  • いすゞ自動車は、GM傘下の独オペル目家の乗用車用ディーゼルエンジンを生産しているが、次期型エンジンの開発は打ち切る方針だ。三菱自動車は、仏プジョーシトロエングループ(PSA)への電気自動車「アイ・ムーブ」のOEM(相手先ブランドによる生産)供給を一時停止する。マツダは、PSAからの小型車ディーゼルエンジンの調達を打ち切る。
  • 一方、トヨタ自動車はBMWとの燃料電池車やハイブリッド車などの先端分野での幅広い技術提携は拡大する見通しであり、三菱自動車もPSAとのEVの共同開発などは継続する。環境技術など将来を見据えた先端技術分野では、引き続き日欧で協力関係を広げる方向だ。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事】 国民的議論、反映なるか

  • 将来の原発比率などエネルギー選択で、国民同士が議論して意識がどう変化するかを調べる政府の討論型世論調査(DP)の討論会が、2日間の日程を終えた。この日のテーマは「2030年のエネルギー政策のシナリオを考える」。前日同様、286人(男性192人、女性94人)が、約15人ずつの小グループに分かれて討論した。
  • 参加者は無作為で選ばれたが、あるグループでは15人中13人が将来的に原発ゼロを目指すべきと主張。他のグループでも、原発ゼロの主張が目立ち、全国の意見聴取会と同様の傾向となった。討論を経て、原発依存度を当初考えていた15%から0%に意見変更した参加者が複数いた。
  • 但し政府は、DPや意見聴取会の結果をどう政策に反映するかについては、「さまざまな総合判断」(枝野経産相)としか説明していない。DPでは全体としては原発ゼロを求める意見が多かったが、中には0%から15%に意見を変えた参加者もいる。原発15%を「中立的」と評価する政府が、こうした結果を都合よく抜き出して「民意」とする懸念は消えない。


(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/

【リグミから一言】 今回のDPで注目すべきは、「15%から0%」に変化した人と、「0%から15%」に変化した人がいたことです。この事例だけを取り上げて、全体の傾向に目を向けないのは全体観のない見方になりますので、注意しなければいけません。特に、京新聞が懸念するように、政策決定の事例としてつまみ食いすることは避けなければなりません。その上でここで、こうした意見の変化に注目する理由は、これが「熟議」の果実となる可能性があるからです。

ディベートのように立場を固定して論戦するのではなく、文字通り自分の考えや「主義」が話し合いや知識の獲得を通して熟していくことには、大きな価値があります。なぜなら、国民がそれぞれ、より自分の意見に自信と責任を持てるようになるからです。それは「当事者」としての民意です。社会を覆う空気やムードではなく、社会に対して責任を負える意見=パブリックオピニオンとしての民意です。


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