2014.02.25 tue

2014年2月25日【新聞解説】ウクライナの顔

2014年2月25日【新聞解説】ウクライナの顔


【リグミの解説】

ウクライナの政変
ウクライナのヤヌコビッチ政権が事実上崩壊しました。激しい反政府デモの中、大統領はヘリコプターで首都キエフを脱出したようです。本日の読売、毎日、日経、産経、東京の5紙が社説を掲げています。特徴的な主張を比較します。
 
<読売新聞> ウクライナ政変 安定回復へ欧露の責任は重い
・ ソチ冬季五輪の成功で、旧ソ連圏の経済的再統合に弾みを付けたいプーチン大統領は、冷水を浴びせられた思いではないか。プーチン氏が、ウクライナに影響力を行使しようとして、過去に行った天然ガス供給制限のような強硬措置をとるようなことがあれば、混乱は深刻化するだけだ。自重を求めたい。EUは、事態悪化を防ぐため、ロシアとも調整しつつ関与すべきである。
 
<毎日新聞> ウクライナ 同じ過ちを繰り返すな
・ ティモシェンコ元首相は、内紛や経済政策の行き詰まり、ロシアとの対立などで自壊し、前回の大統領選でヤヌコビッチ氏の当選を許す結果になった。国民は当時の混乱を忘れておらず、その手腕に懐疑的な見方も根強い。同じ過ちは許されない。新政権に参加する政治勢力は足並みをそろえて、国内の和解と国家経済の再建に早急に取り組んでほしい。
 
<産経新聞> ウクライナ 分裂回避へ欧米は支援を
・ プーチン政権は、逆効果だった支援策のことを教訓とし、不当な介入はやめるべきだ。自由と民主主義、市場経済の欧州を志向するか否かは独立国の選択である。ロシアの危機感を抑える外交努力も忘れてはなるまい。欧州へ舵を切っても対露関係は安定的に保つ枠組みが作れないものか。
 
<日経新聞> 混迷ウクライナの安定急げ
・ ウクライナ混乱の責任の一端はEUとロシアにもある。いずれもウクライナを自陣に引き寄せるため、綱引きを演じてきた。独立国家の将来を決めるのは国民自身である。EUもロシアもまずはウクライナの混迷打開を優先し、民主的な大統領選の実施を含め、安定的な体制移行の実現に協力すべきだ。
 
<東京新聞> ウクライナ政変 国家分裂を懸念する
・ 首都キエフなどでの反政権デモ隊と治安部隊の衝突で80人以上の死者を出し政権を転覆した政変は、事実上の革命といえる。ソ連から独立以来、最大の試練だ。再び親欧米路線が始まる。改革の好機だが極右勢力の台頭は不気味だ。中、西部と東、南部の対立が激化すれば国家分裂の悪夢も否定できない。
 
ウクライナの民族構成
ウクライナにはチェルノブイリ原子力発電所があります。ロシアから独立後は核兵器の放棄をした国でもあります。人口は4500万人で約7割がウクライナ人、約2割がロシア人です。残り1割を10以上の民族で構成しています。
 
ウクライナ人とロシア人の違いは、表面的にはよくわかりません。彼の地の人々が日本人と中国人と韓国人の区別がつかないのと似たことだと思います。しかし、民族の違いは根深い対立の遠因になっているようで、今回の政変も、ロシアを取るかEUを取るかという純粋な政治路線・経済政策の選択だけではなく、民族的アイデンティティーとも深くかかわっているように見えます。
 
ウクライナの教訓
ウクライナがどこに位置するか、地図で即答できる人はどのぐらいいるでしょうか。私はわかりませんでした。たぶん、多くの日本人にとってウクライナの政変は遠い現実だと思います。しかし、その中身を見ていくと、東アジアの現実と似た構造がたくさんあることに気づきます。
 
各紙の社説は、ロシアとEU双方の責任と自重に言及し、ウクライナの独立国家としての主権の尊重を大前提にしています。それは正しいと思います。そのうえで、国家とは何か、民主主義はどうすれば機能するのか、たくさんの犠牲者を出さなければならない現実をどう見ればいいのか、極東の日本にとっても他山の石とすべき課題がたくさんあります。
 
人の顔が見えたとき
地球上で起きている出来事は、どれひとつとして関係ないとはいえない。私たちはそんな時代を生きています。でもそれをどうすれば実感できるのでしょうか。
 
不世出の横綱だった大鵬(納谷幸喜さん)のお父さんはウクライナ人でした。それが縁で、大鵬さんは日本とウクライナの国際交流に貢献しました。このことを今回知り、ウクライナが少し身近になりました。国家を構成しているのは一人ひとりの人間。人の顔が見えたとき、何かが変わる気がします。

(文責:梅本龍夫)



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    http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20140224-OYT1T01131.htm
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    http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20140224-OYT1T01556.htm

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    http://www.asahi.com/articles/ASG2S779DG2SUTFK01D.html
  3. TPP合意先送りへ 日米関税協議まとまらず
    http://www.asahi.com/articles/ASG2S77LDG2SULFA032.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 科学的絞り込み断念 不適地のみ提示 核のごみ処分地
    http://mainichi.jp/select/news/20140225k0000m040142000c.html
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    http://mainichi.jp/shimen/news/m20140225ddm001020180000c.html
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    http://mainichi.jp/select/news/20140225k0000m040137000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. GE、風力で日本再参入 シェア争い激化
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM2401K_U4A220C1MM8000/
  2. デフレ圧力和らぐ リーマン前に近づく
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASFS2402W_U4A220C1MM8000/
  3. 新卒を通年選考 ソフトバンク
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASDD240IG_U4A220C1MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



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    http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140224/plc14022413060006-n1.htm
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    http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140225/stt14022507000000-n1.htm

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



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    http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014022502000104.html
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    http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014022502000103.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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