2013.11.18 mon

新聞1面トップ 2013年11月18日【解説】それぞれの思い

新聞1面トップ 2013年11月18日【解説】それぞれの思い


【リグミの解説】

新聞1面は、特報を大きく掲げ、事実を伝える記事が中心です。その中で、コラムは新聞編集に携わる人物が個人の「思い」を語ることで、新聞に人間味を加えています。本日の各紙コラムを比較し、リグミの解説の視点(思い)を重ねます。
 
<読売新聞「編集手帳」> 遺志は死なない
イラク大使だった奥克彦さんが殉死して10年。「当時、彼ほどイラクの隅々まで駆け回り、人脈を築いた外国人はいない」と伝えています。イラク戦争直後、日本の復興支援策の先頭に立ち、現場主義に徹しました。奥さんの遺志を継ぐ基金が設立され、イラクの小学校1105校に11万冊以上の児童書が贈られたそうです。
 
大使は国家を代表する公人です。その大使が騒乱の国の現場奥深く入り込み、日本の復興支援策を模索した事実は尊いものがあります。この10年で日本を取り巻く国際情勢は激変しました。他国の支援より自国の安全保障を議論する声が大きいのが現実です。そんな中、イラクの子どもたちに児童書を贈りつづけた基金は、故人が今も生きてイラクの隅々を歩き訪ねているようで感慨深いものがあります。
 
<朝日新聞「天声人語」> 地球上の出来事は自分事
「このところ、日本の空は常識を失した感がある」のに、政府が設定した新たな温室ガス効果削減目標の暫定値は低すぎる、というワルシャワでのCOP19(国連気候変動枠組み会議)の批判を紹介。「原発に頼らぬ温暖化対策という『王道』で世界を引っ張る意気込みがほしい」と語っています。
 
東日本大震災の大災害からまだ2年半しか経っていないのに、今度はフィリピンに超大型台風が上陸し、大災害に見舞われました。COP19の会場で「私の兄弟は3日間食べずに遺体を運んでいる。気候の温暖化でこんなスーパー台風が起きる」とフィリピン代表が涙ながらに訴えたそうです。地球上の出来事を他人事にできない時代を生きる覚悟が問われていると実感させられます。
 
<毎日新聞「余禄」> 人類の共有財産
福島県白河市で毎年開かれている中山義秀文学賞の公開選考会の様子を紹介。100人を超す聴衆の前で選考会議をするため、「僕たちの方が審査を受ける思い」と、選行委員の中山龍太郎さんの声を伝えています。「文化というものは地味だし、成果も見えにくい。しかし、人に幸せを実感させてくれる」という「余禄」は結んでいます。
 
昨日、早川書房のSFコンテストの授賞式に参加しました。100名のSFファンが集い、選考委員の講評や、有名作家が登壇しての新作の紹介などに聞きいっていました。作家が自作を語るとき、抑制された熱い思いがにじみ出ます。どんなジャンルの小説でも、自由な創作には文化の誉れがあります。それは作家個人の作品ではなく、出版社、編集者、そしてファンである読者が一緒になって作り上げており、おおげさに言えば人類の共有財産だと感じました。
 
<日経新聞「春秋」> 国民の自立
駐留米軍を違憲とした1959年の「伊達裁判」の顛末を取り上げています。高裁を飛ばして最高裁に上告され、全員一致で覆されました。当時の最高裁長官が裁判の見通しを米側に事前に漏らした記録が米側の公文書で明らかになっていますが、日本側の資料は出てきません。「春秋」は、米側の資料でしか国の重大事を知る術がない理不尽さを、もどかしい思いで伝えています。
 
「伊達裁判」はいろいろな意味で、戦後日本が抱える矛盾の象徴です。憲法9条と自衛隊の併存。それは米国が主導した憲法であり、米国が主導した軍隊(警察予備隊)でした。日米安保が何よりも優先し、米国というリーダーにどこまでも追随する日本は、最高裁長官が司法の独立を軽視した歴史も、米国から学ぶ現実があります。情報公開とは、国民の自立と軌を一にするテーマです。
 
<東京新聞「筆洗」> 魂の声
文科省の有識者会議が小中学校の道徳の教科格上げ提唱について、「子どもを甘く見てはいけない。評価が付く教科になれば、子どもは先生の顔を見て大人の『正解』を答えるようになる」と指摘。教室から本音や異論が消えることの方がこわい、という思いを綴っています。
 
道徳とは何でしょうか。類型的ですが、キリスト教やイスラム教の世界では、「神」の前で身の潔白を証明できるか、「神」が示す大罪を犯していないかが問われます。日本にはそのような宗教観がないので、世間に対して恥ずかしくないこと、互いに良しとすることを「空気」のように察し合います。正しいことの「正しさ」をどうやって証明するのか。無宗教の立場に立つ人は、「神」に実態はないと考えます。では「空気」はどうでしょうか。道徳を教える大人は、子どもの心の内側から自然に生じる「魂の声」を引き出す産婆役であるべきだと思います。
 

(文責:梅本龍夫)



  1. スポーツ庁文科省外局に 東京五輪準備 政府方針 障害者部門統合
    http://www.yomiuri.co.jp/olympic/2020/politics/20131117-OYT1T00989.htm?from=ylist
  2. 比 自衛隊が医療活動
    http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20131118-OYT1T00314.htm?from=ylist
  3. 原発 国際基準で警備 政府 IAEAに評価要請へ
    http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20131117-OYT1T01010.htm

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 東海原発 廃炉先送り 「ごみ」処分場決まらず
    http://www.asahi.com/articles/TKY201311170282.html
  2. 福島市長選も現職敗北 除染遅れ 有識者不満
    http://www.asahi.com/articles/TKY201311170476.html
  3. 民主案 秘密の範囲限定 秘密保護法案 罰則、懲役5年以下
    http://www.asahi.com/articles/TKY201311170277.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 福島市長選 新人が圧勝 原発対応 不満噴出
    http://senkyo.mainichi.jp/news/20131118k0000m010084000c.html
  2. ガソリン長蛇の列 フィリピン台風
    http://mainichi.jp/select/news/20131118k0000m030051000c.html
  3. 強力な権限が秘密指定抑制 米国家秘密 妥当性チェック 国立公文書館局長が指摘
    http://mainichi.jp/shimen/news/20131118ddm001010205000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 太陽光 価格2割下げ 再生エネ 風力・地熱に軸足
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASFS17015_X11C13A1MM8000/
  2. 自由貿易進み 模倣品横行 技術や品質、保護急務
    http://www.nikkei.com/article/DGKDZO62731480Y3A111C1MM8000/
  3. 外国人新卒の採用増 NEC43%、日立25%増
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD1706R_X11C13A1MM8000/?dg=1

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. ケネディ暗殺から50年 「絶頂期」米への郷愁
    http://sankei.jp.msn.com/world/news/131118/amr13111810310003-n1.htm
  2. サウジのオバマ不信 歴史の交差点 明治大特任教授 山内昌之
    http://sankei.jp.msn.com/life/news/131118/art13111803130001-n1.htm
  3. 比セブ島 自衛隊医療チーム 本格始動
    http://sankei.jp.msn.com/world/news/131117/asi13111719550006-n1.htm

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



  1. 軍機密 戦後も闇の中 2000人以上犠牲 輸送船撃沈
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013111802000118.html
  2. 福島市長選 現職が惨敗 3大市すべて首長交代
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013111802000117.html
  3. ママにしてくれた君へ 心にふれる話

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/