2013.11.07 thu

新聞1面トップ 2013年11月7日【解説】トヨタが牽引する未来

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新聞1面トップ 2013年11月7日【解説】トヨタが牽引する未来


【リグミの解説】

トヨタの「稼ぐ力」
 
トヨタの「稼ぐ力」が急復活していると日経新聞が1面トップで伝えています。2014年3月期の連結税引き前利益が2兆2900億円になる見通しです。これは前期比63%増で、2008年3月期の過去最高益2兆4372億円に迫る水準です。
 
トヨタの幹部は、2008年のリーマン・ショック以降、地道に原価低減に取り組んできたことを第1の要因に挙げています。1工場で利益を出すには年間20万台以上生産する必要があったところを、「年産10万台でも利益を出せ」と号令をかけました。成熟した工場で、生産性を2倍にするのは無体な要求に見えますが、それをやりきるのがトヨタらしいです。
 
新車販売が北米で伸びていることも大きな要因です。最高益を達成した2008年3月期の世界販売(中国合弁を除く)は891万台でしたが、2014年3月期は910万台という予想です。円安の追い風も業績回復に寄与しています。それでもトヨタは手を緩めない覚悟です。「原価低減はむしろこれから」(同社幹部)。生産技術の現場では、1ドル80円、あるいは生産台数750万台でも稼げる体制を狙っています。

 
トヨタの「憂鬱」
 
そんなトヨタに、金融界も黙っていません。トヨタは配当性向30%を維持したいと発言していますが、証券アナリストの中からは、「30%は最低ライン。もうかっている時にはその上を求めたいところ」という声が上がっています。未来に備えた投資を進め、不測の事態に備えて内部留保を厚くしておきたいのが企業の本音ですが、「資本市場に株式を上場し、国の制度インフラを享受する限りは、たとえ耳に心地よい声でなくても聞かざるを得ない」と日経新聞も指摘しています(日経電子版「王者トヨタ、『復活』で深まる憂鬱」)。
 
トヨタの「憂鬱」は資本市場からの配当要求だけではありません。「日本は果たして長期デフレから脱却できるのか」。この懸念に応えるのがトヨタのベースアップ(ベア)です。豊田章男社長は「政労使会議」に出席を求められました。「政府は『トヨタがイエスといえば流れが生まれる』と明確にベアを求めた」そうです。
 
トヨタの総人件費(給与、退職金、労務費などの合計)は、2008年3月期には8392億円でしたが、これを5年間で7728億円にまで減らしました。「この努力を帳消しにしかねない国の要望だが、安倍政権はデフレ脱却に執念を燃やす。ゼロ回答では許されない雰囲気が永田町と霞が関では醸成されつつある」と日経新聞(電子版)は伝えています。
 
 
雇用の未来

日本の大手製造業が円高に悲鳴を上げ、こぞって工場の海外移転を進めた時代にも、トヨタは「国内生産300万台体制を死守する」と言い続けてきました。日本の製造業に頂点に立つ企業の社会的責任を感じさせる話ですが、総人件費を1割近く下げた背後には、雇用の不安に直面した従業員(特に非正規雇用)がたくさんいたのだと思います。
 
企業はベアを本能的に恐れます。固定費の増大が将来の足かせになるからです。しかしトヨタは、単に賃上げをするだけでなく、未来の自動車産業のビジョンを掲げ、それを日本で実現する覚悟が問われていますし、実際に実現する実力を備えています。
 
北米での自動車製造の象徴であったGMとの合弁事業NUMMIは、日本の製造業が頂点に上りつめた1984年にスタートし、トヨタがリーマン・ショックと北米での大規模リコールに苦しんだ2010年にクローズされました。今、NUMMIの工場や生産設備を使っているのは、電気自動車のベンチャー企業テスラです。
 
「テスラは、芸術家の工房のようなフェラーリの工場よりも、よほど大量生産の自動車工場らしい」とテスラ工場を視察した人から聞きました。トヨタが雇用維持から雇用拡大、そして給与水準の向上に向かうために絶対に必要なことは、未来を変える革新的な技術とアイデアです。ハイブリッド、電気自動車、水素で動く燃料自動車、さらには自動運転へとクルマは変わろうとしています。トヨタの企業努力が日本と世界の未来をどう牽引するのか。期待を込めて見守りたいと思います。
 

(文責:梅本龍夫)



  1. 複合機 ネット公開状態 東大など3大学 住民票や答案
    http://www.yomiuri.co.jp/net/news0/national/20131106-OYT1T01518.htm
  2. 温室ガス20年度3.8%減 85年度比 途上国1.6兆円支援も
  3. 減反5年後廃止決定 自民了承 農業強化策明記へ
    http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20131106-OYT1T01085.htm

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 百貨店 食の偽装拡大 三越伊勢丹 そごう・西武 小田急も
    http://www.asahi.com/articles/TKY201311060747.html
  2. トヨタ最高益1兆円 9月中間 通期予想も引き上げ
    http://www.asahi.com/articles/TKY201311060735.html
  3. 温室ガス05年比3.8%減 20年目標 各国に説明へ 政権方針
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131107-00000013-asahi-pol

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 農地保全に新補助金 中小農家に転作促す 減反5年後廃止
    http://mainichi.jp/select/news/m20131107k0000m010101000c.html
  2. 食材偽装 全主要百貨店で 三越伊勢丹、17年前から
    http://mainichi.jp/shimen/news/20131107ddm001040057000c.html
  3. 燃料取り出し間近 福島第1原発4号機
    http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20131107k0000m040051000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. トヨタ、稼ぐ力 急回復 今期税引き前 最高益に迫る 円安・原価改善が寄与
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASGD0607E_W3A101C1MM8000/
  2. 燃料取り出し 中旬開始 福島第1原発 廃炉作業スタート
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASFS0601W_W3A101C1MM8000/
  3. 新株価指数 来年1月から 日経・日本取引所
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASGD0507F_W3A101C1000000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 道徳 教科に格上げ 27年度にも 検定教科書を使用 文科省有識者会議案
    http://sankei.jp.msn.com/life/news/131107/edc13110708000000-n1.htm
  2. 中国 党庁舎前で連続爆発 1人死亡8人重軽傷 手製の小型爆弾か
    http://sankei.jp.msn.com/world/news/131107/chn13110701120002-n1.htm
  3. 海自ジブチ拠点拡充 法人輸送視野、政府交渉へ
    http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131107/plc13110708040007-n1.htm

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



  1. 除染下請けに東電系企業 8市町村中半数参入 税金で肩代わり 利益は還流
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013110702000102.html
  2. 制定過程も■に 透ける権力の本音 国家のヒミツ
  3. 減反、5年後廃止 コメ政策、半世紀ぶり転換
    http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013110601001166.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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