2013.10.08 tue

新聞1面トップ 2013年10月8日【解説】2つのリーダーシップ

新聞1面トップ 2013年10月8日【解説】2つのリーダーシップ


【リグミの解説】

「原発」についての立ち位置
「国論を二分する」。昨年の夏、民主党政権が原子力エネルギー政策について「国民的議論」を推進したとき、よく聞かれた表現です。毎週金曜日に開催されてきた首相官邸前の抗議運動がピークに達し、野田政権が重い腰を上げ、国民の声をしっかり聞こうと動きました。
 
あれから1年強。10月初めに実施された読売新聞の世論調査で、「安倍内閣は、安全性を確認した原子力発電所の運転を再開する方針です。この方針に、賛成ですか、反対ですか」と問いました。結果は、「賛成」41%、「反対」50%でした。原発の再稼働という目の前の課題でも、国論は依然として二分されています。
 
原発をエネルギー政策全体の中でどう位置付けるのか。福島第1原発で深刻な汚染水漏れ問題が続いており、事故対応は「もぐら叩き」に追われ「自転車操業」が続いています。国による事故への積極的な関与と指導は不可避の状況です。そして原発政策をどうするのか。中長期のエネルギー政策の基本ビジョンと戦略を示す必要がありますが、安倍政権・自民党は、議論を避け続けています。
 
小泉元首相の「原発ゼロ」発言
そんな中、しびれをきらしたように、自民党の小泉元首相が「原発ゼロ」を掲げ、話題になっています。政府・自民党は、戸惑いの中でこの話題を敬して遠ざける対応です。昨日の毎日新聞は、小泉氏の発言を全面的に支持する社説(「原発問題の核心ついた」)を掲げました。
 
 
それに呼応してか、本日、読売新聞が全面的に反論する社説(「『原発ゼロ』掲げる見識を疑う」)を掲げました。
 
 
両紙社説を比較し、論点を整理します。
 
小泉元首相の発言の評価
・ 毎日:「核心をついた指摘である」
・ 読売:「首相経験者として、見識を欠く発言である」
 
影響力ある政治家の使命
・ 毎日:「小泉氏は『今、ゼロ方針を打ち出さないと将来も難しくなる』という。政治が大きな方向を示さなければ、代案も作りにくく、状況は動かない」
・ 読売:「原発の代替案について小泉氏は『知恵ある人が必ず出してくれる』と語るが、あまりに楽観的であり、無責任である」
 
原発推進の問題、原発ゼロの問題
・ 毎日:「核燃料サイクルの要となる『もんじゅ』は実用化のめどが立っていない。再処理工場を再稼働しても、余剰プルトニウムがたまるばかりであり、原発推進は無責任だ」
・ 読売:「火力発電による電気料金の上昇、CO2の排出、再生可能エネルギーの弱点を考えれば原発とのバランスが必要だ。『原発ゼロ』にすれば廃炉の技術者の確保もできない」
 
核のゴミの最終処分問題
・ 毎日:「『トイレのないマンション』と言われる核廃棄物問題について、小泉氏が言うとおり政府は責任ある答えを示していない」
・ 読売:「放射性廃棄物の処分法は技術的に決着している。問題は、廃棄物を埋める採取処分場を確保できていないことだ」
 
政治のリーダーシップ
政治のリーダーシップと会社などの組織でのリーダーシップは、事の大きさや複雑さでたいへんな違いがありますが、その本質は同じです。第1に「ビジョン」を示すこと。第2に、その「ビジョン」に人々が従える環境を用意すること。
 
リーダーは、フォロワーが良い仕事ができるようにする責任があります。そういう意味では、小泉元首相は、第1の「ビジョン」は明確に示しましたが、第2の「現場環境」については、現役世代の政治家たちに丸投げの恰好です。毎日と読売の社説が示唆するように、拠って立つ場所が違えば、主張は180度違ったものになります。第2の「現場環境」が必要です。
 
「ビジョン」と「現場環境」をつなぐ
ヒントは、両紙の社説の中にあります。核のゴミの最終処分問題は、その政治的なプロセスの評価は別にして、これが最大級の問題であるという点では、両紙は一致しています。「ゼロ」か「推進」かは置いて、一致協力して答えを探れるテーマです。さらに、福島第1原発事故を契機に現実化した廃炉問題。廃炉の進め方、技術者の育成なども共同で推進しなければならないプロジェクトです。
 
二分された国論を、時の勢いで片方に収斂(しゅうれん)させようとする動きは、時に危ういものとなります。相手の主張に耳を傾け、「ではどうすれば解決できるか」と一緒に考える。その地道な活動と並行して、共同作業で「核のゴミ」と「廃炉」を着実に前進させる。政治のリーダーシップの本領は、小泉氏の呼び掛けへの応え方にかかっています。
 

(文責:梅本龍夫)



  1. TPP「大筋合意」盛らず 8日首相声明 年内妥協難しく
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  2. 再生医療の被害救済 副作用など 厚労省、制度導入へ
    http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20131008-OYT1T00024.htm
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(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 東電5億円寄付 幻の美術館 原発利権を追う
    http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201310070776.html
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    http://www.asahi.com/politics/update/1008/TKY201310070529.html
  3. 慰安婦問題 政治決着へ昨秋交渉 野田―李政権、文言詰める
    http://www.asahi.com/international/update/1008/TKY201310070533.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 非常ブレーキ利かず走行 JR北の特急 最大90日間
    http://mainichi.jp/select/news/m20131008k0000m040100000c.html
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    http://mainichi.jp/select/news/m20131008k0000m020120000c.html
  3. 差別で損害認定 ヘイトスピーチ ネット公開も違法 京都地裁判決
    http://mainichi.jp/select/news/20131008k0000m040086000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



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    http://www.nikkei.com/article/DGKDASFS0703P_X01C13A0MM8000/
  2. 可能性究め後進に光 スーパーキャリア Wの未来 ここで生きる③
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASGG0102W_S3A001C1MM8000/
  3. ハイブリッド車共同開発 富士重、トヨタの技術導入
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASDD070UR_X01C13A0MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 政府・自民 公約転換へ TPP聖域5項目譲歩も 国民に説明ないまま
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013100802000110.html
  2. 「ヘイトスピーチは差別」判決 「早く元通りに」「反発心配」新大久保の住民
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013100702000205.html
  3. 銀座で稲穂香る はざ掛け
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013100802000210.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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