2013.03.27 wed

新聞1面トップ 2013年3月27日【解説】自分の原理、自分の現実

新聞1面トップ 2013年3月27日【解説】自分の原理、自分の現実


【リグミの解説】

衆院選は「即刻無効」
昨年12月の衆院選の選挙無効を求めた一連の訴訟の高裁判決が続いています。読売と朝日がトップ記事で伝えています。全16件のうち15件の判決が確定しました。「違憲状態
」2件、「違憲だが有効」が11件、そして「違憲で無効」が2件となりました。今回、広島高裁岡山支部が出した「無効」は猶予期限なしであり、今年11月27日以降に無効とした広島高裁の判決(25日)よりも厳しい内容となっています。

読売新聞は社説で、「『即時無効』はあまりに乱暴で無責任過ぎる」と批判しています。現行の公職選挙法では選挙無効が確定した場合の詳細なやり直し規定がないことが理由です。「政治の混乱」を避けるべきだ、という現実判断があります。これは、一面で妥当であり、一面で見当違いだと思います。

起きたことは仕方がない、その現実を前提
に次の一手を考えるのが「現実主義」です。そもそも間違った状況なのだから原因から正すべきだ、とするのが「原理主義」となります。司法は、「原理」を示し、「現実」との折り合い地点を示すものですが、その座標軸のどこに着地するかが判断と分かれ目となります。今回は、より「原理」を示す理由があったということだと思います。

「原理」と「現実」の距離感
裁判は、交渉事の枠組みという側面があります。原告と被告がそれぞれの主張を出し、それが左右の「OBライン」(枠)となります。裁判所は基本的に与えられた「枠」の範
囲で事の是非を判断します。「即時無効」は、原告の設定した枠に限りなく近い判決という意味では「極端」かもしれませんが、「無責任」と断じることはできないと思います。裁判所の使命は、現実に折り合うことではなく、現実が法に照らして正しい姿で運用されているかを判断することにあるからです。

「被告である国は、”100%敗訴”のリスクを想定し、抜本的対応に向けて加速せよ」。これが広島高裁岡山支部が示したメッセージではないでしょうか。「法の下の平等」をこれ以上放置し、三権分立の精神を踏みにじれば「民主主義の命」が危ない。国民主権が現憲法の基本理念です。国民が主権者としての地位を維持する上で、「投票権の平等」はなくてはならない前提条件です。この「原理」から「現実」が大幅に、そして無期限に乖離してよいはずがありません。最高裁の最終判断に注目したいと思います。

教科書検定の「ビュー」
教科書検定の記事が読売、朝日、毎日、東京の2番記事になっています。「ゆとり教育」以後の検定で、教科書の分量が平均15%増加したという内容ですが、強調点は随分違い
ます。読売はもっぱら領土問題(北方領土、竹島、尖閣諸島)の取り上げ方に注目。朝日は、領土問題、沖縄米軍基地問題、そして東日本大震災の取り上げ方を報道。毎日は東日本大震災と原発事故の取り扱いを中心に記述。そして東京新聞は、「脱原発」に修正意見が出たことにスポットライトを当てています。

千田有紀・武蔵大学教授は、新聞の「政治性」や「中立性」について、「記事として何かを取り上げることも、また、取り上げないことも、いずれも『政治的』である。『中立』などありえないのだ」と語っています(東京新聞3月24日朝刊5面)。リグミが新聞を併読し、それぞれの「ビュー」(視点、主張)を横断する「サードビュー」(第3者の視点、客観的なマップ)を提供したいと考える理由でもあります。

自分の「原理」、自分の「現実」
教科書はどうあるべきか。検定の在り方はどう考えるべきか。この問題では4つの新聞が4つの「原理」を掲げ、4つの「現実」の見え方を示したとも言えます。私たちは普段、
自分自身が拠って立つ「原理」を意識したり、自分が生活や仕事などで直面している「現実」の在り方を吟味したりはしません。政治家やマスコミなどの主張を見聞きして、「そうかな」と漠然と感じる程度です。

でも、今日取り上げた「1票の格差」も「教科書検定」も、本当はとても身近なテーマです。遠くて関係ないと思っているテーマを、身近な生活テーマに引き寄せる工夫があれば、マスコミ情報を漫然と受け取ることもなくなると思います。いつの間にか社会的気分としての「世論」が空気のように形成されてしまうことを繰り返さず、様々な「ビュー」を客観的に比較検討し、自分はこの「考え」(ビュー)でいくという主体性を持つことが、健全な世論形成の大前提になると思います。

(文責:梅本龍夫)






① 【司法広報】 「『衆院選違憲』新たに7件」

  • 2つの弁護士グループが昨年12月の衆院選の選挙無効(やり直し)をもとめた一連の訴訟で、26日に新たに7高裁が「違憲」判決を言い渡した。このうち広島高裁岡山支部は、岡山2区の選挙を「無効」とした。広島高裁とは異なり、無効となるまで猶予期間を設けないもので、より厳しい判決となった。


② 【政府広報】 「竹島・尖閣、教科書9割に」

  • 文部科学省は26日、高校の主に2、3年生で2014年度から使われる教科書の検定結果を公表した。地理、公民で領土に関する記述は以下の通り。▽北方領土96%(現行教科書93%)、▽竹島86%(現行教科書68%)、▽尖閣諸島89%(現行教科書66%)―。


③ 【連続企画】 「朽ちるインフラ、放置 ~NIPPON甦れ」

  • 東京オリンピック(1964年)や大阪万博(1970年)を機に一斉に整備されたインフラが相次いで老朽化している。国土交通省が過去10年間に架け替えた35本の橋のうち、50年持ったものは4割。「老朽化対策こそ最重要課題だ」と日本大学の岩城一郎教授(社会基盤メンテナンス工学)は語る。


(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





① 【司法広報】 「無効・違憲相次ぐ」

  • 昨年12月の衆院選の「1票の格差」訴訟で、26日までに全16件のうち15件の高裁判決が言い渡された。内訳は、「違憲・選挙無効」2件、「違憲・選挙は有効」11件、「違憲状態」2件―。2011年3月の最高裁判決で不平等状態の改善を厳しく迫ったことに国会が応えなかったことが、こうした厳しい結果を招いた。


② 【政府広報】 「高2教科書、ページ15%増」

  • 文部科学省は26日、主に高校2年生が来春から使う教科書の検定結果を公表した。「ゆとり教育」からの転換により、主な10教科の分量が現行より15%増える。東日本大震災の記述が約半数あり、領土問題や沖縄の米軍基地問題の記述が増えている。


③ 【独自取材】 「地震保険15%値上げ」

  • 地震保険の保険料が来年7月以降の新契約から全国平均15.5%値上げされる見通しだ。東の本大震災で巨額の保険料支払いが発生し、次に巨大地震が起きた時に損害保険会社の積立金が不足するため。


(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 





① 【政府広報】 「合格者目標3000人撤回」

  • 政府の法制養成制度検討会議は26日、中間案をとりまとめた。「質・量ともに豊かな法曹の養成」を掲げ、2001年に1000人だった司法試験年間合格者数を2010年に3000人に増やすとした目標は、現実には2000人で横ばい状態。新たな目標は設けない。


② 【政府広報】 「高校教科書、15%厚く」

  • 文部科学省は26日、高校2年生が来春から使う教科書の検定結果を公表した。ページ数は現行よりも平均15%増える。国語と数学は30%増となる。東日本大震災を取り上げた教科書が48%と、2011年度検定の24%から倍増した。


③ 【独自取材】 「春の訪れ告げる鳴き声」

  • 青森県八戸市の蕪島(かぶしま)に今年も多くのウミネコが飛来し、「ミャーミャー」と猫に似た鳴き声を響かせている。ウミネコは、漁場を教えてくれる鳥として地元漁師らに大切にされている。


(毎日jp http://mainichi.jp/
 





① 【政府広報】 「新目標で国債購入拡大」

  • 日銀は、国債購入を拡大するため新たな購入目標を定める。資産買い入れ基金と従来型のオペレーションを統合し、緩和規模を分かりやすくする。黒田新総裁のもとでの金融政策の大胆な転換を強調する。


② 【企業広報】 「ダイエーを子会社化」

  • イオンは、4月をめどにダイエーにTOB(株式公開買い付け)を行い、子会社化する。筆頭株主で約29%保有する丸紅から約24%を取得し、現有の約20%と合わせて発行済み株式の4割超を握る。取締役の過半も派遣する。

 

③ 【連続企画】 「適職探し、手取り足取り ~働けない若者の危機」
  • 経済危機のしわ寄せでもがき続ける若者と向き合い、手助けするのが国や企業や社会の責任だという気運が芽生えつつある。オーストリアの「ユース・ギャランティー(若者への保証)」と呼ばれる制度をEU(欧州連合)全体に広げる動きがある。米国ではスターバックスが雇用創出基金を一昨年設立。若者が技能や経験を得る機会を提供する。


(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 





① 【連続企画】 「核のゴミ、権益守る? ~レベル7」

  • 北海道北部の人口約2600人の町・幌延町には核のゴミの採取処分技術の研究をする日本原子力開発機構の深地層研究センターがある。町の首長らは、最終処分場の誘致も視野に入れる。首長らのファミリー企業が同センターとの随意契約をしており、他社が入り込める余地は少ない。誘致が一部の利害関係者だけで進められる実態がある。


② 【独自取材】 「『脱原発』に修正意見」

  • 文部科学省は26日、来春から使用する高校教科書の検定結果を発表した。東京電力福島第1原発事故を取り上げたのは、地理歴史、公民、外国語の26%で、前年度検定の7%から大幅増となった。「脱原発すべき」と記した実教出版の公民は、「1つの考えを断定的に述べ誤解する恐れがある」との検定意見が付き、記述が大幅修正された。


③ 【行政広報】 「都、エネルギー部新設」

  • 東京都は4月から環境局に「都市エネルギー部」を新設し、東京電力改革や自然エネルギー普及などを担当する。猪瀬知事は、「電力供給の安定化と市場の自由化を進め、電気の価格を下げる努力をしたい」と、看板施策を推進する狙いを語る。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)




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