2013.03.25 mon

新聞1面トップ 2013年3月25日【解説】「しあわせ」の原点

新聞1面トップ 2013年3月25日【解説】「しあわせ」の原点


【リグミの解説】

需要と供給の不一致
ミクロ経済理論では、需要と供給は一致することが大前提です。価格が弾力的に変化し、需要と供給が一致する点で実際の生産水準が決定すると考えるからです。しかし、現
実の世の中では、需要と供給を調整するメカニズムがうまく機能しない例がたくさんあります。

本日の新聞1面に、そうした需給ギャップの問題を指摘する記事が2つあります
。1つは、日経新聞の2番記事「学歴社会のミスマッチ ~働けない若者の危機」です。2つ目は、東京新聞のトップ記事「つながる親、都外へも」です。

日本は就職氷河期が続いていますが、韓国の実情は日本以上に深刻です。ソウル大などトップ校でも3人に2人しか就職できず、就職率2割台の大学もあると日経に記事は伝えています。東洋経済によると、日本での2012年卒の就職率は76.1%で、2011年より1.7ポイント上昇しました(大学通信の調査:545大学、卒業生約53万3000人の集計)。韓国の教育科学技術部調査の556大学(2年制と4年制)の卒業生55万9000人の就職率は、2011年6月時点58.6%。民間のシンクタンク調査では、同時期の4年制の就職率は45%前後だそうです(経NBO)。

東京新聞の記事は、認可保育所が不足し、入所を認められない待機児童の問題です。杉並区の母親らが立ち上がり、集団異議を申し立てた動きが都内4区に続き、埼玉県さいたま市にも波及しています。全国の待機児童数は、2011年10月1日現在で48,356人です(参照:Wikipedia)。待機児童比率は直接のデータが見当たりませんが、東京都の2012年度の待機児童数7257人に対して、同年の保育所入所申込者数は20万5091人ですので、比率は3.5%となります(東京都データ)。

しあわせモデル
ミクロ経済理論には、前提条件がいくつもあり、供給者と需要者が合理的に行動し、うまく需給が一致する理屈となります。現実の経済社会は、複雑な要因が絡み合って動き
ますから、当然理論通りにはいきません。問題は3つあると思います。1つは、部分最適と全体最適の問題。2つ目が他に魅力的な選択肢があるかどうかという問題。そして3番目が時間差(タイムラグ)の問題です。

1番目の問題は特に大学就職率で顕著です。いい大学を出て大きな会社に就職する「しあわせモデル」を求めて、学生たちは頑張ります。その通りのキャリアプランを実現できる人もいます。でも、みなが同じ方向に進めば全体としては、需給のギャップが生じてしまいます。これが2つ目の問題につながります。「しあわせ」や「成功」のロールモデルが多種多様にあり、キャリアの選択肢が多ければ、若者たちももっとクリエイティブな人生設計を志向できるはずです。

そして時間差の問題ですが、個々人にとっての「しあわせモデル」は、時間をかけて実現するものが多いのが特徴です。大企業に就職するために4年間大学に通う。いい大学に入るために高校時代に一所懸命受験勉強をする。合格率の良い高校に入るために中学から準備する。こういうプロセスに積み重ねに先に、きっと「しあわせ」が開花した生活がある。多くに人はそう期待し、準備をします。しかし、言うまでもないことですが、大企業に就職すれば自動的に「しあわせ」になれる保証はありません。

心の需給の一致
子育てと教育は、基本的人権に関わる最も中心の社会テーマであり、ミクロレベル需給が一致しないのだから他の選択肢を取りなさい、と強要できる問題ではありません。マ
クロの立場で国や自治体が取り組まなければならない政策です。その一方で、私たち一人ひとりもまた、「しあわせモデル」を主体的に創り直していく発想があっていいと思います。

たくさんの魅力的な選択肢を用意できる社会も、選択肢が1つしかない社会も、どちらも「しあわせ」にも「不しあわせ」にもなる可能性があります。社会や他者から一方的に与えられた価値観や判断基準では、本当の「しあわせ」はなかなか実感できません。自分の内面を充実させ、心の需要と供給を一致させている人は、どんな境遇にあっても「しあわせ」を実感しているように見えます。

「青い鳥」の寓意は、「しあわせ」はどこか遠くにあって求めるものではないということでした。「今ここ」のリアリティーが、私たちを支えてくれています。それは「しあわせ」の原点です。

(文責:梅本龍夫)






① 【独自取材】 「北里大2700万円不正受給」

  • 北里大は、厚生労働省の補助金による科学研究事業で、約2700万円の不正受給があったとして、国に返還していた。2007~2011年度に行われた臨床研究の基盤整備に関する2つの研究プロジェクトが対象。同大は、実質的責任者だった元医学部教授ら4人を処分したが、不正の事実の公表はしていなかった。


② 【連続企画】 「届かないマネー ~NIPPON甦れ」

  • お金は経済の活力であり血液の循環に喩えられる場が、金融機関では、資金回収を優先する担保主義が続いている。「今の銀行の姿勢では、創業支援はできない」とベンチャー支援の「あきない総合研究所」の吉田社長は批判する。成長の可能性を見分け育む「目利き」も衰え、資金は国債に吸い込まれる。


③ 【独自取材】 「白鵬、最多全勝V」

  • 大相撲の横綱白鵬は24日、春場所千秋楽に勝ち、史上最多となる9度目の全勝優勝を達成した。


(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





① 【独自取材】 「日本人社員、米で収監」

  • 自動車部品を巡る価格カルテルが海外にも波及し、日本メーカーの社員12人がアメリカで収監された。12人は、矢崎総業、古川電光、デンソーおよび米司法省が捜査中のため社名非公表の1社を含む4社。米司法省は日本の公正取引委員会とも連携し、「史上最大のカルテル事件」に対応している。


② 【独自取材】 「大統領、EUと直接交渉」

  • キプロスのアナスタシア大統領は24日、EU(欧州連合)から最大100億ユーロ(約1兆2300億円)の金融支援を受ける協議をEUと開始した。EUは、キプロスに対する金融支援の条件として、58億ユーロの確保策を求めている。キプロスが預金課税により捻出することを条件にしているが、同国の政府案は議会で否決された。


③ 【行政広報】 「がん幹細胞、狙い撃ち治療」

  • 国立がん研究センター東病院は、「がん幹細胞」を狙い撃ちする臨床研究を4月上旬に開始する。がん幹細胞は、がんの再発や転移の原因とされる。同病院は、「がんの大元を攻撃する治療は、従来の治療を超える効果が出る可能性がある」と期待をかける。


(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 





① 【独自取材】 「震災後に電力資金1800万円」

  • 東京電力や電気事業連合会などは、原子力委員会委員の秋庭悦子氏が設立したNPO法人「あすかエネルギーフォーラム」に毎年多額の事業資金を提供していた。同法人は、福島第1原発事故後も少なくとも1800万円を受領。原子力委員会には、原子力事業者からの報酬基準などはないが、議論となるのは必至だ。


② 【政府広報】 「『嘉手納以南、次期示す』」

  • 安倍首相は24日、「(沖縄の基地)負担を軽減させるためにも、嘉手納以南の土地返還をしっかりとスケジュールを含めて明示できるよう米側と交渉したい」と述べた。首相は変換計画の策定を急ぐことで、普天間飛行場の辺野古への移設の理解を得たい考えだ。


③ 【独自取材】 「預金課税の成立焦点」

  • EU(欧州連合)は、財政危機に陥っているキプロスの支援について、自力での資金調達策となる預金課税を同国議会が受け入れることを条件としている。同議会の反発は根強く、ユーロ圏財務相会議までに成立するかは流動的だ。


(毎日jp http://mainichi.jp/
 





① 【行政広報】 「海外インフラにも投資」

  • 年金積立金管理運用独立行政法人(GDIF)は、公的年金運用指針を抜本的に見直す。現在の国内債券67%などの資産構成に対し、債権比率を下げ株式比率を上げる。5年に1度の運用資産の組み入れ構成の見直しを毎年度に変更する。


② 【連続企画】 「学歴社会のミスマッチ ~働けない若者の危機」

  • 韓国はかつての日本をはるかに超える就職氷河期だ。大学教育と雇用のミスマッチが起きている。韓国では学生が目指す大手企業の業種では寡占化が進み、中小企業も育っていない。大卒の多くが学歴に見合った仕事に就けない。


③ 【世論調査】 「交渉参加表明、評価56%」

  • 日経新聞とテレビ東京は22~24日に世論調査を実施。安倍首相のTPP(環太平洋経済連携協定)の交渉参加表明について、「評価する」が56%、「評価しない」は25%だった。安倍政権の支持率は69%(前回から1ポイント下落)。


(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 





① 【独自取材】 「つながる親、都外へも」

  • 認可保育所の不足で入所を認められなかった親たちが、東京都内の4区に続き、さいたま市で埼玉県で初めてとなる集団異議を市に申し立てる。杉並区では、市民団体「保育園ふやし隊@杉並」のシンポジウムに地元区議らがも出席し、当事者の訴えに耳を傾けた。


② 【連続企画】 「ドキドキお米屋さん ~心にふれる話」

  • 東京都杉並区に、小学生に「カード屋さん」と呼ばれる米屋がある。店主が、子どもが危険な目に遭ったときに安心して駆け込める店にしたくて、アニメのキャラクターカードの無料のくじ引き会を開いている。販売増にはつながらないが、子どもたちの成長を見守れる喜びがある。


③ 【発表引用】 「『前年並み』4割超」

  • 共同通信が実施した主要企業108社を対象とした2014年度新卒採用計画アンケート調査によると、採用数を「2013年度並」46社(43%)、「増やす」19社(18%)、「減らす」20社(19%)だった。アンケート結果からは、安倍政権の経済政策の効果は見受けられない。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)




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